ストーリーサッカー

カズの背中を追って 香川真司が語る秘話 スポーツ平成史・サッカー 第5回

2019-03-15 午後 06:43

まもなく幕を閉じる、「平成」という時代。サンデースポーツ2020では、2月から4週にわたってスポーツの平成史を振り返ります。
2月17日放送回のテーマは「サッカー」。幾多の苦難を乗り越え、挑戦の歩みを止めない日本サッカーの30年間を、平成の時代を「プロサッカー選手」として駆け抜けた“キングカズ”三浦知良選手とともに振り返ります。

第5回は日本選手のヨーロッパ挑戦の先頭を切ったカズさんと、その背中を追いかけ続ける後輩・香川真司選手との物語。そして、カズさんが次の時代のサッカー界に願うことは。

香川へ カズからのメール

ことし1月。ドイツ、ドルトムント。

香川真司はクラブで出場機会に恵まれていなかった。年明けに開いた冬の移籍市場で、他のクラブへの移籍が確実視される状況。そのデリケートな時期に、香川は「カズさんに関することならば」と特別に取材を受けてくれた。

 

特別に自宅で取材を受けてくれた香川真司

 

取材班を自宅に通すと、香川はスマートフォンを取り出し画面を見せてくれた。試合に出られないこの数か月、メールのやり取りをしていたのが、カズなのだと言う。その文面を、読み上げてくれた。

 

 

「何度もはい上がりましょう」
「厳しいときこそチャンスです」

 

画面を見ながら、香川は続ける。

 

「カズさんからは、いつも敬語でメールもらうんです。すごく恐縮なんですけど。こういうメールを見返すだけでも、今またモチベーションが上がってきますよ。カズさんから言われる言葉はやっぱり、ちょっと違うなって思いますね。」

ワールドカップ前の苦境の支えに

カズと香川の交流は、もう10年以上続いている。当時、香川はJリーグ・セレッソ大阪に在籍。カズのいる横浜FCと対戦した時、カズからユニフォームをもらったことがきっかけだった。その後も親交を深めながら、いつもカズに励まされてきた。

 

 

去年、ワールドカップロシア大会の直前、香川は足首のけがの影響で出場が危ぶまれていた。代表メンバーには入ったものの、合宿では別メニュー調整が続く日々。支えになったのは、自らはワールドカップへの出場を逃してきたカズからの言葉だった。

 

「ワールドカップ前、自分は足首のけがで苦しんでいました。でもその時にもね、カズさんから『足首の状態はどうですか』と定期的にメールを頂いていたんです。『絶対にワールドカップに間に合うから、しっかりと治してから、いい準備をしてください』と。」

 

ケガを乗り越えた香川は開幕直前の強化試合で好プレーを見せ、ワールドカップ初戦・コロンビア戦の先発メンバーに名を連ねる。
そのスタジアムの観客席には、カズの姿があった。

 

 

試合開始早々、香川に絶好のチャンスが訪れる。日本のカウンターから1トップの大迫がシュート。そのこぼれ球に詰めた香川のシュートは相手選手の腕に当たりPKを獲得。キッカーは香川。頭の中で、カズからもらったメールの言葉を思い返す。

「頑張ってくれ。自分を信じて得点してくれ。」

ゴール正面にシュートを突き刺し、香川は喜びを爆発させた。

 

 

「カズさんのいる前で得点できたというのは、本当に僕にとって一生の思い出です。本当にカズさんの言葉があったからこそ、改めて自分自身を信じて戦えたのかなと思います。」

 

この試合の勝ち点3は日本をベスト16進出に大きく近づけた。大会後、香川は感謝の思いを込め、試合で着たユニフォームをカズへ送った。

 

 

半年前のゴールの感触、そして「カズと戦ったワールドカップ」をゆっくりと思い返し、その時感じていた思いを香川は明かしてくれた。

 

 

「ワールドカップのあの場所は、カズさんも夢見てた場所だと思うので。そういう舞台で僕自身が試合に出られるのは、『カズさんのため』じゃないですけど、一緒に戦ってくれているという気持ちに勝手ながらしていましたね。」

 

取材から数週間して、香川は新天地・トルコのベシクタシュに移籍した。平成元年に生まれ、この3月で30歳になる男はトルコですぐさまゴールを奪い、復活の「のろし」を上げている。

52歳 1秒を大事に走り続ける

VTRを見たカズには笑みが

 

今回、香川がカズのために取材を受けたことは、番組スタッフと香川からカズに対しての「サプライズ」。自然と笑みがこぼれるカズに、取材の中で気づいたひとつの疑問を投げかけてみた。後輩たちにメールを送るとき、なぜいつも敬語を使うのか。

 

「僕は年下でも後輩と思った事がないし、自分を先輩だと思った事もないんです。選手はみんな同志でありライバルであり、仲間なんで。年が上とか下とかないと思うんですね。同じプロの選手、そう思ってますから。」

 

その同志たち、ライバルたち、仲間たちとつくってきた、平成の日本サッカー。まもなく訪れる次の時代に、日本サッカーにはどんな姿であってほしいか。そしてそのために、カズ自身はどんな役割を果たしたいと思っているのだろうか。

 

 

「Jリーグを夢を持てるリーグにしていく、Jから世界につながっていくような活躍を、選手たちはしていかなきゃいけないと思います。その中で大事なのは、やはり次の世代ですよね。子供たち、小学生あたりの世代から育成をちゃんとやる。子どもたちの未来につながるようなサッカーの環境、みんながサッカーを楽しめる環境を与えられるように、みんなでやっていくべきだと思います。まあ自分が『背中を見せている』とは思いませんけど、自分がやれるかぎり走り続けていきたいなと思いますね。」

 

平成の始まりから終わりまで、「プロサッカー選手」として走り続けた男「カズ」、三浦知良。
番組の最後、改めて今シーズンに臨む決意を聞いた。

 

 

「自分が全力を尽くすだけだと思ってます。毎日毎日が勝負なのでね。『1秒を大事に』頑張りたいですね。」

 

平成31年2月26日。カズは52歳の誕生日を迎えた。
そしてその週末のJリーグ、横浜FCのベンチにカズの姿があった。この日は出番がなかったが、試合に出ればもちろんリーグ最年長記録。ゴールを決めればギネス世界記録更新である。

そのニュースが届くのは平成か、次の時代か。
カズの挑戦はまだまだ終わらない。

 

 

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