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特集 NaNaKa「姉の夢をかなえるために」 ブレイキン全日本選手権に挑む

アーバンスポーツ ブレイキン 2023年2月9日(木) 午後7:00

選手それぞれが異なるスタイルで、個性を表現するブレイキン。全日本選手権の女子オープンに初出場する大阪の高校1年生、ダンサーネーム「NaNaKa」で活動する勝間渚香選手もその1人だ。ある人への思いを胸に競技に打ち込んでいる。

“自分を表現できる”

「難しい技ができるようになったときの達成感がすごくて、ハマりました。自分を表現できて、やりがいがあるスポーツです」

 

関西ブロック選手権に出場したNaNaKa(2022年10月)

笑顔でブレイキンの魅力を語る高校1年生、16歳で大会に臨むNaNaKa。小学生の時に体操で培った柔軟性を持ち味に、去年(2022年)10月の関西ブロック選手権で準優勝し、トップ選手がそろう全日本選手権の出場権を初めてつかんだ。

姉への思いを胸に

NaNaKaはある人への思いを胸に競技に打ち込んでいる。7歳上の姉、柚香さんだ。実は、柚香さんもブレイキンに打ち込んでいた。

 

姉の柚香さん(右)と踊るNaNaKa(左)

しかし、6年前の交通事故で、今は車いすでの生活。ブレイキンの世界大会で優勝するという夢も諦めざるを得なくなった。当時、小学5年生だったNaNaKaは、姉の意志を継ぐことを決意した。

 

NaNaKaと姉の柚香さん

NaNaKa

最初は柚香とけんかすることもできなくなるのかとショックでした。柚香はもう動けなくて、夢はもう実現できないから代わりに動ける私がやろうと思って…。

「自分のために頑張って」

柚香さんは事故の後遺症でほとんど会話ができなくなった。当初は、NaNaKaが自分の代わりにブレイキンを始めたことに反対していたが、今は一番のファンとしてNaNaKaを応援している。そして、その思いを、タブレット端末を通して伝えている。

 

柚香さんはタブレットを通して思いを伝える

NaNaKaの姉 勝間柚香さん

自分の代わりに夢をかなえると言ってくれたのはすごくうれしかったのですが、いまは渚香自身のために頑張ってほしいと思っています。その姿を応援して、私も楽しく笑って一生懸命生きていきたいです。

自身の体とも向き合って

 

NaNaKaが頼ったのが、柚香さんも教えを受けていた、ダンサーネーム「Yosh」で活動する河村良彦さん。ダンス歴18年、国内外の大会で優勝経験が豊富なベテラン選手だ。

 

Yosh(左)の指導を受けるNaNaKa

実は、NaNaKaは背骨に病気を抱え、ヘッドスピンなどができない。医師からは「背骨があと5度傾くと運動はできなくなる」と言われていると話す。そうしたなかで、できる技を二人三脚で模索してきた。その1つが、片手で倒立して回転する技。関西ブロック選手権ではこの技を見事に決めて、準優勝を果たした。

 

片手で倒立して回転する技を見事に決めた(2022年10月)

NaNaKa

Yoshさんから『技に制限があってもオリジナルの技を強化すれば勝てる』と言ってもらったのが心強かったです。ずっと一緒にやってくれていたことだけが支えになっていました。

Yosh

柚香さんのために命がけでブレイキンに打ち込んでいると感じる。努力して成長していく自分を楽しんで、人生がどんどん幅広く、強く楽しめるものになってくれたらと思う。

姉の思いも私の思いも

NaNaKaは関西ブロック選手権のあと背骨の状態が悪化し、およそ1か月、車いすでの生活を送った。現在は大会に出場するなど回復しているが、自身の体と向き合う日々は続いている。それでもすべては応援してくれる姉のため、そして、支えてくれる人たちのため。全日本選手権で自分を表現したいと意気込んでいる。

 

NaNaKa

全日本選手権の舞台に立てることがうれしいですが、出場しただけにならないように全力で楽しんで自分が納得する踊りをしたいです。体を大切にして、柚香の思いも私の思いも私に関わってくださっている人たちの思いも全部背負って頑張りたいです。

 

この記事を書いた人

並松 康弘 記者

並松 康弘 記者

平成26年NHK入局。新潟局-仙台局(プロ野球・楽天担当)-大阪局

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