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特集 ISSIN “岡山から目指す頂点”全日本ブレイキン選手権

アーバンスポーツ ブレイキン 2023年2月17日(金) 午後0:00

全日本選手権の男子オープンで初優勝を目指す17歳のBBOYが岡山市にいる。ダンサーネーム「ISSIN」で活動する高校2年生の菱川一心選手。「今、一番勝ちたいと思っているバトル」と語る全日本に向けて、大会直前まで試行錯誤を重ね武器とする大技の完成度を高めている。

 

“誰もやっていないことをしたい”

 

 

ISSINの持ち味は、爆発力のあるダイナミックな動きだ。身長1メートル64センチの体を目いっぱい使った変幻自在な動きは見た人をひきつける。

 

 

 

「目立つのが好き。誰もやっていないことをして目立ちたいっていうのが小さいころからずっとある」

 

本格的にブレイキンを始めたのは8歳のとき。もともとサッカーをしていたが、姉の影響でダンスに出会い、父親に連れられて訪れたダンススタジオでブレイキンを見て、「何?この動き!?かっこいい!」とすぐにのめり込んだ。

 

視界に入ってきたパリ 全日本選手権は特別な大会

国内で着実に結果を残し、2022年11月にアメリカのニューヨークで開かれた世界最高峰の大会でベスト4。世界の舞台でも頭角を現し、パリオリンピック出場も視界に入ってきた。

 

 

ISSIN

頑張りしだいでは、パリオリンピックは手の届くところにあると思っているので、そのチャンスは逃したくない。最近、オリンピック出場が決まった時の夢を見た。正夢にするために今を全力で突っ走らないといけない。

 

オリンピック出場のために重要な大会となる全日本選手権。好成績を残した選手は新年度の強化選手に選ばれ、オリンピックの出場権をかけた世界選手権などの切符を手にできる可能性が高まる。ISSINにとっても全日本は特別な大会だ

 

 

ISSIN

誰よりもかまして、誰よりもいい踊りをして、みんなの脳に“ISSIN”の名前を刻むという気持ちで挑む。全日本のことをずっと考えていたので、絶対に勝ちたい。今、一番勝ちたいと思っているバトル。

 

勝つために 大技「1990」を改良!

 

勝つためには一切の妥協を許さない。

大会本番まで2週間あまりとなった練習。最終調整かと思いきや、失敗を繰り返すISSIN。この段階でも大技の改良に取り組んでいた。

 

 

繰り返し挑んでいたのは「1990(ナインティーンナインティ)」。片手で逆立ちし、高速で回転する難度の高い大技だ。成功すれば高得点が期待できるが、失敗のリスクも高い。一か八かで挑む選手も多く、ISSINもこれまではリスクを背負ってダンスの構成に組み込んできた。

 

 

 

この大技の成功率を高めるだけでなく、難しい姿勢から技に入り、難度も上げて、全日本で勝負しようと考えている。どうしたら、より長く、きれいに回転できるのか。自身がイメージする動きに少しでも近づけようと、試行錯誤を繰り返した。

 

 

スマホで撮影し、コマ送りにして何回も確認。練習での自分の動きをいつでもどこでも振り返れるように、自宅に帰ると、その日の練習で撮ったすべての動画をみずから編集する。空いた時間があれば、映像を見て、改善点を探っている。

 

「考えれば考えるほど動きはどんどんよくなっていく」

 

いつもダンスのことを考え、とことん競技と向き合っている。そして見つけ出した大技「1990」の成功率を高めるカギ。足を交互に高速で動かすISSIN独自の動きだ。

 

 

 

これによって軸が安定し、長く、きれいに回転することができた。「次のバトルでは必ずこれでいく」。手応えをつかみ、大きな自信を得た。

 

 

 

ISSIN

誰もしていないことをいかに自分で編み出すかというところに、僕は価値を感じるし、そうすることで、注目されるダンサーになれると思う。自分だけのスタイルを追い求めて、これからも練習していく。

 

大切な存在 ”教え子”たち

 

 

常に新しい動きを追求するISSINにとって、大切な存在がいる。週に2回、みずからがブレイキンを始めたダンススタジオで指導する小中学生たちだ。このレッスンもISSINが成長するために欠かせないものになっている。子どもたちがわかりやすいようにかみ砕いて説明することで、自分の頭の中も整理されるという。

 

ISSIN

口に出して、相手が理解できるように言語化することによって、自分も”もっと簡単なやり方があったな”と気が付いたり、動き方が分かっていろんな方向に試せるようになったりする。大きなプラスになっている。

 

教え子の中には、ISSINのパフォーマンスを見てブレイキンを始めた子や、遠方からわざわざ指導を受けに来る子もいる。ISSINの背中を追うBBOYやBGIRLの存在が大きな励みになっている。

 

ISSIN

教えている子どもたちがめちゃくちゃ頑張っている。僕が練習している隣で黙々と練習している姿を見ると、“負けてらんねえな”と思う。生徒の存在はでかい。

 

いざ全日本選手権へ

 

誰もやったことのないダンスで見た人たちを驚かせたい。唯一無二のパフォーマンスでパリオリンピック出場を目指すISSINが日本一をかけたバトルに挑む。

 

ISSIN

後悔しないように、出し惜しみをせず、自分の全部を出し切る。勝ったと思っても攻めきる。誰よりもやばい踊りを、“1ムーブ”をしたい。

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この記事を書いた人

山田 俊輔 記者

山田 俊輔 記者

平成29年NHK入局、静岡局を経て岡山局

ブレイキンなどのアーバンスポーツやサッカーを取材

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