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特集 なでしこジャパン 決勝トーナメント展望 ~FIFA女子ワールドカップ~

サッカー 2023年8月3日(木) 午後4:00

”なでしこジャパン”が絶好調です。ワールドカップの1次リーグ、ザンビアに5-0、コスタリカに2-0、スペインに4-0と相手を圧倒して1位で決勝トーナメント進出を決めました。世界ランキング11位とチャレンジャーの立場でワールドカップを迎えた”なでしこジャパン”の快進撃と決勝トーナメントの展望を今大会NHKで解説を務める安藤梢さん(三菱重工浦和レッズレディース)に聞きました。

 

 

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1次リーグを振り返って

快勝した初戦のザンビア戦のあと

―― 1次リーグ3連勝と日本にとっては最高の結果を出して決勝トーナメントに進みました。この3試合を振り返って、どう評価されますか?

安藤梢さん

率直にすばらしいです。まず初戦のザンビア戦ですが、ここにチームとしてすべてをかけて準備してきて、集中して戦ったと思います。この試合で大勝しましたが、大事なのは戦いが終わったあとすぐ切り替えたことですよね。

コスタリカ戦に向けて調整する選手たち

選手たちのコメントを聞いたり、表情を見たりしても、次のコスタリカ戦に向けて集中していたなと思います。大勝したあとの試合は、実はなかなか難しく苦戦することがサッカーではよくあります。でもその試合をしっかり勝ちきりました。しかも、メンバーを入れ替えながらの勝利で、いい形でスペイン戦に向かっていけたと思います。

スペインに勝利 喜ぶ選手たち

そして、スペインを相手に4対0はすごいです。信じられないという感じで、私も驚かせてもらいましたし、感動しました。

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光るのはチームの守備力

―― 初戦のザンビアは情報が少ないチームでした。警戒していた相手だと思いますが、5ゴールで勝ちました。

安藤梢さん

3戦を通してですが、守備がすばらしいですね。チームのコンセプトとして、前線からハードワークをしてボールを奪うということをしっかり全員がやれています。

ザンビア戦 長谷川選手のボールキープ

その中で対戦相手を分析して、相手によって守り方を少しずつ変化させています。

コスタリカ戦で相手と競り合う藤野選手

まさに抜け目なく戦えている。全員が共通意識を持って相手に強みを出させずに、チームとして守っているのはすばらしいです。

 

―― スペイン戦はボールをかなり支配されていました。1、2試合目は前から圧力をかけていました。試合ごとに守りの意識を変えているということですか?

 

スペイン戦 2人がかりでの守備

そうだと思います。対戦相手によって、もちろんチームとして相手を分析して準備しているものがあると思います。でも実際の試合の中で、高い位置からプレスにいって奪えるかどうかなどは、選手たちが闘っている中で力関係を肌で感じて、選手たちが判断しながら守備のしかたを変えていると思います。スペイン戦に関しては、たぶん予想していたよりスペインの選手のボールの動かし方が上手く、高い位置からいっても奪いきれないなと感じて、少しブロックを下げたと思います。そして、危険なところを察知して、そこにボールを運ばせないような守備をしていました。それを慌てずに、冷静にできていたところがすごいなと思いますね。

 

―― 結果的には3試合を無失点に抑えました。

スペイン戦は、強豪を相手にゼロに抑えながら、守備から攻撃に移って4点を取りました。すごい集中力でしたね。スペインは攻撃が多様です。アーリークロスもあるし、コンビネーションもあるし、個の突破もある。そういうところを、しっかりすべて抑えきりましたからね。すばらしかったです。

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守備から攻撃へ いい準備ができている

―― そこからのカウンター、切り替えてからの速さはすごかったですし、シュートの思い切りもいいという印象でしたが?

安藤梢さん

迷いなく、みんながやるべきことをピッチの上で表現しているなと思いましたね。思い切りプレーできているというのは、チームの雰囲気がすごく良いんだろうなと。すごくいい練習ができて、コンディションもよく試合に臨めていると思います。これだけハードワークして守備をした後に前に出ていくっていうのは、体力的にかなりきついんです。

宮澤選手 スペイン戦で自身2点目のゴール

前線の選手たちが守備であれだけ走っているのに、後半最後の時間帯でも1人だけじゃなく2人、3人としっかりゴール前に走っていた。そういった頑張りがゴールに繋がっていて感動しました。

 

―― 池田監督の戦術がちゃんとチームに浸透しているんですね。

しっかり浸透していて、ピッチの中で変化させることができるのも強みだと思います。いろいろな準備をしてきているんだろうなと思いました。

 

―― スペイン戦はスタメンを5人も入れ替えました。長谷川選手や田中選手という要の選手たちを代えてきました、その狙いは?

決勝まで考えると全部で7試合ですよね。本当に総力戦になってくると思うので、誰が出てもその選手のよさが出て、チームとして力を出せるというのが今のチームの強みだと思います。

スペイン戦の先発イレブン

これから決勝トーナメントに行ったときに、相手を分析した上で、いろいろな組み合わせを考えることができるし、相手からしたら分析しにくいです。またそれが、スタートからはこの選手で、後半から変化をつけるためにこの選手と、本当に様々なバリエーションをつけられると思います。スペイン戦でも試合の中で左と右を宮澤選手と猶本選手が変わった場面がありましたが、それでもサイドの選手の連係は崩れません。そういったところもすごいなと感じました。

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”11得点” 攻撃陣はみんないい

―― 攻撃面でいいますと、宮澤選手はすでに4ゴールです。田中選手も、猶本選手も、植木選手も点を取りました。攻撃陣を見ていて目立つ選手は?

安藤梢さん

みんな点を取っていますもんね(笑)。難しいです。藤野選手も取っていますし、出た選手たちが、それぞれゴールを決めているというのが、いいですね。

コスタリカ戦 藤野選手のゴール

出た選手がしっかり結果を残していく、またその選手たちがどう組み合わさっても良さが出ていく。ゴールシーンを見てもわかるように選手たちのシュートのうまさにも注目ですね。

 

―― スペイン相手に4点は本当にすごいですよね。

 

スペイン戦 宮澤選手の先制ゴール

1点目がすごく大きかったなと思いますね。しっかり守って、守って。スペインはうまいなというか、強いなっていうのは、選手たちも感じていたと思います。我慢、我慢となっていたところで、やっぱり1点が入ると、このやり方でいいんだと自信になります。我慢していた中でも点が入らないと、少しじれてくることもあるんですけど、やっぱり我慢した中での1点に勇気づけられたと思います。

 

―― そして2点目を植木選手が決め、勢いがつきましたね。

集中してすごい守備ができていて、1点を取って失点せずにきた中で、もう1点というところが、すごく選手たちを勇気づけたというか、自信がついたと思います。

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ベストゴールは決められないが…

―― 安藤さんにとって1次リーグのベストコールは?

 

ゴールを決めて喜ぶ猶本選手

安藤梢さん

11ゴール全部よかったです。でも、個人的な感情ですが、光(猶本選手)のゴールは涙が出ました。そのシーンは彼女自身が世界のトップ選手を分析して、ずっと練習してきた形で、本当に何万本も練習しているシーンを見ていたので、それを大舞台で決めてくれて、すごく感動しましたね。

 

―― 初出場の選手が決めるというのはチームにも勢いがつきそうですよね。

一人一人に、このワールドカップに向けた思いというものがある中で、ここに賭けてきた選手、初めてのワールドカップの田中選手もそうですよね。結構悔しい思いをしてきてメンバーに選ばれて、その中で活躍している。それぞれの選手たちがいろいろな思いを持っているので、結果が出ていることがうれしいです。

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次はノルウェー戦 どんなチーム?

―― 次の相手はノルウェーに決まりました。決勝トーナメントの戦いでは何がまず大事になりますか?

安藤梢さん

中4日でしっかりと、本当にここまで来たらコンディションを良くするというか。いい食事をとって、いい睡眠をとって、あとはしっかりノルウェーを分析して、そこに対してどう準備していくかというところだと思います。

 

―― ノルウェーのイメージは?

 

1次リーグ突破を決めたノルウェー

やっぱりパワフルなチームですね。クロスボールだったり、ヘディングだったりは迫力があります。力強いサッカーをしてくるなっていうところはあります。あとは前線の選手に世界的な選手がいます。ワントップのヘーゲルベルグ選手はバロンドールを獲得した経験がある選手ですし、右のグラハム・ハンセン選手は実際に対戦したことがあるんですけど、めちゃくちゃ速い選手なんですよね。バルセロナに所属しているんですが、ドリブルでボールをもってもスピードが落ちない選手なので、こうした選手をいかに抑えられるかだと思います。

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さらに勝ち進むためには…

―― その先にはアメリカもいます。スウェーデンもいます。日本が勝ち上がっていくためには何が必要ですか?

安藤梢さん

いまもすでにやれていることですが、目の前の相手にチーム全員でひとつになってぶつかっていくというところですね。ひとつになれていることが、日本にとっていい流れになっていると思います。ベンチの選手を含めて23人プラス、スタッフたちの試合前の雰囲気だったり、点が入ったときだったり、試合後の円陣だったり。全員が「なでしこ」のために戦っているという良さがすごく出ているなと思います。

スペイン戦直後 喜び合う選手たち

あとは、ここからは自分たちの思うようにいかない時間帯も必ず出てきます。そこで、いかに我慢できるか。そして少ないチャンスを決め切れるかが勝負ですね。セットプレーも重要になってくると思います。

 

―― 安藤さんは大会前に「優勝した2011年の時の自分たちに似ている」と言われていました。いま改めてどう思いますか?

 

2011年の優勝メンバー 安藤さんも笑顔

雰囲気がすごく良くて、チームのためにみんながひとつになって戦っている姿は似ているなと思うんです。でも1次リーグの3戦を見て、私たちのときより強いと思いました。チームの雰囲気プラス強いなって。自分たちの1次リーグは勝ち、勝ち、負けですから。ヨーロッパの強豪といわれるチーム、私たちの場合イングランドに負けたんですが、いまのなでしこはスペインに4対0ですよ。強いなと思いますし期待しますよね。

 

―― 大会前の予想は「優勝する」とはっきり言われましたが?

間違ってないでしょう、って感じですね。本当に一人一人の選手の能力がすごく高いです。シュートの能力も高いですし、最後のシュートに行く前の決定的なパスを出すところも精度がすごい。他の国に比べても日本は高いなと思いますね。それをワールドカップの舞台で堂々と出せているのは、見ていてすごいなと思わせてもらっています。

 

―― では優勝まで行く上で最大のライバルは?

どこが来るか分からないですけど、アメリカはやっぱり王者の強さっていうのを持っているので、そういう相手を倒せるかどうかです。サッカーが上手いとか下手という話じゃなくて、勝ち方を知っているんですよね、アメリカは。そういう相手と戦って勝っていけるかというのが、優勝する上で大事になってくるかなと思います。

 

―― 安藤さんたちはアメリカに勝ったわけです。思いを後輩にどう託しますか?

 

スペイン戦後 笑顔あふれる選手たち

みんないろいろな思いをかけて、ここに向けて準備してきています。それを同じクラブで、チームメートとして見ている選手、WEリーグで戦ってきた選手もいます。彼女たちの力で世界一をつかみ取ってほしいなと思います。すごく応援しています。

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