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特集 三笘薫×中村憲剛スペシャル対談 “破壊的なドリブル”の神髄に迫る!

サッカー 2023年7月28日(金) 午後6:00

サッカー日本代表でいまもっとも注目されている三笘薫選手。驚異のドリブルは観客をとりこにする。その破壊的なドリブルはどのように生み出されているのか。かつてチームメイトとして戦った、中村憲剛さんがその神髄に迫ります。久しぶりの再会となった2人のやり取りにも注目です!(サンデースポーツ 2023年7月9日放送)

三笘薫選手「憲剛さんと対談なんて、人生面白いな」

 

憲剛さん:久しぶりだね。

 

三笘選手:相当お久しぶりです。

 

憲剛さん:生三笘!

 

三笘選手:いやいや(笑)。

 

憲剛さん:よろしくお願いします。

 

三笘選手:お願いします。

 

憲剛さん:最初に認識したのがジュニア(小学生)とかジュニアユース(中学生)の時で、“三笘薫”っていう子がいると。

 

三笘選手:本当ですか。

 

憲剛さん:なので本当にすごい選手になったなというのは、なんかこの(小さい)時から知っているだけに感慨深いですね。

 

 

三笘選手:僕からしたら(憲剛さんは)フロンターレのアイドルなので本当に。憲剛さんのプレーを見に行っていたようなものですし、プレーも人柄もそうですし、昔からこういう選手になりたいと思っていました。プロサッカー選手になって(一緒に)プレーできて、今こうやって対談というのは、なんかすごく人生面白いなっていうか。

 

憲剛さん:人生面白い!本当だね。

 

三笘選手:はい。

 

 

3年前、川崎フロンターレでともにプレーしていた2人。憲剛さんはこのシーズンで引退。三笘選手は、ルーキーイヤーでした。

 

憲剛さん:(呼び方は)三笘選手か薫か。

 

三笘選手:薫でいいです。

 

憲剛さん:薫でいいですか。ぼく怒られないですか?

"破壊的ドリブル" 秘密は「目線」

三笘選手は、デビュー1年目から強烈なインパクトを残しました。緩急をつけたドリブルで相手を翻弄。みずから13得点をあげ、チームの優勝に大きく貢献したのです。なぜ、これほど破壊的なドリブルができるのか。憲剛さんは、三笘選手の“目線”にその秘密があると感じていました。

 

 

憲剛さん:一緒にプレーをした最後の1年の時に「あ、すごいな」と(思った)。何がすごいかっていうと、当たり前に1人を抜くっていう。その“破壊的なドリブル”ができる選手の存在ってサッカーにこうも影響するんだなというのを知った。相手のどこを見てドリブルをしていたのか、これ企業秘密かもしれないけど。

 

三笘選手:いやいや、そんなことない。

 

憲剛さん:言える範囲でいいんだけど。

 

三笘選手:僕も相手のどこを見ているのかわからないぐらい、ぼんやりという感じで。

 

憲剛さん:そうなんだ。

 

三笘選手:そうです。相手の顔をずっと見ているわけでもないし、体も見ているわけでもないし、ボールも見ないといけない。間接視野で見ながら、後ろの状況も見てということをやっているので。

 

憲剛さん:普通のドリブラーの人って、私の認識ですよ、こういう風(前傾姿勢)になっていくんですよ。ドリブルが始まると。

 

 

三笘選手:そうですね。

 

憲剛さん:あなたの場合はこう(顔が上がる)ですよね。これでドリブルしてくるから。顔が上がっているんで、練習か何かで対じした時に「あ、無理」って思ったことがある。

目線の高いドリブルが生まれたきっかけ

顔を上げた目線の高いドリブル。それによって生まれるのが広い視野。止めに来る相手を素早く察知します。対じする選手がボールを奪いに来た瞬間に逆をつき、抜き去ります。

 

 

憲剛さん:対じするときのその背筋と目線の高さ、あれをやられてしまうと気を取られて距離感があくからヒュンっていかれちゃうし、それで詰めるとパンっパンって(抜かれちゃう)。

 

三笘選手:そうですね。間違いなく言えるのは、確実に、高い位置を見れば見れるほど相手にとっても嫌だし、自分も余裕が出てくるんで。下を見ていれば見ているほど、いいプレーはできない傾向にある。

 

憲剛さん:それそれそれ。

 

三笘選手:それですね(笑)。

 

独自のスタイルが生まれたきっかけは、子どもの頃からプレーしていたあるポジションの経験でした。

 

三笘選手:ボランチをずっとやっていたので、周りを見る意識とファーストタッチから考えないといけない。そのためには周りを見て、立ち位置を考えて、ドリブルをする前にもまずは周りを見る。そういうところも生きているかなと思います。

 

憲剛さん:顔を上げてプレーするというのは、最初からずっとドリブルだけをやっていたら、ひょっとしたら身につかなかった。

 

三笘選手:確かにそうです。小さい頃からボランチをやっていたり、そういう状況判断もできていた中で、ドリブルを磨けば磨くほど楽しさも増えましたし、それだけチャンスを作れるなというのを感じたので、その能力を身につけようと思っていました。

三笘選手が目指す“進化の形”とは

昨シーズン、世界最高峰のリーグで日本選手の最多得点記録を更新した三笘選手。厳しいマークを受ける中で活躍を続けるには、ドリブラーとしての”進化”も求められました。

 

憲剛さん:あれだけセンセーショナルな活躍をすると、対策もされるわけじゃないですか。よりその相手の対策を上回れるかは考えていると思うんだけど、今そこで一番大事なポイントになっているところはどこですか?

 

三笘選手:あんまり言いたくないですけど…

 

 

憲剛さん:じゃあ言わなくて大丈夫!

 

三笘選手:まあやっぱり…

 

憲剛さん:やめて! 怒られそう、大丈夫?

 

三笘選手:これは大丈夫です。

 

憲剛さん:それは大丈夫?

 

三笘選手:はい。例えばボールを持ったときに、たぶん(自分は)ドリブラーという意識が強いと思うけど、そこをドリブルしない、違うことを出すってことですね。よりドリブルを見せないようにドリブルをする技術というのは増えていると思います。

 

「ドリブルを見せないドリブル」とはいったい何なのか。先月の日本代表の試合に、その答えはありました。ドリブルで抜くと思いきや、クロスボールや大きなサイドチェンジ。多彩なプレーを相手に印象づけます。そして、ここぞという局面でみせたのが突破でした。

 

 

三笘選手:クロスを見せて目線でだまして、相手の足を上げさせて重心を変えさせた。

 

それまでのプレーを伏線にしながら、勝負どころで一気にドリブルを仕掛ける。それが三笘選手が目指す進化の形です。

 

三笘選手:こいつは読めないって思わせることが大事かなと思うので。頭脳戦じゃないですけど、相手の嫌なことをいかにし続けるかっていう思考になっていますね、今は。

描く今後のビジョンとは

 

憲剛さん:これから新シーズンも始まるし、ここから日本代表の戦いも始まるし、どういうビジョンを考えている?

 

三笘選手:この次のワールドカップまでに確実に中心選手となって毎試合、試合を決定づけるような活躍をしていくというのは求められていると思うので、それはやっぱりプレミアで結果を残し続けること、それが意味するものだと思う。

 

憲剛さん:そのための数字(得点)というところは?

 

三笘選手:シーズン終わっても数字(※昨季7得点)でしか評価されないのはより感じますし、攻撃の選手は数字だなと改めて試合後、毎回思っていますね。

 

憲剛さん:(プレミア)リーグ戦で2桁(得点)乗せたい?

 

三笘選手:絶対乗せたいですね。自分がまだまだ伸びるというのを感じている中で、全然いけるなって。チームの勝利に貢献する選手が一番の選手だと思いますし、そういう選手に憧れて子供たちも日本代表を目指すと思うので、そういう選手になりたいと思っています。

 

 

中川キャスター:憲剛さんとの対談ということで、三笘選手のいろいろな表情を見られた感じがしました。久しぶりに話をされたと言うことですが。

 

憲剛さん:そうなんです。かなり久しぶりに話しをしたので、でもいっぱい話してくれてうれしかったですね。楽しかったです。

 

中川キャスター:憲剛さんの生き生きとしたうれしそうな表情も印象的でした。

 

憲剛さん:そうですね、生き生きしていましたね。

 

中川キャスター:それでは今回の研究結果として改めて、三笘薫選手とは?

 

 

憲剛さん:『自己分析の鬼』。育成年代からフロンターレ時代を含めて、彼は自分のことをよく分かっている。自己分析を繰り返しながら進化をし続けて、ベルギーやプレミアリーグでも結果を残し続けているので、本当にすばらしいなと思っています。あと最後言っていたゴールのところ、チャンスメーカーでもありますので、その彼が2桁得点を取れる選手になると、いよいよ手のつけられない選手になってくる。結果的にそれが日本代表にとっても大きな力になるんじゃないかなと思います。

 

 

 

 

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