2023カーリング日本選手権女子展望 日本代表はロコ・ソラーレ

NHK
2024年3月8日 午前10:36 公開

(※2023年3月15日スポーツオンライン掲載)

2023年3月18日に開幕するカーリング女子の世界選手権。日本代表としてロコ・ソラーレが出場します。大会の見どころや展望を、今大会、NHKのテレビ中継ではじめて4人制の解説を担当する小穴桃里さんに聞きました。

北京五輪は銀メダル ロコ・ソラーレの現在地は?


<小穴桃里さん>
『日本代表のロコ・ソラーレのワールドツアーランキングは4位(インタビューを実施した2023年3月9日現在)です。かなりたくさんの大会に出ているなかでの4位なので実力通りの順位だと思います。出場する中では追われる立場といえると思います』

(写真)日本代表のロコ・ソラーレ(左から藤澤選手、吉田知那美選手、鈴木選手、吉田夕梨花選手、石崎選手)

ーーー 1月にグランドスラムで日本勢として初優勝しました。勢いがついているのでは?

調子よく来ていると思いますし、転戦の疲れがある中でも日本選手権をしっかり勝ちきったので勢いはあると思います。今回の参加13チームの中でも、ロコ・ソラーレはかなりいい状態でこのタイミングを迎えているので、いいポジションに入れるのではないかと思います。 

ライバルとしてロコ・ソラーレをどう見てきた?


ロコ・ソラーレは悪いときでも大崩れしない。どうにか助け合ってチームでパフォーマンスを発揮しているので、そういったところに経験値があるなと感じていました。

(写真)2022年11月 パンコンチネンタル選手権決勝

ここがまずいよねというタイミングや、ここがチャンスだよねというタイミングは、試合の中では意外と分からないことがあるんです。ただ、経験のあるチームだと「ここがいま大事だから注意してやろう」とか、「このショットを決めたらすごいチャンスになる」というのが分かっています。(ロコ・ソラーレは)そうプレーしているように見えますので、本当に経験の豊富さを感じます。 

ーーー 小穴さんがみるそれぞれの選手の特徴は?

リード:吉田夕梨花選手

安定感のあるショット。リードなのでスーパーショットを決めるっていうよりは淡々と同じショットをどれだけ精度を高く繰り返せるかですが、それがすごくいい選手です。しっかりしているというか、チームの中で最年少なのに締めるところは締めています

セカンド:鈴木夕湖選手

夕梨花選手と2人でスイープするときのウエイトジャッジがすごく的確です。小柄なのでスイープ力が海外の選手に比べて大きいというよりは、どちらかというといいタイミングで適切な量を掃いて、いいところに持っていける。ジャッジのよさはすごく光りますね。 

サード:吉田知那美選手

声かけが印象的な選手だと思うんですが、必要なタイミングで必要な声かけをチームにしていて、ショットでいうとゲームチェンジャーです。チームのちょっと苦しい場面でしっかりショットで救えるような選手だと思います。 

スキップ:藤澤五月選手

司令塔ではあるんですけど、司令塔をやりながらショットではエースです。やっぱり藤澤選手が自信を持って投げている時はチームも強いという感じですね。グイグイ引っ張っていくリーダーっていうよりは、みんなで助け合ってやっている感じです。スキップは結構「ぐいぐい引っ張っていくぜ、私がリーダー」みたいな選手が多いのですが、よく周りの選手の話を聞いたり耳を傾けながらやっているタイプの選手だと思います。 

リザーブ:石崎琴美選手

カーリングは試合の後、ナイトプラクティスという夜間練習があるんですが、それをリザーブの選手に任せられるかどうかで選手が夜間に休めるかどうかが変わるんです。そういったところで、石崎選手がすごく助けになっているという話を聞いています。経験もありますしベンチから選手たちを見守る存在として皆さんのお姉さん的存在で、いい調和をチームにもたらしていると思います。 

ーーー スキップが司令塔兼エースのチームが多いイメージを持っていましたが? 

エース的ポジションがサードの選手というチームも結構多いんです。もちろん吉田知那美選手はものすごくショットが上手なんですけど、やっぱり藤澤選手がショットもエースという感じがします。ただチームを声かけで支えるのは知那美選手。必要な役割が過不足なくあるように見えます

今大会、ここに注目して!


ロコ・ソラーレはすごく笑顔が印象的なチームだと思うんですけど、よく聞いてみると会話が結構面白い。「こういうことを確認しながらやってるんだ」とか、私も後からテレビで録画しているのを見て、すごく勉強になると思います。

ーーー カギを握る選手は?

鈴木夕湖選手ですね。5投目までテイク(相手のストーンをはじき出すこと)ができないというルールが実施されていて、ストーンがたまりやすい展開になったんです。

(写真)鈴木夕湖選手(2022年11月パンパシフィック選手権)

セカンドの鈴木選手は、今まで早いテイクやヒットが多いポジションだったんですけど、すごく多彩なショットが必要になったんですよね。チャンスメークができるかどうかは、セカンドの選手のショットが決まっているかどうかでかなり変わってくるので、鈴木選手のアップウエイトから優しい繊細なショットまで、使い分けなどを見てもらえたらいいなと思います。

(写真)2022年11月 パンコンチネンタル選手権 優勝決定直後

実は、後ろの2人がスーパーショットを投げている時って、チームにとってはピンチなんですよね。ピンチを打開するためにスーパーショットが必要になってくるんです。いい時っていうのはリード、セカンドでちゃんとショットが積み上げられて後ろに回しているので、派手なショットがなくてもしっかり点が取れる。そこがうまくできるかどうかは鈴木選手のショットにかかっているなというのはあります。

ライバルをどう見る? 出場は13チーム


半分ぐらいが若いチームだったり新しいチーム、組み直したチームです。全体的にどのチームも次のオリンピックを見据えて動いているなという印象を受けています。

ーーー まず6位以内に入るために予選リーグで鍵を握るところは?

予選リーグは12試合ある中で、ずっといい集中力を発揮するのは難しいんです。いいときもあれば悪いときもある。順位が競りそうなチームには、しっかり勝ち越しておきたいですね。同じ勝率になったときに対戦成績がいい方が勝ち進むルールです。なので競りそうなところには勝ち越しておきたいっていうのはありますね。 

ーーー 特にライバルになりそうなチームは?

優勝したいとなると、スイス、スウェーデン、カナダ。この3つと日本を入れた4チームが優勝争いに関わってくると思うんですけど、その3チーム相手に2勝1敗ぐらいでいきたい。そうすると優勝への道が出てくるかなと思っています。

あとは力を持っていて競りそうなところでいうと、韓国、アメリカ、ドイツ。世界ランキングはロコ・ソラーレほどではないんですけど、今季はデンマークがヨーロッパ選手権で初優勝して好調です。そのあたりにはしっかり勝っておきたいですね。 

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ずばり優勝候補は?


スイスと日本が今回の優勝候補だと思っています。と言うのも、スイスと日本はオリンピックから、ほとんどメンバーが変わらず今シーズンに来ています。スイス戦は優勝争いにはとても大きいかなと思います。

(写真)北京オリンピック準決勝 スイス戦

スイスはスキップをやっていた選手がたくさんいるんです。ハウスの状況を見られる選手がたくさんいるのが強みで、カーリングが上手です。ショットもうまいんですけど、どちらかというとカーリングのゲーム運びが上手だという印象ですね。 

(写真)北京オリンピック準決勝 日本はスイスを破って決勝へ

私は日本の優勝を予想しています。勢いもありますし、参加チームの中でも成熟度が高いチームだと思うので、優勝するんじゃないかなと。

ーーー スイス戦の注目ポイントは?

スイスの選手はすごい背が高くて大きい選手が多いんですけど、カーリングは体重別でも体格別でもないので同じ石を使って試合をするんです。ロコ・ソラーレが体格では負けていても、それをはね返していくような活躍は元気をもらえるポイントだと思います。

(写真)北京オリンピック予選リーグ スイス戦

スイスとは何回か試合する事になると思うので、最後にうまくピーキングをできているチームが勝つと思います。予選を踏まえて「決勝トーナメントでピーキングできている方が勝つ」ぐらいの差しか2チームの間にはないと思います。同じチームと再び対戦したときにどういったところが変わっているかとか、どういったところがうまくいっているか、というのを見比べるのは楽しいポイントだと思います。あと、カナダは今季ロコ・ソラーレと何回も試合をしていてすごくいい勝負をしている相手なので、私は個人的には楽しみにしています。

解説者 小穴桃里として何を見てもらいたい?


(写真)藤澤五月選手 2022年11月パンコンチネンタル選手権決勝

投げて手を離したあとにいろいろできるスポーツってあまり多くないと思うんです。修正したり引っ張ったり曲げたりストレートにしたりと。カーリングは1人じゃショットが決められないんですよね。そこに面白さがあるというか、1個のショットを決めるにしてもチームによってアプローチが全然違うんです。ちょっとディープな目線かもしれないですけど、そういったところも見ていると面白いなと思います。

(写真)2022年11月 パンコンチネンタル選手権

どうやって止めたい位置に持っていくか。回転数を上げて曲がるポイントを遅くしてアプローチしたり、わざとちょっと外に離して曲がりを少なくして、自分たちの持っていきたいところに持って行ったり。たくさん幅をとって対策するというチームもあります。結構ばらばらなんです、チームによって。そういったところも見てみると面白いかなと思います。 

ーーー 解説者としての意気込みをお願いいたします

今回初めて1人で解説をやるのでちょっとドキドキしています。初めて見るっていう方もいるとは思うんですけれど、どちらかというとオリンピックのブームを経験して、見る人の目も肥えてきたと思います。カーリングに入りたての人にも分かりやすく、何回も見ている人たちも飽きないような解説ができたらいいなと思っています。 

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