特集 関脇・御嶽海 優勝決定戦のウラで「内心は...」

22日に千秋楽を迎えた大相撲秋場所。2年ぶりに優勝決定戦までもつれた場所を制したのは、関脇・御嶽海でした。千秋楽当日のサンデースポーツ2020に生出演。激しい優勝争いの中で秘めていた思いを語ってくれました。
優勝、実は狙っていた?
26歳の御嶽海は去年の名古屋場所に続いて、2回目の優勝。今場所は2横綱1大関が休場する中、東の関脇の御嶽海自身、優勝を狙えると言う実感はあったのか、まず尋ねると。
御嶽海 いやいや「心の中でしか」思ってなかったですけど。でも素直にうれしいです。
メディアに対して表向きは「2桁勝利を目指す」と言いつつ、心の中ではやっぱり優勝を狙っていた。飄々とした言動で知られる御嶽海ならでは(?)の言い回しで胸の内を語ってくれました。
混戦の優勝争いを制す!
混戦の秋場所。御嶽海は3敗で優勝争いのトップに並んで千秋楽を迎えました。本割では遠藤を圧倒して下し、関脇・貴景勝との優勝決定戦へ。貴景勝には今場所の八日目の対戦を含めて2連敗中。分が悪い相手との大勝負を前に、御嶽海は支度部屋で目を閉じ集中力を研ぎ澄ませます。
そして迎えた決定戦。
立ち合い、激しく当たる両者。ここで引いた貴景勝に対し、御嶽海はもろ差しから一気に出て完勝。見事、2回目の優勝を果たしました。
表彰式でのインタビューでは。
「朝起きて、部屋のみんなが優勝の準備をしてたので、もう優勝するしかないのかなという思いにさせられました。ありがとうございます!」
「めちゃくちゃ緊張してました」
実は御嶽海、十日目の大相撲中継でのインタビューで優勝争いについて聞かれ、こう答えていました。
「まあ興味ないっす。」
混戦の優勝争いのさなか、果たして内心はどう感じていたのか。心の内を聞いていきます。
――優勝インタビューで「優勝を意識したのは今朝」と言ってましたが本当ですか?
御嶽海 本当です!
――十日目に優勝争いに「興味ないです」と答えていましたが、逆に興味ありありにも見えましたが…。
御嶽海 内心ね、ちょっとありましたけども(笑)。でも表には出さずに心の中で止めとこうかなと
――千秋楽、先に貴景勝が勝って、自身の取組に臨みましたが、その時の心境は?
御嶽海 優勝を意識してないつもりだったんですけど、ドキドキというか、いつも以上に緊張しちゃって。でも土俵にあがって大声援を聞いて勝つしかないと思いましたね。結果、今場所で一番いい相撲が取れたと思います。
――優勝決定戦では、見ている方がドキドキするほどの緊張感でしたが、全く表情に出ていませんでしたね。
御嶽海 いやいや、めちゃくちゃ緊張してました。脚に力が入らないような感じでどうしようかと。支度部屋の時は不安でしょうがなかったです。でも土俵にあがってみなさんの声援で、ここで勝つと言う気持ちになれました。応援してくれる人たちの声が、そうさせてくれました。
――決定戦の前は、割と早く支度部屋から出てこられましたよね。
御嶽海 意識して早く出ました。学生時代「先に先に行動するように」と監督から言われたことをふと思いだして、それを実践しました。
ライバル 貴景勝
――決定戦の相手の貴景勝には、今場所八日目に対戦して、一方的に敗れていました。
御嶽海 まあ今映像を見ても思いますが、十五日間で一番最低な相撲を取ったなと。自分の本来の相撲を取りきれなくて悔しい、というか、それを通り越すくらいの感情でした。あの一番、本当に貴景勝関が強かったなと。
――ところが優勝決定戦では、逆に一方的に勝利。振り返ってどうでしょうか。
御嶽海 見ていて自分でもほれぼれするような相撲ですね(笑)。八日目の事は本当に忘れて取りました。それに同じ若手として、お互いに土俵を盛りあげていこうと思ってきたので、二人で優勝決定戦をやれるっていうのは最高ですよ。こんなに早く実現できるとはね。嬉しかったです。
――やはりライバルとして意識はしてますか?
御嶽海 意識はしてます。やっぱり彼は強いんでね。でも年下ですし負けたくないですよ。
母からのメッセージに…
御嶽海が優勝を決めた後、カメラは客席でひときわ喜ぶ女性の姿をとらえていました。マルガリータさん。御嶽海のお母さんです。取材班は優勝決定後、マルガリータさんに御嶽海へのメッセージをお願いしました。
母・マルガリータさん
「とてもうれしいですね。まさかまさか、もう夢にも思わなかった。2回目の優勝はすごい。自慢じゃないですけど、いい子なんですよ。優しい子です。これからが大事だから、本当に毎日毎日、体を大事にしてほしいです。ケガしないようにいつもママは祈ってるから。自分の体だけ大事にして下さい。お願いします。」
愛情いっぱいのメッセージを見る御嶽海の顔には自然と笑みがこぼれました。
御嶽海 愛情しかないですね。もう本当にうれしいです。お母さんには全然怒られた記憶もないんですよね。何をしてもいつも応援してくれました。口が酸っぱくなるぐらい言われたのは、「体だけ気を付けて」、「食べ過ぎには気を付けて」とそれだけは今も気を付けてます。
――御嶽海関はおおらかさな印象で、度胸があるって多くの人から言われますよね。そこはやっぱりお母さんの影響でしょうか。
御嶽海 そうですね。お父さんとお母さんに感謝です。実は場所中も毎日お母さんからLINEが来てたんですけど、ちょっと「一方通行」で、まだ返してないんです…。
――それは早く返信してあげてください!
目指すのはより高い場所
そして2回目の優勝を果たした関脇のこれからについて。御嶽海は16場所連続、実に2年半以上に渡って三役を務めています。この数字は賞賛されるものですが、なかなか大関昇進に挑めていないことも事実。今場所は12勝3敗。次の九州場所で目指すものとは。
――16場所連続の三役というのはすごいですが、「ちょっと長すぎるよ」という声もありますよね。それが今場所の優勝で、次の目標が見えてきたのではないかと思います。大関昇進へ、今どんなイメージでしょうか。
御嶽海 それはもう周りの方から、「そろそろ…」っていう声が多いんで。僕もこの地位にとどまっていてはいけないと思います。11月場所ではこの上を目指して、大関に向けて、まずは二桁白星をとっていきたいという気持ちはあります。
九州場所で二桁白星をとり、その次、来年の初場所に大関昇進へ挑戦するという、力強い決意表明。その御嶽海に対し、日本相撲協会の八角理事長は。
八角理事長
「彼は場所によってムラもあります。調子が悪い時にいかに安定した力、数字を残すかですね」
――八角理事長からの指摘についてはどうお感じですか。
御嶽海 おっしゃる通りだと思います。自分は良いときと悪いときの差が激しいので、悪いときでも辛抱して、とにかく白星につなげることは重要だと感じています。
――相撲界の大先輩方からは、「御嶽海はもうちょっと稽古をすれば、もっと圧倒的に強くなるのに」という声がよく聞かれますが、その点については。
御嶽海 そうですね…(苦笑)。えーと、頑張って稽古します!
――では来場所以降の大関昇進をめざして、何を課題として取り組んでいきたいですか。
御嶽海 やっぱり自分の相撲である押し相撲を極める、引かない相撲を極めていくのもひとつです。それに、今場所は2桁の白星を取る意識がすごく強かった。その意識をもっと強めることができれば、今場所のように優勝争いに絡んでいけると思うので、意識のところからまた改めていきたいなと思います。
時に聞かれる厳しい声も、御嶽海への高い期待の表れ。来場所、両横綱が戻ってきた場合、果たしてどんな相撲を見せてくれるのか。来場所以降大関を目指すと公言した御嶽海の今後に大注目です。