特集 小結・琴ノ若 “ふた桁、それ以上を” ~推し相撲~

「そろそろ大化けしてほしい」。八角理事長がそう話して将来を期待する力士が小結・琴ノ若だ。
先場所小結に昇進した25歳は、4場所連続で勝ち越しを決め「ふた桁、それ以上を」とさらなる高みを目指し春場所の土俵に臨んでいる。
新三役で得た学び
令和元年5月 琴ノ若の新十両会見(右が父で師匠の佐渡ケ嶽親方 中央写真は祖父で元横綱の琴櫻)
父は元関脇・琴ノ若の佐渡ヶ嶽親方、母方の祖父は元横綱・琴櫻と親子3代の力士。祖父や父の背中を追って徐々に力をつけ、先場所小結に昇進した。
令和5年初場所千秋楽 勝ち越しを決めた北勝富士のと一番
新三役として臨んだ先場所は、同じ部屋の琴勝峰が千秋楽まで優勝争いをする一方、初日から4連敗。さらに12日目で7敗目を喫した。それでも終盤に3連勝し、新三役で勝ち越しを決めた。手応えと反省、学びの場所になったという。
小結・琴ノ若
琴勝峰の活躍はうれしくもあり、悔しくもあった。4連敗スタートも内容は悪くなかったので焦りはなかったし、相撲を変えなくてよいと思っていた。ただ、あとで自分の相撲を見返すと慌てて出ていく相撲があり、勝ちたい意識が出たのかもしれない。相手の相撲の研究より自分がどう取りきるか。自分の相撲を取りきれば結果はついてくる。
祖父の相撲を目指し
祖父で元横綱・琴櫻の不知火型の土俵入り
激しい出足と当たりの強さから「猛牛」の異名をとった祖父の相撲を研究してきた琴ノ若。「目指しているのは祖父の様な一気に攻める相撲」と今場所の前も一気に出る攻めを磨いてきた。稽古を重ねて培った前に出る攻め。そして自分の相撲を信じて、いかに土俵で落ち着くことができるか、気持ちを高めて今場所に臨んだ。
9日目は大関経験者の正代との2敗どうしの一番だった。
相手の馬力に押されて一時、土俵際に追い込まれたが、柔らかく残して差し手を振りほどくと、一気に前に出て押し倒した。
続く10日目は優勝経験のある阿炎との一番。立ち合い、相手ののど輪にも決して下がらず、前へ。たまらず引いた相手を見逃さず、再び前に出て押し倒し。連日の力強い相撲で勝ち越しを決めた。
小結・琴ノ若
落ち着いて我慢するところは我慢して、攻めるところで攻めると、メリハリつけて攻められた。しっかり気持ちを作って1日1日いい相撲をと心がけている。そこが結果につながっている。
力強い相撲内容に八角理事長も「琴ノ若は慌てなかった。力をつけた印象だ」とうなずいた。
小結として2場所連続の勝ち越しを決めた琴ノ若。ただ、決して現状には満足していない。横綱・大関が不在となった異例の春場所。成長著しい25歳が最後まで土俵を盛り上げ、混戦模様の優勝争いに名乗りを上げる。
小結・琴ノ若
いい相撲を取ればお客さんも喜んでくれると思うし、自分の相撲を取りきれればそうなると思うので、しっかり持ち味を出していきたい。ここから1つでも白星を積み重ねて、ふた桁、それ以上を狙っていきたい。
この記事を書いた人

持井 俊哉 記者
平成26年NHK入局
北九州局を経て、スポーツニュース部。小1から剣道をはじめ、現在、5段。「打って反省、打たれて感謝」をモットーに何事にも謙虚に誠実にチャレンジすることを目指す。