特集 ISSIN「決勝でShigekixくんを倒したい」ブレイキン全日本選手権

去年、世界最高峰のダンスバトル大会でベスト4に輝いた、ISSIN(17)。いま最も勢いのある選手の1人です。ブレイキン全日本選手権を前にインタビュー取材に応じてくれました。全日本選手権とパリ五輪への意気込み、そして、王者Shigekixへの挑戦について聞きました。インタビューは番組でも放送します。
「好きなのはバトル。“エグい”技で沸かせたい」
Q)よろしくお願いします。さっそくですが、ブレイキンで一番好きなところを教えてください。
ISSIN
バトルが一番大好きですね。きついなとかは何回も思ったことあるんですけど、ダンスバトルがめちゃくちゃ大好きで、勝っても負けても、次のバトルに早く出たいという気持ちがずっとあったので、辞めたいとは思ったことないですね。バトルに勝てない時期とかがずっとあったので、勝てないのはきついなとは思っていたんですけど、絶対いつか勝てると信じてずっと練習していたんで。それでちょっとずつ勝てるようになっていって、もっとブレイクダンスが、バトルが好きになって。なので、日に日に好きになっています。
Q)ISSIN選手にとって、バトルの醍醐味は?
ISSIN
相手とダンスで対話するっていうそういう部分もすごく好きなんですけど、自分の中で一番好きなのが、例えばそこで初出しの新技や新しい動きというのを披露した時に、周りの反応が立ち上がるくらい沸いたりとか。音ハメがきれいに決まって沸いたりとか。そういった見ている人の反応というのが、大きければ大きいほど気持ちよくて。ブレイクダンスしてる人じゃないと味わえない気持ちよさだと思います。それがバトルに出たい、戦いたいっていう気持ちになるし、もっと“エグい”技を出してみんなを沸かせたいっていう気持ちはすごくありますね。ゴールはないですね、これをしたら絶対に勝てるというのがないので。これをしたら勝てるというのがない分、終わりがないからどんどん自分で突き進んで新しいものを作っていくっていうのが、すごい自分は好きです。
BC One日本大会決勝 優勝したISSINの演技(2022年9月)
Q)バトルするうえで心がけていることは?
ISSIN
うーん、心がけていること…。最近は『勝っても攻める』っていうのが自分の中で常に思っていますね。勝つっていう気持ちはありますけど、この会場にいるダンサーの中で誰よりもぶちかまして、誰よりもいいダンスをして、皆の一番記憶に残るダンスをしてやろうっていう気持ちなので、だから別に失敗してもみんなの記憶に残ればなんでもいいと思っているので。「絶対勝つ」じゃなくて「誰よりもいい踊りをする」っていう考え方にしてから、すごいバトルを楽しめるようになりました。それがちゃんと表現というか、体現できた時が、結果を出せていることが多いですね。
きっかけは「姉のジャズダンス」
Q)17歳にしてダンス歴9年。そもそもどうしてブレイキンを始めたのですか?
ISSIN
元々サッカーをしていたんですけど、最初からいろいろなジャンルの音楽が好きで、僕の姉が当時やっていたジャズダンスを興味本位で体験しに行ったときに、『他のダンスもしてみたい』というのがあって、その時にお父さんがブレイクダンス教室を見つけてくれて。
テレビではよくブレイクダンスって見たことあったんですけど、実際こう生で見て、人が逆さになってクルクル回っているっていう、すごいだけじゃなく、めちゃくちゃかっこよくて。人間業じゃない、というのが衝撃だった。興味津々で『やりたい!』っていうのが先にあって、やってみたら難しかったですけど楽しかった。そこからめちゃくちゃのめり込みましたね。
Q)最初から楽しめたのですか?
ISSIN
そうですね。できなかったですけど、アクロバティックなことっていうのが昔から好きでやってみたいなっていうのがずっとあって。やってみたときに、どうしても習得したいというのが強かったです、どんな技でも。それがあったから楽しめたっていうのはあるかもしれないですね。あとは、昔からずっと目立ちたがり屋だったと思います。なので、バトルしている時も、「俺を見ろ」っていう気持ちでずっと踊っています。
「爆発力=誰もしない危ない動き」
Q)自分のダンススタイルの強み・武器はどう捉えていますか?
ISSIN
自分は「爆発力」が武器だと思っています。今の年にしかできない動きっていうのを常に考えていて、ちょっと危ない動きだったり、ただ危ない動きじゃなくて、「誰もしない危ない動き」っていう、誰よりも“エグい”動きを作りたいというのがあって、そういう部分で「爆発力」のある動きが自分の中であって。そこが今の自分には強みかなって思います。
Q)新しい動きや技はどういうタイミングで考えるんですか?
ISSIN
ダンスの練習中にできる動きとかもあるんですけど、自分の中での強い武器だと思っている動きは私生活の最中に思い浮かぶことが多くて。学校で授業を受けている最中にパッと思い浮かんでノートに書いたりとか、寝る前とかにいきなり思いついたりとか。体調を崩している時に動けないからずっと考えていたらそれで思いついたりとか。そういったところで結構生まれることが多くて。他の人がどういう風に作っているかはわからないですけど、自分は私生活で思いついた技を練習に持って行って、練習でそれを実際できるかだったり、できたらそれをもっとよく見せる、というのを常にやっています。ちょっと癖になっていて。常に気づいたら頭の中でイメージして、新しい動きを考えているというのが多いので、たぶん楽しいからやっているんだと思いますね。
オリジナルを常に追求している人たちがやっぱり勝ち上がっていっているので、自分はまだまだだと思っているので、どんどん誰もやったことのない動きを作っていきたいですね。
Q)けがのリスクは怖くないのですか?
ISSIN
めちゃくちゃ怖いですね。結構何回もけがしていて。ストレッチとか整骨院に行ったり、そういうとこは欠かさずしていますね。
Q)ここをもう少し伸ばしていきたい、というところは?
ISSIN
今まで常に「爆発力」のある動きばかりやっていたので、細かい動きの部分をおろそかにしていたので、それこそ世界大会とかに行って、爆発力のある動きでは勝てるけど、ある程度のところまでしか行けなくて。自分にいま必要なのは、爆発力のある動きも必要なんですけど、その動きの間にある小さな細かい動き。まんべんなくワンムーブを、すごく内容のあるワンムーブにしたいので、そういった動きの数をどんどん増やしています。
17歳にして子どもたちを指導
Q)選手のかたわら、子どもたちにダンスレッスンを教えていますが、どういう経緯で?
ISSIN
最初は「やってみる?」というのから始まってやらせてもらっていたんですけど、教えている子たちが成長して、自分が先週教えたことが今週できるようになったりとかがすごく嬉しくて。みんなどんどんレベルが上がってきて、成長が止まらなくて、それを見て自分も刺激をもらってどんどんもっとやっていこう、追いつけないくらい自分もやってやろうと思うようになりました。
Q)子どもたちに伝えたいことは?
ISSIN
バトルに勝てる嬉しさだったり、技ができたときの嬉しさだったり。バトルでいろんな人が「あれやばかったね」みたいなそういう反応をもらうというのがすごく面白くてやってるので、そういう部分を噛みしめてもらえるように、何かできたときはすごく褒めたりとか、バトルの楽しさっていうのを僕はちゃんと伝えていきたいですね。
「全日本の決勝でShigekixくんを倒したい」
Q)来年のパリオリンピックについて、いまどう考えていますか?
ISSIN
オリンピック種目に決まった時は本当にびっくりして。「ブレイキンもオリンピック種目になるんだ」っていう驚きもあった分、自分が新たに目指せる違う大会が増えたっていうところにすごくワクワクしましたね。今の17歳という年齢で、ブレイキンがパリオリンピックになって目指さないわけないでしょって自分の中で思って。自分の獲りたいタイトルというのはオリンピックに限らず、いろいろあるんですけど、その中の一つで出るからには獲りたいという気持ちはありますね。ブレイキンというものを、僕が出て僕が広めたいですね。
Q)そこへ向けた試金石となる2月の全日本選手権。どう臨みますか?
ISSIN
オリンピックというのはタイムリミットがある大会、4年に一度という。自分の中でちょっと他のバトルというのは違う緊張感があって。そこにつながる全日本選手権、一回戦目からこの人だったら勝てそうだなって人がいなくて、みんな当たったら負けるかもしれないっていうくらい強い人たちばっかりなので。そういう部分では心配もあるんですけど、何がなんでも表彰台には上がりたいですね。僕の中では『決勝戦には絶対上がる』って、決勝戦までのネタをもう作っているんですけど、決勝に上がれたら自分が一番したいダンスをしようと思っています。
もちろん当日は何が起こるかわからなくて、もしかしたら一回戦で負けてしまうかもしれないし。だとしても、もっとこうしておけばよかったなって思ったり、後悔したくないですし、全日本まであともう少しですけど自分のできる最大限のことを全部して、本番は結果がどうであれ自分の悔いのないように全て出し切って、自分が一番良かったと思えるダンスをしたいですね。
Q)全日本選手権でバトルしてみたいBBOYは?
ISSIN
ほぼみんな戦ったことあって、勝ったり負けたりしたことがあるんですけど、常にずっと勝ちたいと思っているのはシゲキくん、Shigekixくん。常に勝ちたいと思っています。シゲキくん側がどう思ってるかはわからないですけど、僕の中では常にライバル、倒したい相手と思って意識しています。
去年の全日本選手権で優勝したShigekix(2022年1月)
シゲキくんは、鬼の体力と、完璧なバランスの研ぎ澄まされたワンムーブがめちゃくちゃ強いなと思います。失敗がないんで。失敗がなく完璧な分、何をしてもそれを返してくるんで、そこが僕の中ではシゲキくんが一番強くて、戦うときには常に意識しています。
Q)これまでのShigekix選手とのバトルは?
ISSIN
ソロで当たったのが2回でどっちも負けちゃっていて、早く勝ちたいですね。これを言うとすごいバチバチしている感じが出るかもしれないですけど、あともう一歩で自分は…いけるなっていうのもあれですけど、あんま遠くはないかなっていう。これめっちゃ言うの恥ずかしいな。
負けちゃって、そこでやっぱシゲキくん強いなって思ったんですけど、自分のシゲキくんにはない強さもわかったし、自分がここを磨いたら勝てるだろうっていう部分も形になってわかってきたので、これが正解かはわからないですけど、自分がシゲキくんに勝つためにどういったことをどんどん磨いていけばいいかというのはすごくわかったので、それをどんどん磨いていって「絶対勝つ」って思ってますね。(全日本の)決勝戦で当たるのが僕の中では一番いい形なんですけど。いつ当たるかわからないし全力でぶっ倒しに行こうと思っています。
NHKは「第4回全日本ブレイキン選手権 男女準決勝・決勝 」を生中継。放送予定など詳細は特設サイトでご確認ください。