特集 新十両 落合 「立ち合い」磨き臨む春場所

昭和以降で初めてデビュー1場所で十両に昇進した鳥取県倉吉市出身の落合。新十両として臨む春場所でも9日目で勝ち越しを決める快進撃を見せている。
デビューの初場所で幕下全勝優勝し、真価が問われる十両の土俵。落合はどのように臨もうとしたのか。場所前に聞いた。
「1から相撲を学びたい」教習所に入所
春場所を前にした2月。新十両・落合はほかの部屋の入門まもない若い力士たちといっしょにすり足など相撲の基本の稽古に汗を流していた。東京・両国の国技館に隣接する「相撲教習所」。関取になってからの入所は落合が初めてだというが、「1から相撲を学びたい」と志願した。
力士たちが野見宿禰神社の掃除をする
教習所では、相撲の歴史なども学ぶ授業もある。この日は、「相撲の神様」をまつる「野見宿禰神社」におまいりし、今後の活躍を誓っていた。
デビューの初場所で感じた「課題」
初土俵を踏んだ初場所では、幕下全勝優勝。最高の結果と思えるが、本人に聞くと、決して満足できる土俵ではなかったという。
落合
結果的に勝負に勝つという意味では、7戦全勝で優勝できましたが、相撲の内容を見ればいい相撲というのがあまりなく、課題ばかりある相撲だった。
その課題として挙げてくれたのは、「プロの立ち合いの厳しさ」だった。
初戦が不戦勝となり、実質的なデビュー戦となった初場所4日目の瀬戸の海戦。取組前に入念に想定を重ねる落合は、体格では自分が上回っていることから、立ち合いは強く当たろうとイメージしていた。しかし、勝ちはおさめたものの、相手のスピードは想像を超えていたという。
立ち会いに課題を感じた瀬戸の海戦(令和5年初場所4日目)
落合
相手の立ち合いがすごく速いなと思いました。思った以上に相手の立ち合いが低くて、少し驚いてしまいました。全然アマチュアとは違う。
もう少し、詳しく聞いてみた。
落合
例えば自分と南さん(記者)が戦ったら、パワーでは僕の方が勝つと思うんですよ。だからと言ってバーンと当たって押していくイメージだけを持っていると、速く低い立ち合いをされると僕が押されてやられちゃう。すごく怖いんですよ、立ち合いって。
「立ち合い」磨き臨む春場所
春場所直前 大阪での稽古
春場所直前、大阪での稽古を取材した。落合は、20番近い「申し合い」と呼ばれる稽古で、激しい当たりを繰り返していた。目指す理想の立ち合いがあるという。
落合
もっとスピードをつけて、早く『自分の形になる』っていう練習をしています。相手の形にさせずに自分が十二分な形になって攻めるというのをすごく考えて、師匠(元横綱・白鵬の宮城野親方)に教わりながらやっています。
宮城野親方が落合の立ち会いを指導する
落合
立ち合いのスピードから相手の重心を崩してそこから『走る』のが理想です。なかなか簡単にできるものじゃないので、何年もかけて理想の相撲を磨いていきたいです。
力士としての思い
高校卒業後、大相撲入門までの8か月間を肩のけがの治療とリハビリに費やした落合。苦しい時期にも「やめようと思ったことはない。相撲がとてつもなく好きなんですよ」と笑顔で語っていたのが印象に残っている。そして、関取になったいまも、相撲の研究をするのが「楽しい」とあの頃と同じ表情で話す。
落合
相撲の研究をして、わくわくしたり緊張したりして、それを鎮めて寝る。それで、次の朝、稽古で実践する。プロだなと感じます。
計り知れない伸びしろを秘めた19歳。さらなる快進撃が楽しみだ。
この記事を書いた人

南 幸佑 記者
令和2年NHK入局
鳥取局で遊軍・スポーツを担当し、落合を鳥取城北高校相撲部時代から取材。