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特集 舞の海×西岩親方 大いに語る夏場所展望

相撲 2023年5月8日(月) 午後0:00

NHKの大相撲解説でおなじみの舞の海秀平さんと名関脇だった元若の里の西岩親方の対談。大関昇進に挑む霧馬山と、大関の座を目指して競い合う三役陣など、令和5年夏場所の見どころを語り合いました。

 

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霧馬山の大関昇進の可能性は…

霧馬山は夏場所大関昇進に挑む(春場所千秋楽)

――春場所は霧馬山が優勝し、夏場所に大関を懸けることになりましたね。


西岩親方

早く新しい大関が出てほしいなという思いがあります。その中で少し光が見えたという感じがします。それは霧馬山だけではなくて、大栄翔も2場所2桁勝っていますので、この2人が夏場所に大関昇進を目指すという可能性が高いと思います。是非とも昇進を果たしてほしいなと思います。春場所は三役でも4人が2桁勝ちましたので、ほかの平幕力士との差がちょっと出てきたかな、いよいよ大関を目指せる力士たちが力をつけてきたかな、という印象だった場所です。


舞の海

私は、霧馬山は春場所のあとに大関に上げてしまってもよかったと思います。場所ごとに力をつけてきているのは相撲内容からも伝わってきていますし、押し相撲の力士に対しても十分対抗できている。また切り口を変えると、大相撲の番付は、伝統的に東西に大関を置かなくてはいけないということがある。貴景勝はケガで休場してしまったし、その空白を埋めるためにも霧馬山は春場所で上げてもよかったのではないかなと思うのです。過去には3場所で30勝に満たずに大関に上げている場合もあるんです。北の富士さんも、初代若乃花もそうですね。

横綱大関不在の春場所 責任を果たした三役

――春場所では三役陣が星を挙げたことをどう見ますか。

 


舞の海

横綱大関が不在の場所で三役陣が代わりに責任を果たしてくれています。最近は毎場所番付が入れ替わるのではなく、三役の安定感が増しています。霧馬山が大関に昇進して、あとの三役も追いかけてほしいですね。

 


西岩親方

横綱大関がたくさんいると、勝ち越すことすら大変になるんです。2桁勝利が4人というのは横綱大関がいなかったということがありますけれどもね。


舞の海

それもありますね。でも取りこぼしが少ないということですから安定感はあるわけですね。

 

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正代が三役復帰 復活か?

正代は翠富士に勝って10勝を挙げた(春場所千秋楽)

――正代が三役に戻りましたね。


西岩親方

春の珍事と言ったら怒られてしまいますかね(笑)。まだできるじゃないかという内容でした。この相撲が夏場所以降も続けば、大関復帰も十分あり得ると思います。


舞の海

珍事は正代に失礼ですね(笑)。大関という重荷がなくなったことと、体調が戻ったということ。2つが重なっての活躍だったと思います。 腰高でも何でもいいので腹を突き出して、とにかく正代には走りまくってほしいですね。

 


――幕内でこのほか注目されている力士は誰でしょうか。

 

翠富士(奥)が肩透かしで遠藤を破る(春場所6日目)

西岩親方

翠富士です。10連勝しましたからね。小兵ではありますが、肩透かしという十八番を持っていて、それを生かす押す力、少し隙があったら押し出してしまうという攻める力が身についてきたような気がします。動きもいいですし、見ていて気持ちがいいです。最後に5連敗しました。優勝するには15日間戦って成績を残さなければいけないのですが、小兵なだけに毎日が精いっぱいですから、息切れしたと思います。15日間全力で戦い続ける体力をつけることです。

 

 

新入幕で敢闘賞の金峰山 母校からの化粧まわしと

舞の海

私が注目するのは金峰山です。どこまで番付を上げて、どこで壁にぶつかるのかに注目しています。突き押しが相手に当たったときにはすごい威力を発揮しているんです。阿炎に相撲を取らせないぐらいの堂々たる勝ち方をしている。これは相当強いなと。これから経験を積み重ねていったら、この突っ張りは相当上位陣にとっては脅威になるのではないかなと思います。上背もあるので四つ相撲も覚えてほしいのですけれども、今はこの馬力ある突っ張りでどこまでいけるのか楽しみですね。

幕内復帰の朝乃山 意見が分かれる

――朝乃山が幕内に戻ってきました。


西岩親方

やっぱり力はありますね。夏場所も相当勝つんじゃないでしょうか。幕内下位の番付ですから優勝も狙えるかもしれないですね。1年休んだので、力が落ちているかなと思ったんですが、全然落ちていないですね。

 

舞の海

異議ありです。 私は正反対です。


西岩親方

正反対? ほう。

 

朝乃山は勝ったが落合にもろ差しを許した(春場所千秋楽)

舞の海

まず逸ノ城戦。右四つで寄っていったのですけれども、上手が取れず寄り切れなかった。そして12日目には、幕内に何とかとどまっている状況の王鵬にもろ差しを許して敗れた。さらに去年まで高校生だった落合にもろ差しを許した。確かに、土俵際の粘りは強いなと思ったんですが、あれだけ落合に手こずるというのはちょっと意外でしたね。私は幕内での相撲は不安ですね。

 

西岩親方

確かに落合にもろ差しを許しましたが、そのあと上手を取って勝つというのは並みの力士にはできないです。 普通なら寄り切られていますよ。勝ちに持っていけたのは、力がある証拠なんじゃないかなと思います。

 

舞の海

なるほど確かに。けれどもこの間まで高校生だった力士にあれだけ手こずるのかと。私は やっぱりプロとアマチュアの差というのは歴然としていてほしいですね。しょせん高校生、しょせん大学生だなというくらいに。

 

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高校卒業まもない落合の活躍は驚き

新十両の落合は荒篤山に勝って10勝目(春場所14日目)

――落合はどう見られましたか。


舞の海

勝ち越しはするだろうなとは思っていました。十両上位の力は間違いなくありますね。ただ身長が高いわけではないので、上背があって上手を取りにくる力士に対してどういう相撲を取るか、磨いてほしいですね。体型を見ると下から突き上げるようなハズ押しで攻める相撲を取っていったらいいかなと思いますね。


西岩親方

注目されていたのですけれども、こんなに勝つとは思わなかったですね。いくら強いといっても舞の海さんがおっしゃるように、去年まで高校生だった力士に、十両の関取衆がそんな簡単に負けないと思いましたのですが、次から次へと負けていきました。

 

――夏場所には日本体育大学を出た2年連続アマチュア横綱の中村泰輝、しこ名は大の里が幕下10枚目格付け出しでデビューします。

 

大の里(中村泰輝)の新弟子検査(2023年4月18日)

西岩親方

日本人の大器がいよいよプロに入ってきました。これは三役を目指せとは言いません。もう最初から横綱大関を目指すつもりで相撲に取り組んだほうがいいですね。

 

舞の海

私は相撲界の大谷翔平になれると思います。


西岩親方

大きく言いましたね(笑)。 大谷翔平までいきましたか。


舞の海

組んでよし離れてよしで、また大会の優勝インタビューを見ていたらすがすがしくて爽やかだったんですよ。これから大けがをせずに出世していけば、間違いなく角界を背負って立つ存在になっていくと思いますね。二所ノ関親方(元横綱稀勢の里)も大事に、しかし厳しく育ててほしいなと思いますね。

 

相撲専門雑誌「NHKG-Media大相撲中継」から

 

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