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特集 ウィンブルドン2023 『伝統の芝』の変化

テニス 2023年7月13日(木) 午後7:00

伝統の芝で熱戦が繰り広げられているウィンブルドン2023。イギリス・ロンドン郊外のウィンブルドン「オールイングランド・ローンテニスクラブ」の芝生のコートは、ウィンブルドン選手権の大会期間中のわずか2週間だけ使用されます。

 

ウィンブルドンのセンターコート

男子は136回目、女子は129回目という歴史があり、「センターコート」と呼ばれる101年目を迎えたスタジアムコートは、世界のテニスプレーヤーにとって憧れの場所です。

 

貴賓席に招かれた「芝の王者」フェデラーさん (7月9日)

かつては、ジョン・マッケンロー、ボリス・ベッカー、ピート・サンプラスなど「サーブ&ボレーヤー」が活躍していましたが、今はストローク主体のオールラウンドなプレースタイルに変わっています。芝の傷み具合も年々変化しています。

 

芝を管理する責任者、ニール・スタッブリーさん(54)。29年目を迎える大ベテランです。

 

芝を管理するニール・スタッブリーさん

ことしの芝の状態には、特に手ごたえを感じています。

ニール・スタッブリーさん

長年にわたって芝の種類を変えたり品種改良したりしたことで、芝の耐久性は向上しています。芝の管理には気温23度から24度で雨が降らないのが理想ですが、ことし、イギリスの6月は晴れが続いて気温が上がったので、芝の生育はとても良いです。

その中、スタッブリーさんは、選手のプレースタイルの変化に合わせて、芝を改良していると言います。

 

男子シングルス準々決勝でプレーするジョコビッチ選手

ニール・スタッブリーさん

全てのコートの芝の長さは、毎朝8mmに揃えています。20年前に比べると、芝のコートは固くなっています。以前はボールが弾みにくい芝生の状態で、サーブ&ボレーヤーに有利でしたが、今はどんなプレースタイルの選手でもプレーしやすいコート状態にすることを心掛けています。ベースラインプレーヤーが勝てるようになった要因のひとつだと考えています。

大会は2週間にわたって行われますが、スタッブリーさんは、大会が進むにつれて、コートの状態は変わるといいます。

 

芝の断面

ニール・スタッブリーさん

1年かけて育ててきた芝のコートですから、まだ選手が多くプレーしていない第1週は、コートは踏み固められていません。芝やその下の土の層が固まりきっていなくて、まだ、ふわふわした状態です。ですから、ボールはあまり弾まないので、ドロップショットや滑るスライスショットが有効です。しかし、選手がコート上でプレーする時間が増えることで、芝の表面はどんどん踏み固められて土の層が固くなって、第2週は、ボールが高くバウンドするようになり、グランドストロークを得意とする選手がプレーしやすくなると思います。

大会第1週と2週では芝の固さが違いバウンドに差が出る

ことし、男子シングルス・ベスト8に残った選手は、土のクレーコートで育ちグラウンドストロークでのラリー戦を得意とする選手ばかり。選手のプレースタイルが変化していることはもちろんですが、芝の管理者の努力よって、芝のコートの特徴が変わっていることもストローカーが勝ちやすくなった要因のひとつになっているのかもしれません。


芝の状態によって選手たちがどのようにプレーを変えていくかにも注目して、ウィンブルドン中継をお楽しみください!

 

この記事を書いた人

酒井 博司 アナウンサー

酒井 博司 アナウンサー

平成13年入局。初任地は大分局。ウィンブルドン中継は2010年から関わり、ことしは現地リポート担当。思い出に残っている試合は、2001年男子決勝「イバニセビッチーラフター」。

 

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