ストーリーゴルフ

"しぶこ"語ります! 渋野日向子の2019年 前編

2020-01-07 午後 05:24

まさに、令和元年のスポーツ界の顔。女子ゴルフの渋野日向子選手がサンデースポーツ2020に生出演しました!ツアー本格参戦1年目で、なんと全英女子オープン制覇。さらに賞金女王争いも繰り広げ「しぶこ」フィーバーを巻き起こした21歳。激動の1年を振り返りながら、その素顔に前後編で迫ります!

前編は今年のツアーで見せた数々の名場面の秘話を語ってもらいます。そこには独特の「しぶこ節」が満載で…?

今年を表すと…「謎」

渋野選手が出演したのは12月15日。まずは、「習字」が得意という渋野選手に、2019年を表す漢字を書いていただきました。書いた一文字は…。


「謎」!

 

 

1年を表す漢字で「謎」を選ぶ人はなかなかいませんが…その理由を聞くと。

「この1年を表す言葉はこれしかないです。本当に自分の予想以上の結果が出たので、自分でもびっくりで、『謎』なんです。」


本人すら謎という2019年。じっくりと振り返っていきます。

プロテスト合格までには挫折も

まずは渋野選手のプロフィールから。渋野選手は1998年生まれの21歳。岡山県出身でゴルフを始めたのは8歳の時。小学校ではソフトボールもしていましたが、中学時代にプロゴルファーを目指すことを決意。高校卒業後の2017年に初めてのプロテストを受けます。しかし、結果は不合格。

 

「1回目のテストの時、同じ世代の勝みなみちゃんと新垣比菜ちゃんと同じ組で回ったんです。もうレベルの差を感じまして。これじゃ自分は受からないなって見せつけられました。だからその後の1年間しっかり練習して、早く同世代に追いつきたい気持ちで、2018年のプロテストは受けました。」


そして翌2018年のプロテストで合格。迎えた2019年。ツアー本格参戦1年目の渋野選手の歩みをパネルで振り返っていきます。

 

 

5月にプロ優勝を果たすと、7月に早くも2勝目。ツアー1年目の「ルーキー」ながら賞金ランキング上位に入ったことで、8月の全英女子オープンへの出場権を獲得します。「ゴルフ人生でいつか出られたら」と思っていた海外メジャー大会へ。本人も想定外の出場でした。


「この1週間で、本当に人生変わりました。」

 
そう大会を振り返る渋野選手。初日から好調をキープし、なんと3日目終了時点で14アンダーの単独トップに!そして8月5日、日本選手42年ぶりとなる優勝を目指し、最終ラウンドを迎えたのです。

激動の全英最終日

最終ラウンド、出だしは決して好調ではありませんでした。3番ホールでまさかの4パット、ダブルボギーとつまづきます。

 

「4パット、がっつきすぎましたね。このホール、バーディーパットがすごく長いパットだったんです。10メートル以上あったのに狙いにいったんですが、大オーバーしちゃいまして。今考えれば、その距離は寄せにいけばいいのに!というところで強気でいっちゃいました。」

 

前半の9ホールを折り返した時点でスコアをひとつ落とし、3位に後退。それでも、本人はあまり悲観的ではなかったと言います。

 

「まずいかな?という気持ちはありましたけど、それまでの3日間、毎日後半にかなりスコアを伸ばしていたので『まだ頑張れば優勝はあるかな?』と思っていました。10番でバーディーをとることができたら、流れは変わるだろうなって思っていて。ここも長いパットだったんですけど強気で打つ事ができて入ったので『お?何かあるのかな?』と。」

 

10番でバーディーパットを沈め、巻き返しが始まる!

 

そのメンタルがまさに「渋野選手らしい」ところなのかもしれません。このバーディーから勢いに乗っていきます。12番ホールは池越えのミドルホール。多くの選手が池を避けて第1打は池の手前を狙う中、渋野選手は一発でグリーンを狙います。

 

12番で攻めの姿勢が光る

 

渋野選手のティーショット。見事な伸びで池を越え、ぎりぎりでグリーンへ。狙い通りのワンオンに成功し、このホールもバーディーを獲得します。

 

「ここは狙わなかったら後悔するなって思いました。スタート前からティーグラウンドが前の方だったら、ワンオンを狙うつもりでした。でも映像を見ると本当に紙一重なショットですね。ここでグリーンに乗った事によって、また優勝に一歩近づけたんじゃないかなと思います。」

「楽しかった」最終ホール

その後もスコアを伸ばし、首位に並んで最終18番。初出場での初優勝なるか。普通ならばプレッシャーがかかるであろう場面で中継カメラに映し出されたのは、笑顔で楽しそうに歩く渋野選手の姿でした。

「楽しかったですね。日に日にギャラリーも増えていきましたけど、プレッシャーは全く感じなかったです。異国の地だったし海外の試合も初めてで、本当に楽しむ気持ちで臨めたメジャーの大会だったので。最終日まで本当に楽しくできました。」

 

決めれば優勝のバーディーパット

 

決めれば優勝のバーディーパットは下りのライン。もしオーバーしてしまえば大きく距離が残るところです。ここも強気で打ち切りました。優勝を決め、満面の笑みでガッツポーズ!

「気持ちいいですね!今見ても悔いのない手のあげ方だなと思いますね(笑)。でも、まさか入るとは思ってなかったです。プレーオフはしたくなかったので、『入れるか、スリーパットするか』だと思って強く打ちました。入った瞬間は、もう何が起きたか分からなくて手をあげた感じでした。」

 

環境の変化に

全英女子オープン優勝で一躍「時の人」となった渋野選手。翌週からさっそく国内ツアーに出場しますが、その環境の変化は本人も感じるところでした。

 

「ギャラリーさんがすごく増えましたね。ゴルフをしている方だけじゃなく一般の方にも私の名前を知っていただいて、たくさんの人に見に来ていただけてすごいなと思いました。全英のあとは1か月ほどいい成績が出なかったんです。思うようなプレーができなくて、自分もイライラする事がたくさんあったんですけど、イライラしたところでプレーが変わる訳でもないですし、コーチと話してちょっとずつ自分も変わっていきました。」

 

全英からおよそ1か月半後には国内ツアー3勝目。順調なシーズンを過ごす中で、賞金女王争いにも注目が集まっていきます。10月から鈴木愛選手が3週連続で優勝を果たし賞金女王争いをリードする中、渋野選手も追いかけていきます

 

 

迎えた11月の大会、渋野選手は8か月ぶりとなる予選落ちを喫してしまいます。その後のメディア対応では涙を見せるほど、悔しさも味わいました。

 

「この予選落ちはすごく悔しかったです。久しぶりの予選落ちで、情けないなと思いました。賞金女王争いをしていて残り3試合という状況での予選落ちというのは本当にありえない事。一番やってはならない事をしてしまったのは、自分の弱さだなって思いました。」


悔しさに涙したあと、渋野選手がしたのは「原点に返ること」でした。

 

「予選落ちしたあとは、次の日の日曜日が1日空いたのでコーチのところに練習に行きました。ずっと練習してきたジュニアの子たちと一緒に練習して、初心に帰れましたね。応援してくれる方から温かいメッセージをもらえて、切りかえをする事ができました。」

 

その言葉通り、予選落ちの悔しさを引きずらなかった渋野選手は翌週にツアー4勝目。最終戦まで賞金女王を争い、結果的には賞金ランキング2位で大活躍のシーズンを終えました。

データで見る「しぶこ」の強さ

シーズンを数字で振り返ると、渋野選手の今シーズンの大活躍がさらに際立ちます。シーズン当初、本人が掲げていた目標は「賞金シード権獲得」でしたが、結果は賞金ランク2位。獲得賞金額は国内と海外合わせて、およそ2億2500万円!昨シーズンの獲得額は下部ツアーでの710万円だったので、なんと31倍です。世界ランキングも、ことし1月時点で561位だったのが、12位まで駆け上がりました。
この結果には渋野選手も。

 

 

「『びっくりぽん』です(笑)」


ではなぜ渋野選手は強かったのか。プレーデータで紐解いてみると、平均パット数が2位。平均バーディー数が1位を記録しています。その理由を渋野選手はこう分析します。

 

「攻めのゴルフができていたのかなと思います。毎回どこにピンが切ってあろうが、とにかくピンを狙っていく。左右が狭かろうが関係なく狙っていくことによって、やっぱりピンに近いところにボールがついてバーディーが取りやすい。だからこういう結果になったのかなと思います。」

 

 

その攻めのゴルフを生んでいるのは、地道な練習です。練習風景を撮影した映像では、パターの軌道にブレをなくし正確性を出すため2本のピンの間でパターを動かす練習を何度も何度も繰り返しています。本人曰く、「パターをまっすぐ引いて、まっすぐ出すという練習」。自分が納得いくまで、日が暮れても練習を続けることもしばしばなのだと言います。

さらに平均ストローク数を見ると、予選ラウンドより決勝ラウンドの方がスコアが良くなっています。たしかに渋野選手といえば後半に逆転する「逆境に強い」印象。ツアー3勝目を挙げた9月の大会では、最終日になんと8打差を逆転して優勝を果たしています。

「私はスロースターターなんですよね。実はプロテストの時も、初日は1オーバースタート。そこから3日間でスコアを伸ばし続けて合格することができたんですけど。やっぱり後半の方が悔いのないように戦おうっていう気が強いから、攻めることができていると思います。」

 

最後にもうひとつ、渋野選手のデータで特筆すべきは、「バウンスバック率」が高いこと。ボギー以下で終わってしまったホールの直後にバーディー以上を取る確率は、全選手で1位でした。失敗を引きずらない冷静なメンタルがこの数字を生んでいるのでは…。そう本人にぶつけてみると、帰ってきたのは意外な答えでした。

 

「いやいや、引きずります。それに怒ります。その怒りを次のホールのティーショットにぶつけるんです。心が燃えたぎって、その怒りをぶつけたショットはすごく飛ぶんですよ(笑)。」


まさに「しぶこ節」。素人が真似したら悲惨なゴルフになってしまいそうですが、それでも好スコアを出せる事が渋野選手らしさなのかもしれません。


(後編に続く)

 

しぶこが語る!2019年 後編 記事はこちら

 

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