NHK sports

特集 DeNA 林琢真選手『焦らずに、少しずつ少しずつ』

野球 2023年6月2日(金) 午後3:30

新しい環境で不安を抱えながら悩むのは誰しもが経験することです。それは将来を期待されるプロ野球選手にとっても同じ。DeNAの林琢真選手は、この春大学を卒業したばかりのルーキーです。開幕スタメンの座を勝ち取った有望株ですが、慣れない環境、そしてすぐに結果を求められる厳しいプロ生活で試行錯誤の日々を過ごしています。

いきなり配置転換!? 期待を背負いながら

駒澤大学からドラフト3位で入団

林選手は身長1メートル74センチ、体重74キロとプロ野球選手の中では決して大柄ではないものの、安定感のある守備力と俊足を生かした走塁、さらにシュアな打撃を評価されて駒澤大学からドラフト3位で入団しました。『チームの将来を担う選手に』と期待を背負いながら、スタメン出場のほか、守備固め、代走と幅広いシチュエーションで起用されています。

 

慣れないポジションの守備練習に励む

大学時代はセカンドの守備に定評があり、4年生のときには大学日本代表としてプレーした経験もある林選手ですが、入団したDeNAのセカンドにはチームを代表する強打者で4番の牧秀悟選手がレギュラーに定着しています。そのため、守備の場面ではショートやサードでのプレーが多くなりました。高いレベルで戦わなければいけないにも関わらず、慣れ親しんだポジションではない場所で結果を残さなければならないという、厳しい環境でプロ生活をスタートすることに戸惑いを隠せませんでした。

 

開幕戦前日の打撃練習

林琢真選手

企業で言えば違う部署にいきなり飛ばされるみたいなそんなイメージだった。ただ、初めての経験でもプラスに考えて、置かれている立場があるのでその立場で自分のできることを全うしようと思った。

 

どうする!? デビュー戦でエラー…

オープン戦では打撃が好調

慣れない環境の中で林選手はキャンプから結果を出し続けました。オープン戦では12球団全体で3位の打率2割9分6厘をマークするなどアピールに成功し、シーズンの開幕戦を2番・サードのスタメンで迎えることができました。

 

しかし、落とし穴が待っていました。慣れないサードの守備でいきなり2つのエラーをしてしまいます。そのエラーが失点につながり、チームは開幕戦を落としました。記念すべきデビュー戦で取り返しのつかないミスをした林選手は、ここで悔やむ気持ちを切り替えるためにあることを意識したといいます。

 

サードで出場した開幕戦でエラー 思わず顔をしかめる

林琢真選手

意識したのは『あいさつ』だった。球場に着いたときになるべくいちばん最初のあいさつを大きい声ですることから始めようとした。開幕戦の次の日に先輩の大田泰示選手と戸柱恭孝選手に会って大きい声であいさつをしたら『おぉ生きてる』って感じで言われて、そこは意識してやろうと思えてよかった。

 

同じミス繰り返さないため

田中コーチ(左)に守備の指導を受ける

ミスを恐れて萎縮してしまうことがないようにとあえて『あいさつ』というトリガーでみずからを奮い立たせる一方で、林選手は同じミスを繰り返さないために対策にも取り組み始めています。指導を仰ぐのは田中浩康内野守備走塁コーチです。現役時代、堅実な守備でゴールデン・グラブ賞も獲得している田中コーチがアドバイスしたのは足の使い方でした。

 

 

林選手が大学時代に守っていたセカンドよりもショートやサードは長い距離の送球が多いため、踏み込んで投げた方が安定するというのが、足の使い方を意識させた理由でした。

 

田中浩康 内野守備走塁コーチ

1年目というのはいちばん吸収できるゴールデンタイムなのでそこは僕も逃さないように、いろんなコミュニケーションを取っています。必死に食らいついていると思いますね。

 

不安を乗り越え“少しずつ”

今回の取材の最後、林選手にいま大事にしている心構えと、みずからが描く未来像について聞きました。

 

林琢真選手

焦らずに大きいことをいきなりやろうとするんじゃなくて、本当に細かいところから少しずつ少しずつやっていくのが大事なんじゃないかなと思う。自分のプレーで流れが変わったりとか、なにかアクセントになるような。それで自分が引っ張っていけるような選手になっていきたい。

常に結果が求められる厳しい世界で生きることを決めたルーキーは、“焦らずに、少しずつ”


みずからの理想の姿へと近づくために歩み続けます。

この記事を書いた人

阿久根 駿介 記者

阿久根 駿介 記者

平成25年NHK入局。福岡局、津局、札幌局を経てスポーツニュース部。DeNA担当。物心ついたころから大学まで野球一筋。ポジションは投手。

関連キーワード

関連特集記事