特集 女子ハンマー投げの新生!マッカーサー ジョイ アイリス “まるで踊りのように”

先日行われた陸上の日本選手権で、ニューヒロインが誕生しました。女子ハンマー投げのマッカーサー ジョイ アイリス選手。アメリカ出身の父と、日本人の母をもつ23歳です。去年、選手登録を日本人に変更。今回初めて出場した日本選手権でいきなり優勝を果たしました。大会直前に来日したマッカーサー選手を取材しました。(サンデースポーツ 2023年6月4日放送)
ハンマー投げは1投1投が作品
大会1週間前。
-(リュックに)いろいろついてる?
マッカーサー選手
はい、私、ゲームが好きなので、カービィとか大好き。買いすぎかもしれないけど。(日本にいる間に)絶対買いたいと思って。
とってもチャーミングで日本のカルチャーに興味津々のマッカーサー選手です。それがひとたびハンマーを握ると・・・。まるでリズムを刻むような旋回運動。彼女はこう表現します。
マッカーサー選手
“アート"みたい "ダンス"みたい。自分で言うのも変かもしれないけど、私がちゃんとできた投げっぷりは本当に美しいと思っていて。その投げてる最中が本当に何か楽しくて。難しい言葉は日本語でできないんだけど・・・。(英語)私にとって、ハンマー投げは1投1投が作品です。水彩画、まるで踊っているような感じ。強く、そしてかわいらしく。
長年、マッカーサー選手を指導するダン・レンジコーチ。彼女の”踊るような投げ方”を高く評価しています。
レンジコーチ
(英語)彼女は特別大柄でもない。力が強いわけでもない。ただ、ハンマーを体の一部のように扱う。一体になって回転する非常に優れたセンスを持っている。
初めて臨んだきのうの日本選手権。マッカーサー選手の記念すべき1投目。63m31cmを記録。ほかの選手が記録を伸ばせない中、このまま逃げ切り、初出場初優勝を遂げました。
マッカーサー選手
本当にうれしいです。きょう初めてだったので、私の投げ方を日本のみなさんに見せたかった。日本代表に絶対なりたいです。世界レベルでも戦いたい。
ハンマー投げは“自分で選んでやってる”
両親とともに7歳まで日本で暮らしたマッカーサー選手。
マッカーサー選手
幼稚園の思い出とか、名古屋インターナショナルスクールに行っていて。その時期が本当に楽しくて、友達も作れて。料理も大好きだし人も好きだし。道とか、全部きれい。アメリカもきれいなんですけど、やっぱり選ぶならこっちの方がきれいだと思って。
父親は元バスケットボール選手。日本の実業団チームに所属し、日本代表としても活躍しました。 その後、父の現役引退を機にアメリカに移住。そのころから、自分のアイデンティティーに悩むようになったといいます。
マッカーサー選手
(英語)私のようなハーフの人を見て、人々はこう思うんです。“黒人でもなく、日本人でもなく、どっちでもない”と。長い間、私は自分のことを受け入れられませんでした。他人に対してはそんなことはないのですが、自分に対してはとにかく否定的だったのです。
そんな時、16歳で出会ったのがハンマー投げ。ほかのスポーツでは得られない不思議な感覚があったといいます。
マッカーサー選手
(それまで)全部のスポーツは意味なくてやっていた。“やって”と言われたからやっていただけ。だけど、ハンマーは自分で選んだ。そして自分で選んでやってる。
その才能はすぐに開花しました。当初はアメリカ人として大会に出場していましたが、去年、選手登録を日本人に変更。ことし4月には、室伏由佳さんが持っていた日本記録(67m77cm)を19年ぶりに更新しました。
マッカーサー選手
ハンマーは本当にスペシャル。私の中で。ハンマーをやってる時、自分とちゃんと向き合える。(英語)ハンマーのおかげで、私は自分らしくいられるし、さまざまな考え方を受け入れられるようになりました。(日本語)これからも本当に強くなれると思う。だから壁はあるけど、わたし越えられる。
中川キャスター:マッカーサー選手、世界選手権やパリオリンピックの参加標準記録にはまだ届いていませんが、”私は越えられる”という力強い言葉もありましたし、私たちも応援していきたいですね。