特集 AYANE 初代王者は「勝つためにスタイルを貫く」ブレイキン全日本選手権

ブレイキンの日本一を決める全日本選手権。ことし、女子オープンで王座奪還を目指すのが、初代チャンピオンのAYANE(25)です。強力なパワームーブを武器に、女子ブレイキンをけん引してきたAYANEですが、前回大会は4位と表彰台を逃し、今大会での巻き返しを図っています。インタビューは番組でも放送します。
「自分らしく戦おう」ということしか考えていない
Q) よろしくお願いします。まもなく全日本選手権ですが、調子はどうですか?
AYANE
(去年)12月に1つ大きな大会があって、それに出てから今までは特に大会やイベントには出演せず、この1か月ずっと練習をメインにした生活をしていたんですけど、そのおかげで、動き続けるっていう体力と、2022年ずっと課題だったところをちょっと強化する練習だったり、自分の踊りを見直す期間になったので、同じ技だとしてもクオリティーをあげたり、今までやってなかった新しいものができたりしています。
Q) 全日本選手権に出場するためのポイントランキングでは今シーズン1位。どういう大会にしたいですか。
AYANE
全日本選手権だからこうしようとか、初代チャンピオン取ったとかは何も考えてなくて。結局は、もう自分がやっている今のスタイルを、最大限にそこで発揮できるかっていうところだと思うので。そこで自分の良さと、あと課題をどれだけそこまでに底上げするかっていうことを考えて練習している感じです。ポイントランキング1位で通過できたのは、とにかく出る大会にちゃんとフォーカスを当てて挑んだ結果なので、自信にはつながっています。でも、現時点では自分は1位通過だけど、いま全然下の今ランクがついている人たちも、別に自分と大差がある子たちだとは思ってなくて結局は全員強い。でも、その人たちとどうって考えると自分がブレたりとか、自分に集中できなくて、結局踊らされちゃうので。もう自分らしく戦おうっていうことしか考えてないって感じです。
Q) AYANEさんは全日本選手権の初代チャンピオン。ですが、ここ2年は優勝を逃していて、去年は4位と表彰台も逃しました。
去年の全日本選手権予選の演技 AYANEは4位に終わった(2022年1月)
AYANE
めちゃくちゃ悔しいですよ。準決勝でも負けて、3位決定戦も負けて。4位っていう順位って、本当に2回負けてつく順位なんで、私しかいないんですよ。それ以上に悔しいものはない。去年の全日本は本当に悔しくて、マジで次の日、ちょっと午前中寝込みました。結果でそうなったのは、去年の全日本が初めてかな。2022年全体通してそういうのが多くて、4位も何個かあるし、3位決定戦っていうものが存在しないトーナメントでも、トップ4で負けるとかもあった。ちょっとそろそろ挽回したいなっていうタイミングでもありますね、自分の中で。
BGIRLの“男の人に負けない格好よさ”
Q) そもそもAYANEさんがブレイキンを始めたきっかけは?
AYANE
元々ほかのヒップホップだったりロックダンスだったりをレッスンに通って先生に習っていたんですけど、同時進行でトランポリン競技をやっていて、あるときそこにBBOYの方がアクロバットの練習に来て、『私もダンスやっているんです』みたいな形で、ダンサーとしてつながったんです。
そのつながった人が、ブレイキンのバトルに出るからっていうので応援に行った時に、もう15年ぐらい前の話なんですけど、当時はBGIRLって全国から集めてもめちゃめちゃ少なくて、ブレイキンってもともと男の人がやるジャンルみたいなイメージが自分の中にあったんですけど、でもそんな中でBGIRLの1vs1っていうカテゴリーを見た時に、男の人に負けない格好よさっていうのが、すごい私にとって惹かれる部分がありました。もともと性格っていうか好きなものが、かわいいものより格好いいものとかのほうが自分的には惹かれるタイプだったので、戦っているBGIRLの方々を見たときに、自分もこれでやりたい、めっちゃ格好いいってなりました。
Q) 弟は男子ブレイキンの絶対王者のShigekix。ダンサー人生においてどういう存在ですか?
AYANE
弟の存在が一番近くにいるっていうのが、すごく恵まれた環境やなと思っています。性格は全然違うし、もちろん踊り方も違うんですけど、でもやっぱり自分が『こういう人強いよな』とか、ちょっと憧れじゃないですけど、『ここまで自分をこうできたらもっと強くなるんやろうな』って思う像が彼だったりするんですね。『そこまでやってんねや、そこまで思ってんのや、そこまでこだわってるんや、そこまでそれに対して感じてるんや』みたいなことを感じることが多くて。逆に自分に置き換えた時に、そこまでやったって自信持って言えるかな、自分?って。比べるわけじゃなくて、置き換えた時に、じゃあ自分もっとできるなとか、まだまだここは甘えたらあかんところなんやろうなとか、すごく気づける。
姉のAYANEと弟のShigekix
向こうも姉っていうのもあるので、変な気をつかわずにちゃんと伝えてくれる。「自分のそういうとこ駄目やで」とか、「自分のそういうところ、もうちょっとこうできたら、もう1個先いけるんちゃう?」とか。あ、これじゃ駄目だなって気付かせてくれる存在、もっとやらなきゃいけないなとか、もっとできるなって思わせてくれる存在なので、すごくありがたいなって思います。
自分の強みはダイナミックさと力強さ
Q) どんなときが楽しさを感じる時なんですか?
AYANE
パワームーブ、ヘッドスピン、ウインドミル、そういう技がいっぱいあるんですけど、何回も何回も、何日も何日も、なんなら何カ月、何年って練習してやっとできるものとかも中にはあって。それができたときの達成感が、やっぱり自分の中ですごくうれしい。
ずっと踊り続けてきて、こういう人になりたいな、こういうダンスをしたいなっていうのをやり続けることによって、どんどん自分というものが確立されてきているということを、評価なのか、結果なのか、自分で自分のダンスを見た時なのか、それを感じた時に、もっと格好よくなりたいなとかすごいことしたいなという意欲が出て、すごくブレイキンって楽しいなって感じます。
Q) 逆に苦しいときとか、やめたくなることはなかったですか?
AYANE
もう何回もありますね。それはもちろんやっぱり、スランプじゃないですけど、最初の方ってやっぱり何ができてもすごいって言われて。特に、女子でパワームーブをしてすごいね、とか、その年ですごいね、みたいな感じで、すごい単純なところで褒められて。
でもどんどん経験を重ねるというか、ブレイキン人口も多くなってレベルも高くなってきたいま、ただやるだけじゃ別に光らない。オリジナリティーを求められるっていうところで、アイディアが浮かばなかったり、やりたくてもフィジカルがついてこなかったりとか。こんなにもやってるのに何で評価してくれへんのみたいなんとか、そういう時期もあったりとかして、そういう時はやっぱりやめようかなとか。練習に行っても全然動けなかったり、大会出てもうパッとしない踊りをして帰ってしまったりみたいな、そういう時期はありましたね。
Q) そうした中でも貫いてきたのが、最大の武器のパワームーブ。自分ではどう捉えてますか?
AYANE
パワームーブというより...パワームーブもその一部ではあるんですけど、ダイナミックさっていうか力強さみたいなところが特長だと思っています。自分の中でブレイキンを通して表現したいことの中の1つに、性別ジェンダーの壁を越えたいっていうのがあって。どうしてもこれは本当にフィジカル的なところで、男の人よりも女の人って筋力つくのも、やっぱり男の人の3倍ぐらいやらないと同じぐらいの筋力がつかなかったり、それこそ脂肪つきやすかったりとか。でもそれで諦めるってすごくもったいないっていうか、それを理由にやらないのは悔しくて...。これがAYANEよねって、力強い動きとかをやるBGIRLとしてとらえられたいです。すごいパワームーブができるBGIRLっていうイメージじゃなくて、それも全部含めてAYANEだよねっていう見られ方をしたい。
Q)それをバトルで勝つためにも突き詰めていく。
AYANE
結局突き詰めている人、自分がこれをやりたいですっていうスタイルを本当にやりきっている人、こだわり続けている人が強いし、やっぱり実際表彰台にあがってたり、タイトルを取っている人だなって思います。自分の強みはダイナミックさと力強さで、フリーズなど技の完成度の高さは自分の武器。それを点数がつく大会...こういうオリンピック関係の大会で、審査員も含めて見ている人をどんだけ説得させられるかですね。
パリにつながる全日本選手権
Q) 2024年にはパリオリンピックでブレイキンが競技となりました。AYANEさんにとってはどういう位置づけですか?
AYANE
オリンピック競技になった時は、おお、ついにというか、ダンスってやっぱりアートっていう認識でずっといたので、初めてスポーツっていう面ができてどうなるのかなとも思いました。やっぱり大きい大会っていうか、人生を変える可能性をすごく秘めてるものやと思っていて、それはやっぱり自分は出たいなって思いました。今までどれだけ『すごい国際的な大会ですよ』『世界一決まる大会ですよ』っていうものがあったとしても、どこかダンス界だけで盛り上がってるようなものだったのが、オリンピック競技となったことによって、ブレイキンっていうものをそもそも知らない人たちが知ってくれるものになったんです。ブレイキンってこんなに面白いんだって自分の踊りで思わせたいし、日本代表として日本って強いんだって自分の存在で思わせたい。何かムーブメントを起こせるんじゃないか、そういう可能性を感じたので、自分はそこに立ちたいなってすごく強い思いがあります。
Q)全日本選手権で上位に入れば、日本代表としてパリ五輪選考に関わる大会に参加する権利が得られます。最後に、改めて全日本選手権の意気込みをお願いします。
AYANE
今回に関してはパリオリンピックに直接関わってくる大会。2023年の世界選手権に出るためには、今回の全日本選手権の結果を踏まえてっていうところになってくるので、予選で敗退したり、去年と同じような4位とかの順位がついちゃうと厳しいので、もちろん、今回はやっぱりちゃんと結果を残したい。でも、じゃあどうするのって言ったら、もう自分が練習したものを100%以上出すしかなくて、それができればおのずと結果もついてくるんじゃないかなと思っています。全日本選手権のレベルまでになると本当に見ていて、こんな踊り方する人もいるんやとか、この人好きやなとか、正解がない世界だからこそ見られる面白さがあると思うので、楽しみにしてもらいたいし、その中で「やっぱあいつヤバかったな」っていうのが自分であるように、その日を迎えられればと思ってます。