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特集 競馬 日本ダービー ~史上8頭目の偉業なるか!競馬界最高の栄誉を手にするのは~

競馬 2023年5月26日(金) 午前7:00

競馬の祭典「日本ダービー」。生涯にただ一度、3歳のサラブレッドだけが出走できるクラシックレースの最高峰です。ことしも東京競馬場の芝コース2400mを舞台に5月28日に開催されます。去年6月から1年にわたる競争を勝ち抜いてきた18頭が、同世代7708頭のサラブレッドの頂点に挑みます。

 

例年、4月に行われるクラシック三冠レースの第1弾「皐月賞」の上位馬がダービーでも有力視されますが、ことしは別路線から挑む馬にも大きな期待が寄せられています。それぞれの注目馬をご紹介します。

 

史上8頭目の無敗のクラシック二冠へ

ソールオリエンス(皐月賞優勝)~大混戦の勢力図を一瞬で塗り替えた豪脚~

調教中のソールオリエンス

ことしのダービー、最有力と目されているのが皐月賞を勝ったソールオリエンス。ここまで3戦3勝。史上8頭目となる無敗での皐月賞と日本ダービー、クラシック二冠達成の偉業に挑みます。


しかし、ことしの3歳クラシック、皐月賞を迎える段階では突出した実績を残した馬が不在でした。皐月賞では人気の目安となる単勝オッズ1桁の馬が6頭と史上まれにみる混戦ムード。ソールオリエンスは2番人気の支持を受けていましたが、皐月賞ではスタートしてから後方に置かれ、4コーナーでもほぼ最後尾で通過。勝つには絶望的とされる位置でしたが、そこから全頭を抜き去りました。中山競馬場のわずか300mあまりの短い直線で見せた圧巻のパフォーマンスで混戦ムードを断ち切り、世代最強を一気に印象付けたのです。

 

ことしの皐月賞を制したソールオリエンス

しかも、皐月賞のレースぶりは決してスムーズとは言えないものでした。4コーナーを回る際には足の動かし方がぎこちなく外に膨らんでしまうロスがありました。一般的に中山競馬場のような右回りのコーナーであれば右手前(走る時の軸になる脚:右脚を左脚よりも前に出して走る)、東京競馬場のような左回りのコーナーでは左手前(左脚を右脚よりも前に)で進むことでスムーズに回れるとされています。ダービーに向けて走り方が改善されれば一体どれだけの強さを見せるのか。底知れない魅力を秘めています。

 

ソールオリエンスを管理する手塚貴久調教師

手塚貴久調教師

デビュー前から、左手前のほうが好きなのかなと思っていたので、ダービーで左回りの東京競馬場に変わるのはプラスだと思いますし、コーナーも大きなレイアウトでそんなに膨れる姿は想像つかないので大丈夫だと思います。ダービーでの人気にこたえるだけのポテンシャルはあると思いますし、なおかつ皐月賞よりも上積みもあると感じています。彼の能力を思う存分発揮できるようにしてあげたいですね。私にとってもダービーは一番のレース。調教師になった理由もダービーを勝ちたいからです。すべてはダービーのためにあると言っても間違いないですね。

また騎乗する横山武史騎手(24)にとってはダービージョッキーとなる大きなチャンスが再び巡ってきました。デビュー7年目で既にG1レースを6勝していますが、忘れられないのはおととしの日本ダービー。皐月賞を優勝したエフフォーリアに騎乗して圧倒的な1番人気でのぞみましたが、ゴール直前、最後の最後でシャフリヤールに逆転されハナ差の2着に敗れました。横山騎手にとっては「悪夢のようだった。レースの映像をなかなか見ることもできなかった」と語るほど悔しい記憶が刻まれています。今週の会見でもダービーへの思いがあふれていました。

 

会見する横山武史騎手

横山武史騎手

(2年前のダービーの時と比べて今の心境は?)

2年前と変わらず勝ちたいです。

 

(ダービーへの思いは強い?)

勝ちたい一心です。

 

(横山騎手にとってダービーは?)

一番勝ちたいレースです。

 

皐月賞で敗れた馬の巻き返しは

タスティエーラ(皐月賞2着)~厳しい展開でも粘った皐月賞~

タスティエーラ

ハイペースで流れた皐月賞。タスティエーラは苦しい展開を克服して2着に粘りました。いかに価値の高いレース運びだったのか、レースのタイムを元に振り返ります。

 

まず前半の1000mが58秒5。これは良馬場と呼ばれる乾いたコース状況でもやや速いペースとされますが、皐月賞当日の芝コースは重馬場。水分を多く含み、かなり力を要する馬場コンディションでしたので、先行グループにいた各馬は相当に厳しいオーバーペースとも言える流れでした。その分スタミナも想定より早めに減少して、後半の1000mはペースが大幅に落ちて62秒1。一方、中団から後方の位置取りでハイペースを避けた各馬にとっては、スタミナを温存しながら自らの能力をしっかりと発揮できるペースを守ることで最後の直線での伸びにつながり、疲れて下がってきた先行馬を逆転するという典型的な追い込み決着の展開となりました。

 

タスティエーラ(左)が皐月賞で2着に入る

実際、皐月賞で上位に入った馬は軒並み中団から後方の位置でレースを進めていましたが、タスティエーラは先行グループの中で唯一、上位に食い込む粘りを見せました。

 

騎手の意のままに動ける自在性があり、これまでのレースでも常に好位置をキープ。スムーズに先行できれば、馬場のいい所を選んで走ることができますし、他の馬に進路をふさがれるリスクも減ります。例年、皐月賞ほど極端にペースが速くなることは少ないダービーにおいて、今度はタスティエーラにとって理想の展開となるのかどうか。レース途中の通過タイムと併せて、そのポジションに注目したい1頭です。

 

ダミアン・レーン騎手の会見

初コンビを組むダミアン・レーン騎手

この馬はハッピーホース!すごく元気で健康的な雰囲気。先週の調教で乗った時よりも、アクションも精神面もさらに良くなっている。レース中でもリラックスできる馬でエネルギーを無駄にしないタイプ。そういう意味では初の2400mも問題ないと思うよ。自分も4回目の日本ダービーに乗れることはハッピー。チャンスある馬だし、優勝できれば特別な勝利になるだろうね。

 

ファントムシーフ(皐月賞3着)~ダービー最多勝ジョッキーとの新コンビ~

ことし2月の共同通信杯に勝利したファントムシーフ

皐月賞では1番人気で3着。ダービーが行われる東京競馬場では2月に重賞の共同通信杯(G3)に勝利しています。今回、初めてコンビを組むのが武豊騎手です。去年のダービーではドウデュースで優勝して自身の最多記録を更新する6勝目。過去34回の騎乗も史上最多です。

 

しかし、ことしは当初、騎乗馬が決まっていませんでした。武騎手がダービーに初めて騎乗した1988年以降、不在だったのは自身や騎乗予定馬のけがで断念した2回だけ。武騎手にとってダービーは「何回勝っても勝ちたい思いは全く変わりません。毎年まずはダービーに出ることが目標だし、出られるなら勝ちたい。近づいてくるとやっぱりワクワクする」と話すほど強い思い入れがありますが、ダービー2週間前になって、有力馬ファントムシーフへの騎乗が決まりました。

 

調教中のファントムシーフ

これまで数々の記録を塗り替えてきた武騎手。ことし4月には中央競馬のG1通算80勝に到達。史上最年長54歳19日でのG1勝利となりました。G1レースを勝つたびに記録を塗り替えることになる武騎手。去年はドウデュースで鮮やかな追い込みを決めましたが、ことしはファントムシーフをどのように導くのか目が離せません。

 

ファントムシーフに騎乗する武豊騎手

武豊騎手

声を掛けてもらうまではことしの騎乗馬がなかったのですごく嬉しかった。調教で乗った感触だと一瞬のスピードというよりは持続力を生かす形がいいのかなと思いますね。チャンスがある馬で挑めるのは嬉しいですし、何としてもチャンスをものにしたいという気持ちは強いです。

 

逆転でのダービー戴冠へ!皐月賞に出走しなかった有力馬

スキルヴィング ~ダービーと同舞台を2連勝中~

調教中のスキルヴィング

ダービーと同じ舞台、東京競馬場の芝2400mで行われる重賞の青葉賞(G2)で勝利。これまでの優勝馬はダービーでも上位人気に支持されて好走することが多い注目のレースです。スキルヴィングは去年秋のデビュー戦からすべて東京競馬場でのレースに出走して4戦3勝。そのうちの2勝が2400mでいずれも好タイムをマークしています。

 

スキルヴィング

デビューから全レースでコンビを組んできたのは歴代2位のG1・44勝、クリストフ・ルメール騎手。他にも有力馬に乗ってきた中で、この馬をダービー騎乗馬に選択したことからも注目度が高まっています。青葉賞を勝った直後にはルメール騎手が「G1ホースだと思います」と語るほどほれ込む逸材。今回がG1初出走となりますが、強みとしている最後の直線での瞬発力は皐月賞出走組に対しても引けを取りません。

 

管理する木村哲也調教師

木村哲也調教師

前走後も馬はへこたれていないし、体もしぼまなかった。風船をふくらませたような状態で競馬に使いたいと思っているので、そういうところは頼もしいなと思って見ていた。この馬の強みは折り合いの心配がなく、ジョッキーの指示にも素直に従っていい脚を長く使ってくれるところですね。去年の結果(1番人気イクイノックスで2着)は生涯背負っていくものだと思っています。そこは正直ぬぐい去れない思いがあります。でも、日本ダービーというレースが自分を未来に向けてまた奮い立たせてくれるものだったので、このレースにものすごく感謝したいし挑戦できる幸せも感じています。

 

ドゥラエレーデ ~過去に例のない挑戦~

ホープフルステークスを制したドゥラエレーデ(2022年)

2歳時に2000mのG1レース・ホープフルステークスに勝利。このレースがG1レースとなった2017年以降、優勝馬はすべて皐月賞に出走しましたが、ドゥラエレーデは3歳の初戦となった前走は海外遠征(UAEアラブ首長国連邦)、しかもダートのレースに出走しました。過去に例がない異例のローテーションで日本ダービーに挑みます。

池添学調教師

ドゥラエレーデはダートを走れるパワーと芝で走れるスピードの両方を持っている。ことしの当初の目標はケンタッキーダービー(アメリカのダートG1)で、そのため前走でUAEダービーを走った。ただ、レース後に疲れが出たのと、優勝馬に離された2着だったので無理せずに日本に帰ろうということになった。皆さんから異例のローテーションと言われますが、この馬を信じての選択ですし、海外で経験を積んで前走から成長しているので楽しみにしています。

また血統面でも注目です。ドゥラエレーデの父ドゥラメンテは2015年に皐月賞と日本ダービーを勝って2冠を達成しました。さらにドゥラメンテの父は2004年の日本ダービーを優勝したキングカメハメハ。史上初の親子3代でのダービー制覇がかかります。

 

2015年の日本ダービーでドゥラメンテが2冠達成

父ドゥラメンテは2021年夏に9歳の若さで惜しまれながらこの世を去りましたが、その子供たちが近年は大活躍。去年は年間でG1を6勝、ことしも既に先日のオークスを勝って牝馬クラシック二冠を達成したリバティアイランドなど3勝をあげています。残された数少ない世代の産駒からダービー制覇を果たす馬が誕生するのか。血統のドラマも興味深い要素です。

生産者のダービーへの思い

競馬に携わるすべての関係者にとって特別な1日となるダービーデー。ことしのNHKの中継では生産に携わった牧場関係者のダービーに寄せる思いもお伝えする予定です。

 

社台ファームの吉田照哉さん

ソールオリエンスをはじめ3頭が出走予定の社台ファーム・吉田照哉さん

生産者の皆さんの夢だと思います。過去5回のダービー優勝、どれも思い出に残ってますけど、最初に勝ったダービー(1986年ダイナガリバー)はやっぱり感激しました。

 

ダイナガリバー

祖父の時代から競走馬の生産を始めて一度も勝ったことがなくて、父もダービー、ダービーってずっと騒いでいて、ようやく勝った時は本当に興奮しました。みんなで涙を流して喜んだのを覚えていますね。

 

節目の90回目となる日本ダービー

ことしは節目の第90回の日本ダービー。第1回は東京の目黒にあった東京競馬場で行われ、NHKでもラジオで実況中継をした記録が残っています。

 

[NHK放送史] 第1回日本ダービーの動画はこちらから ⇒

 

その後、1934年、第3回から(当時のレース名は「東京優駿大競走」)現在の東京競馬場(東京都府中市)に開催地が変わりました。それ以降、ダービーの舞台は一度も変わることなく、多くの名馬が駆け抜け、コロナ禍以前は毎年10万人を超えるファンの歓喜に包まれてきました。


ことしはどの人馬に万雷の拍手が送られることになるでしょうか。第90代のダービー馬誕生の瞬間を一緒に見届けましょう。

 

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この記事を書いた人

高木 修平 アナウンサー

高木 修平 アナウンサー

2019年のワールドカップでは日本各地のスタジアムに取材で訪問。中でも、震災からの復興のシンボルとなった鵜住居スタジアム(岩手県釜石市)を目の当たりにした時には、かつて東北で勤務して震災直後の被災した釜石で取材した際の光景がよみがえり、しばらく声にならなかったことが思い出されます。

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