特集 メタバース × スポーツ観戦 スポーツ界の模索

みなさん、『メタバース』ということばをご存じですか。インターネット上の仮想空間のことで、スマートフォンなどから『アバター』と呼ばれる自分の分身を操作して交流したり買い物をしたりするサービスです。
スポーツ界では、プロ野球の一部の球団で球場に来なくてもアバターで試合を観戦できる取り組みなどが始まっています。新型コロナや人口の減少で集客が課題となっているスポーツの現場ではいま、メタバースを収益につなげようという動きが加速しています。(おはよう日本で2023年4月7日に放送)
マイナースポーツの現場で…
ことし3月に行われた日本ハンドボールリーグのプレーオフです。会場での観戦と並行して、試験的にメタバースでの試合配信が行われました。
試験的に行われたメタバースでの配信
試合を見ながら、自分の分身アバターで紙吹雪を飛ばしたり拍手を送ったりすることができます。ユーザー同士がコメントを寄せ合って交流することもでき、会場に来なくても試合をリアルに楽しむことができます。将来的には、こうした仮想空間での観戦やグッズの販売などで収益化を目指しています。
体験した女子高校生
「ハンドボールは知らない人が多い中で、(メタバース上で)知ってる人で集まれるのは結構楽しいですし、つながりは大事だと思います」
保護者
「子供を連れて(観戦の)遠征はなかなか難しいので、こういう取り組みがあるとちょっと見てみたいなーと思います」
背景には過疎化 そしてコロナの影響も
ハンドボールで始まった『メタバース観戦』。その背景には、深刻な観客の減少があります。
今回の試みを行ったチームの拠点は熊本県山鹿市、県北部の山間にある人口5万人ほどの自治体です。
抱える課題は人口の減少。さらに新型コロナの影響もあり、この10年ほどで観客数は3分の1以下に減りました。
地方を拠点とするチームが多いハンドボールでは集客が深刻な課題となっていて、外からファンを獲得し、収益を確保したいという狙いがあります。
勝田祥子ゼネラルマネージャー(オムロンピンディーズ)
「遠方の方もわざわざ移動して来ていただくのではなく、画面を通して同じような臨場感の中でハンドボールを楽しんでいただける」
メタバ-ス最前線 広がる可能性
メタバースをスポーツの新たな収益源とする動きは世界に広がっています。
ソニーグループがことし1月に発表したのは、サッカーのイングランドプレミアリーグ、マンチェスターシティーとの実証実験の内容です。世界中からファンを取り込もうと、仮想空間でのコンテンツを開発しています。
その1つがこちらのアプリです。
仮想空間の中でアバターとなってピッチに入ることで、まるで選手のひとりかのように見ることができます。
最新技術を使いメタバース上で、選手のプレーを忠実に再現。画角やスピードも自由に変えることができ、選手の間近にいるような視点でプレーを追体験することができます。実証実験を通して、『メタバース観戦』の可能性を探っていくということです。
アプリの制作担当者
「よりリアルとデジタルというかバーチャルの空間がシームレスに繋がっていくようなことはできるんじゃないかなと思っています。ファンとの関わり方をより深くするような仕組みにしていけたらなと思っています」
この記事を書いた人

細井 拓 記者
平成24年 NHK入局 北見局、釧路局、札幌局を経て、スポーツニュース部。
陸上、バレーボールなどの競技のほか、IOCなどオリンピック・パラリンピック関連の取材を担当。素潜りや山登りなど北海道勤務時代に覚えた自然遊びが趣味。