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特集 Jリーグ1年目! 奈良クラブ社長の「超地域密着」論

サッカー 2023年5月13日(土) 午後9:00

2023年5月15日、Jリーグは30周年を迎える。10チームで始まったリーグだが、いまや60チームが全国にひしめき合う。ことしJリーグに加わったチームの一つが、長年「Jなし県」と言われてきた奈良県にできた奈良クラブだ。1年目ながらJ3で上位に入り健闘している。クラブ経営の特徴は「超地域密着」。そこにはどんな哲学があるのか。社長の浜田満さんに西阪太志アナウンサーが聞いた。

 

 

浜田満さんは、日本にサッカー文化を根付かせ、世界で活躍できる人材を育成するため、サッカースクール事業や育成年代のトップ選手のサポート業務に取り組んできた。2011年には主催した「バルサアカデミーキャンプ」でMVPを獲得した久保建英選手がスペインの強豪FCバルセロナに入団。現地生活のサポートも行った。

奈良に誕生したJクラブ

西阪:ことしJリーグに上がりました。30周年という節目の年にJリーグに加入しましたけれども、改めてそのことについては浜田さんどういうふうに感じてらっしゃいますか。

 

西阪太志アナウンサー(左)と浜田満さん

 

浜田さん:最初3年以内に(JFLからJ3に上がる)という目標を立てていたので、その形で上手くいったので、すごくやったなっていう感じと、やっぱり誰しもが奈良にJリーグできるなんて思ってなかったので、みんなが思ってなかったことができたことが、すごくよくて。まだそのフワフワした感じが奈良の中ではあるんです。すごくみんなが楽しんでくれていて、いい感じかなというふうには思いますね。

 

西阪:この間、ホームゲームにお邪魔してサポーターの方に聞いたのですが、家がスタジアムから10分で、こんなところにJリーグが来るなんてほんと夢みたいですっておっしゃっている方がいらっしゃいました。

 

 

浜田さん:そう。だからまだみんな夢見ていると思っています。そんな感じです。

 

西阪:「いつかここにマリノスとかアントラーズを呼んでほしいね」って。

 

浜田さん:ありえなくはないんでね。Jリーグに行くことが目標だったんですけど、ちょっと欲が出てきて、もうちょっと上(J2,さらにJ1)に。なんとかなるかなというのは、いま探っているところですね。なんとかやりたいです。上の方まで。

 

奈良クラブが目指す地域密着とは

西阪:その中で奈良クラブとしては、地域に根ざした活動をすごく大事にされていると思うんですが、奈良クラブにとって地域密着活動とは何でしょうか。

 

浜田さん:サッカークラブを経営していく中で、サッカークラブは自分のたちの考える価値を表現する場所だと僕は思っています。奈良に(愛知の)グランパスが来たりとか、(大阪の)セレッソが来たりとかはしないんです。基本的には。奈良という場所で、自由に自分の考える価値観を、サッカークラブを通して表現していいですよっていう、そういう状況にあるわけです。

 

スタジアムに掲げられる横断幕

そうなった時に、僕自身はサッカーの選手の育成の仕事をしてきたので、こういうサッカー選手を育成したいっていう価値観を、奈良でどう広げられるかということを考えています。その考え方を、目の前にいる人に話をしたら理解されるんですけど、でもそうじゃない人たちにも聞いてもらわなきゃいけない。自分の話を聞いてもらおうとすると、仲間になるというか。自分とその人との中で人間関係が生まれなきゃいけないんです。人間関係が生まれるようにしようと思えば、やっぱり接する時間、接する回数を増やす。いろんなところに出て行くということが必要です。つまり奈良県に130万くらいの人口いたとして、130万人と奈良クラブの人たちが全員知り合いだったら、絶対応援されると思うんです。

 

5月 サポーターと行った竹林保全活動

 

地域に密着したいっていうのはあるけれども、僕らとしては当たり前の話なんです。まずは全員と基本的には人間関係ができたらいいなと思います。試合に来てください、応援してくださいというのもありますが、僕らの知り合った相手側の人がやっていることもあるわけですよ。今回、チームを応援してくれている人がやっている地域のイベントでタケノコ掘りというのがありました。僕らはその人たちに試合を見に来てもらっているけど、今度は僕らがその人たちを盛り上げるってことをやる。そうすると、お互いに盛り上げるって形になります。それを全員とやりたいというのが、いまやろうとしていることです。基本は奈良に関わる人全体でみんなと知り合いになって、お互いのことを自分事と思って、両方ともが盛り上がるように助けていきましょうと。それを奈良でという感じです。

 

観客数水増し問題に揺れたチーム

奈良クラブ観客数水増し問題

 

2015年度にJFL 参入後、J3 昇格基準である年間入場者数3 万人を達成するためホームゲームの観客数を水増しして発表していた問題。2019年11月にSNSで指摘され発覚、チームが調査を行い事実を確認して謝罪した。当時の調査報告によると「なるべく多く見せたいとの気持ちから水増しが常態化した。2019年度のシーズンは水増しを止めようと開幕戦に臨んだが、開幕戦・2試合目と入場者数が伸びず、このままではシーズン早々に年間3万人を達成できないことが確定してしまうとの危機感から2試合目から水増しが再開された」などと経緯を記している。その後、2020年2月1日に浜田さんが社長に就任した。

 

西阪:浜田さんが就任されるきっかけになったのが、観客数の水増し問題でした。かなり影響があったと聞きました。改めて水増し問題によってクラブにどういう影響があったんでしょうか。

 

浜田さん:クラブができて10年ぐらい経った中での話なんです。その水増しで最終的には社長を替わることになったんですけど、それまでもいろいろと細かな問題が起こっていたんです。もちろん「社会的に」という問題ではないんですけども、中でのトラブルみたいなものや、サポーター同士のものとか。本来は解決すべきことが残ったままの状況というものがたくさんあって、それが最終的に水増しで一気に噴出したというだけなんです。

 

 

もちろんそうすると、水増しをきっかけに、実はこういうこともありました、こういうこともありました、クラブからこういう対応されましたというように、今まで溜まった膿が全部出たんです。僕は新しい人間だったんで、全部フラットに聞けるわけです。こういうことがありました、浜田さんどう思いますかって言われて、「うん、確かにそれはおかしいね」みたいなことも結構あって。そういう人たちと話をするっていうことをまず一番最初にやりました。基本的には言われていることを全部受け止めるというスタンスから始めました。そういう形でやらないと、理解されないんで。僕も奈良クラブの事情も理解してなかったし、サポーターの皆さんのおっしゃる事情も理解してなかったので、それを両方からちゃんと話を聞くということをやったというところですね、最初から。

 

西阪:スポンサーもかなり撤退された?

 

再出発に合わせて新ユニフォームが発表された

 

浜田さん:そうですね。2億円ぐらいあったスポンサー収入が、1.1億ぐらいまで落ちたんです。一気に。

 

西阪:その中でいろいろ対話をされた中で、地域密着活動っていうのは、クラブの信頼回復において大きな役割を果たしたというのはありましたか。

 

浜田さん:そうですね。そもそもコロナもあったんですけど、こっちから出向くっていうことがとにかく必要だなと思いました。それまでは、そこまで行かなくてもいいだろうという空気感があったんですよね。例えば、行って会話をして戻ってくると、別にお金になるわけじゃないので時間の無駄じゃないの?みたいな空気感が若干やっぱりあったんです、前は。

 

 

それがもうとにかく、あらゆる人と喋る。自治体もそうです、商店街もそう、スポンサーさんもそう、サポーターもそう、あらゆる人と喋っていく。そうすると、一応クラブの社長ではあるので、社長さんがわざわざ喋りに来たっていうふうに感じてくれるんです。「離れてどっかでTwitterあげてるだけじゃなくて、会話もできて、言ってることも聞いてくださる」っていうような空気感を地域に見せていくっていうのが一番最初にやってたことです。それが地域密着と言われればそこにつながっていくんですけど、そうすると今度は「すいませんけど、こういうことができませんか?」と声がかかってくるんですよね。

 

 

声かかったものを基本的に断らない、全部やるというスタンスで、選手も含めて。それを最初にクラブでも言って始めたという流れなんです。そうすると、1回やってくれたら、次もこれやってという話になる。それが広がっていって、奈良クラブはどこでも来てくれるぞとなって、どんどんどんどん声がかかる流れになったと。

 

先の先の先の人につながる

 

西阪:相手の要望を叶えることで、クラブにはどんないいことがあるんでしょう?

 

浜田さん:知り合いが知り合いを紹介してくれる。例えば呼ばれて行って、そこですごくよかったよって言って、他の人に紹介してくれるんです。常々思っているのは、ある人と接して、その人が、奈良クラブのあの人がすごくよかった、すごく前向きだった、応援しようかなと思うというのを他の人に言う。もしくは、それが「いやあいつら最悪だったよ」っていうのを他の人に言う。それは、プラス1であり、マイナス1なんですよね。

 

 

そのプラスの回数を重ねれば、ずっと倍々で増えていくんです。その逆をやれば、倍々のマイナスゲームになるんです。それをどういうふうに変えていくか。僕が就任した時は、ほんとにもう全員が奈良クラブのことを批判的な見方をしていました。そういう状況だったので、どういうふうにプラスに変えていくかっていうのをやろうと思ったら、理解してもらうっていうことが一番大切だった。

 

西阪:なるほど。理解してもらうと、クラブの経営の面でも、やっぱり変わってくるわけですか。

 

浜田さん:その時点では変化はないですけど、回り回って必ずプラスになります。その人が、他の人に、奈良クラブええでという話をしたら、そこから先に、その先にいる人たちが、そうなんやって思って、ちょっと見てくれたりする。

 

 

たまたま試合に来てくれたら勝ったりして。そしたらグッズを買ってくれたり。そういう見えない先の先の先の人の話なんですけど、明らかにそれが増えていますね。明らかに増えています。

 

西阪:実感としてですか?

 

浜田さん:もうめちゃくちゃ増えています。「あの人が奈良クラブのことこういうふうに喋ってたで」とか、「こんな意見を言ってはったで」とかっていう。聞こえてくる声ってTwitterでもそうですけど、あらゆるところから聞こえてくる声がすごくポジティブに変わりました。

 

西阪: 3年間で一気に?

 

浜田さん:もうめちゃくちゃ変わりました。

 

選手とサポーターの距離も近い

西阪:なるほど。しかも今のお話にも通ずるところあるかと思うんですが、選手とサポーターの距離がすごく近いと見ていて思いました。サポーターに話を聞いても、やっぱりそれがすごくいいという人がいたんです。そのサポーターとの距離感の近さっていうのはかなり意識されているんですか。

 

 

浜田さん:それはもう最初から意識しています。ことしはJリーグに参入したんで。「今までJFLだから近かった。Jリーグに上がったら、あいつら距離できたな」って絶対にならないようにしようってみんなに言って、同じスタンスでやってます。

 

西阪:タケノコの竹林保全活動でも、前の日に70分ぐらい出た嫁阪選手がイベント来るんだなと思いました。

(※5/3の宮崎戦に3-0で勝利。翌日奈良市で行われたサポーターと行う竹林保全活動に、前日先発出場した嫁阪翔太選手も参加した)

 

 

浜田さん:普通に来ますね。

 

西阪:あんまり他のチームだとないですよね。

 

浜田さん:はい。選手にも、そこも含めて奈良クラブの価値をつくるってことは伝えているので。だから、その意識が高い選手を、あえて獲得しているっていうのも、もちろんありますよ。

 

西阪:嫁阪選手も「こういうことはあんまり前のクラブではなかった」と言っていました。

 

浜田さん:タケノコを掘ってるやつ、あんまりいないですよね。うちはもうほんとに、南の端から北の端までみんなが行くっていう(方針です)。もちろんJ2とかJ1とかなってきたら、それぞれちょっと階層は変わってくるんで、難しくなるとこも出てくるとは思うんですけど、そこはすごく意識してやっています。監督のフリアンにも、僕らはそういうクラブにしたいからっていうのも伝えていますし、彼はそれを理解してくれて全面的に協力してくれます。監督ともだいたい毎週会話をするし、ミーティングをして、向こうからいろんな要望もきますけど、こっちの要望も伝えています。落としどころを探して、クラブを盛り上げていくというやり方をしています。

 

価値観の根底にはヨーロッパのクラブが

 

西阪:そういう浜田さんの価値観があってということでしたけども、そういう価値観を持つようになったのはどういうきっかけだったんですか。

 

浜田さん:欧州のサッカーをいろんなところで見てきて、バルセロナとか、ビジャレアルとかもそうですし、10年以上、ACミランとかね。

 

2018年 バルセロナが国内2冠を果たした後のパレード

 

欧州トップクラスのさまざまなチームから、そうでないチームまでを見てきて、結構近いんですよね、選手と。

 

西阪:あれだけのトップクラブでもですか。

 

 

浜田さん:ACミランとかバルセロナぐらいのトップまでいくとちょっと違うんですけど、1部(リーグ)のクラブでも、平気でふらっと入れて行けるんです。子どもがいたらとにかく、規制があっても、いいからいいからみたいな感じですし、割とそういうところがあります。土曜日や日曜日、祝日とかの育成のグラウンドを見ると、おじいちゃん、おばあちゃんから子どもたちまでみんな入り乱れて楽しんでいるんです。こういう世界観をつくっていければ、奈良県だけじゃなくて、日本サッカーにとって新しい時代の過ごし方の提案になるというか。今は公園でも、例えばうちの近隣の公園に子どもを連れて遊びに行っても、そこの家族でしか遊んでないですよね。それぞれの家族がそれぞれの家族バラバラで、結局見たら100人ぐらいいるんですけど、みんなバラバラで遊んでいるんですよ。それが昔は、全員が知り合いで、みんなで遊んでいたんですよね。なんか悲しいなと思って。やっぱり同じところに集まって遊んでいるんだから、全員顔見知りで、一緒に遊んで、やることなくてもそこ行ったらみんなが遊んでくれてみたいな状況が欧州とかではやっぱりあって。

 

 

そういうのをつくりたいなと僕は思って、ナラディーア(ことしオープンした奈良クラブの練習施設)を作ったというのもあるし、奈良だけじゃなくて、日本サッカーの全体がそういうふうになったらいいなみたいなと思っています。奈良県の僕らがやったやり方を他のチームが真似てくれて、日本全国の公園やサッカー場で、地域で子どもたちを育てていくというか、見るというか。その子たちが大きくなったら、またそれが続いていくので。そういうのをやっていくというのがJリーグの価値かなと思っているんです。そこに僕らも100%の力で突っ込んでいきたいなとは思ってやっています。

 

地域の課題を解決する取り組み その先には

西阪:地域の課題を解決するという取り組みもされています。奈良クラブが地域課題の解決に乗り出す、取り組む意義っていうのはどういうふうに感じていますか。

 

浜田さん:スポーツじゃないと、多分なかなかできないんですよね。例えば、一企業が奈良県を変えますと言って地域に出てイベントをいろいろやっても、やればやるほど結局儲けるためにやっているんじゃないの?という感じになるんです。でも、サッカークラブってそこがちょっと違う見られ方をするんです。スポーツクラブ、スポーツのチームがそれやらないと、多分もうやる人がいなくなるんですよね。地域の課題っていうのは、ほんとにいろんなものがあるんですけど、僕らは地域の課題を解決するために使える1つのツールだというふうに思っています。

 

スタジアムの前で行われた林業のイベント

 

 

僕らがいま主導してやっていますけど、これはあくまで、まだ皆さんが僕らの使い方をそんなに認識されてないから、僕らが主導でやっているわけです。本当はもうスケジュールの調整ができないぐらいひっきりなしに呼ばれるという状況を作っていけたらいいなと思っています。それが、最終的には一番上手くいく方法だと思います。地域の課題を解決したい、奈良クラブにお願いしようという。そうなっていけば、スポーツが地域の中にある価値かなというふうに思います。

 

西阪:逆に言うと、スポーツクラブはスポーツをしているだけでは、もうダメってことですか。

 

浜田さん:サッカーもバスケも集客してなんぼなんです。それって、試合を見せるところに価値があって、見に来てもらうっていう話じゃないですか。シンプルに人って何かを応援しようとすると、その人のことに感情移入がされない限りは、なかなか本気で応援しないんですよ。そこに行き着くんですけど、困った時、何かPRしたい時、地域の課題解決のために奈良クラブがやってくれたから、「俺らもあいつら応援したろうぜ」っていう、このシンプルな繰り返しで盛り上がっているなと。それで優勝したとか、そういうのがあった時には、もう一気にみんなでドカーンと盛り上がれるようになるんです。「あいつ俺がこの前タケノコ掘り教えたってん」みたいな話になるわけじゃないですか。「あいつゴール決めよった」ってなりますよね。

 

 

奈良県の130万人全員と仮に知り合いになったとして、みんなが奈良クラブをいつでもお願いできるチームだよっていうふうに思ってもらえると。それが上手くいったら、お金払うから来てよっていうことも多分あるだろうし、そうじゃなくて、お金払えないけど、申し訳ないけど、逆に今度は僕らが応援行くからっていう、そういうこともあるかもしれない。結局、小さなことの積み重ねで、最終的にこういうことを奈良クラブとやった結果これが解決できたよって言われると、すごく嬉しいので、そこから続いていくという感じです。

 

西阪:ほんとにもう積み重ねなんですね。

 

浜田さん:積み重ねですよ。ほんとに。もう1年1年は小さな積み重ねですけど、1%、2%ぐらいの積み重ねですけど、これが30年、50年、100年続いていくと、まあ大きくなりますよ。バルセロナとかでも、9万8000人収容のスタジアムが埋まるわけですよ、毎試合。

 

バルセロナ ホームスタジアムの満員の観客

 

200万人しかいない町で、9万8000席が埋まるわけですよ。大体人口の5%が来ているわけですよね。それって100年やってきたからなんですよね。だからバルセロナとかを見て、すげえなって思うのはあるんですけど、でも100年の結果こうなっているんで。僕がやるべきことは、僕は今47歳ですけど、いつかは奈良クラブの社長を退くだろうし。そうなった時に、次を引き継いだ人、その次の人も、同じ価値観でこのままでちょっとずつ積み上げていくと、いつしかやっぱり今のバルセロナみたいに9万8000人いつでも満員で、いつでもみんなが応援してくれるような、そういう形に多分なっていくと思うんです。焦らないことが必要ですね。

 

勝利と地域貢献

西阪:勝利と地域貢献と両方あるじゃないですか。今まで取材してきたクラブの方には、勝っても地域のために何もできてなかったら意味がないっておっしゃる方もいたんですけど、そのあたり浜田さんどういうふうに考えますか。

 

浜田さん:勝っているだけだと、結局スタンドは埋まらないんですよ。それは、勝った時には来るけど、負けたら来なくなる観客なので、全部揃えていかなきゃいけなくて。勝っていても、そこにコンセプトがなかったら、そんなには応援されないと思うんです。

 

ファンとのふれあい

だから、自分たちはこういうクラブで、こういうチーム作りをして、こういうふうに強くなっていって、こういう価値観でやっていますというのが明確にあった上で、地域貢献があって、それをやりながら勝つというのが基本です。どれが欠けてもダメなんです。勝利が先かとか、地域貢献が先かじゃないですよ。どっちもですね。

 

西阪:取材していて議論になったんですが、地域密着をするから経営が安定するのか、経営が安定しているから地域密着活動ができるのか、このあたりっていうのは社長からするとどうですか。

 

浜田さん:どっちもですね。結局地域に密着していくのは、中長期の話なんですよね。今日、明日には結果は出ないんですけど、ボディーブローのように効いてくるものです。地域密着というのは、今日のためでもあるし、将来のためでもあるんです。でも金を稼ぐことについては今日のためで、今週末の試合を埋めなきゃいけない。それはPRをして、ありとあらゆるイベントとかやってみて集めるというのは、それはまた別の話なんです。ただイベントも、地域密着型のイベントだったら、こっちもこっちもっていう話になるんで、それは上手く絡ませてやるっていう感じですね。だからどっちもですね。

 

奈良クラブの将来

西阪:改めてこの奈良クラブ、これからどんなクラブにしていきたいと将来像を描いてますか?

 

浜田さん:例えば、スペインでいうとFCバルセロナっていうと、スペイン中の人がFCバルセロナっていうのはどういう価値観を持って、どういうサッカーをして、どういうふうな成り立ちで、というのをみんなが知ってるんですよ。例えばアヤックスだったらこうとか、チェルシーだったらこうとか、みんながその名前を見ると、こういうクラブなんだなっていうのが想像できるんです。

 

 

奈良クラブって聞いたら、みんなが、あそこはもう本当にいろんな所と地域密着して、みんなと知り合って、みんなでクラブを作り上げて、サッカーはちゃんと育成からトップまで同じようなサッカーをしていてっていう。その辺にいるおじいちゃん、おばあちゃんですら奈良クラブっていう文字を聞いたら、自分でこういうふうに説明できるような、そういうようなクラブになりたいなっていうふうに思います。

 

西阪:なるほど。そのためにも本当に1歩1歩ですね。

 

浜田さん:そうです。例えば自分の生まれたときから奈良クラブがあってずっと活動して、小学校の時には選手が来て教えてくれて。中学校になったら授業で奈良クラブの選手が来て教えてくれて。大人になったら一緒にタケノコ掘ってとか。奈良クラブってどんなクラブって言ったら地域にもいっぱい来てくれて、サッカーはもうほんとに面白くて、育成からトップまでみんなが同じスタンスでプレーしていてと、みんなが自分から説明できる。それってなかなか実はないんですよ。

 

 

それができるといいな。奈良県の人たちみんなにそういうふうに思ってもらう。奈良県外でも思ってもらうとうれしいんですけど。そのためにはサッカーのクラブとしてこういうコンセプトでやっているというのをしっかりと僕が世の中に発信すること、地域に発信することが、すごく大切かなと思います。今やっている、ありとあらゆる人と会話していくというスタンスはそのままずっと続けていければいいなっていうふうに思っています。

 

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