特集 Mirei「日本一になれるように頑張りたい」 ブレイキン全日本選手権

「去年の悔しさをこの舞台で晴らしたい」
2月に行われるブレイキンの全日本選手権、ジュニア女子の部で日本一を目指す12歳のBGIRL、岸本美麗選手。けがの影響で2022年の大会は実力を出し切ることができなかった。パリオリンピックの次を目指す12歳は持ち味の大技に磨きをかけて雪辱を誓っている。
アーバンスポーツが盛んな岡山県の中学1年生で、ダンサーネーム「Mirei」として活動する岸本選手。3歳でロックダンスを始め、6歳からブレイキンに転向した。
ブレイキンについて「ダンスなのに体操みたいにいろいろな技があって、ダイナミックなところが魅力的」と語る彼女は週6日、1日3時間、練習に励んでいる。
中国・四国地方のチャンピオンを決める2021年の大会ではジュニア女子の部で優勝。しかし「日本一を取る」と強い気持ちで挑んだ2022年の全日本選手権は、大会の1か月前に練習のしすぎで左手首をはく離骨折し、手をつく練習ができずに本番を迎えた。
2022年の全日本選手権直前に左手首をはく離骨折
けがの影響で思うようなパフォーマンスができずに結果は4位。悔しさを味わった。
岸本選手の持ち味は足を振り上げた遠心力を利用し、逆立ちをした状態で回転する「エアートラックス」。体を支える筋力と研ぎ澄まされたバランス感覚が必要な大技で、岸本選手は中学生ながら女子では数少ない使い手のひとりだ。
この大技を連続して行ったり、次の技にスムーズに移れるようにしたりするために大切にしているのが、本番の試合を意識した対戦形式の練習。ブレイキンではその場で流れる音楽に合うように即興でパフォーマンスすることが求められるからだ。レッスンではパリオリンピック出場を目指すダンサーネーム「ISSIN」の菱川一心選手(岡山市出身)から直接、指導を受けている。
菱川選手は2022年に開催された世界最高峰の国際大会「BC One」の日本最終予選で優勝し、アメリカ・ニューヨークの大会にも出場した日本トップクラスの選手。岸本選手は菱川選手と顔を合わせるたびに“バトル”を申し込み、瞬間的な対応力を磨いている。
ある日の“バトル”では、菱川選手に完成度の高い「エアートラックス」を披露され「きょうも負けた。でもいつかは一心さんを倒したい」と負けず嫌いの一面をのぞかせた。それでも日本トップクラスの選手のパフォーマンスを間近で見ることが彼女の成長につながっている。
菱川選手は岸本選手の伸びしろについてこう語る。
菱川一心選手
音に反応できるのが美麗ちゃんの強み。さらに上を目指すには、筋力が必要になるし回転系の難しい技をもっとたくさんできるようにしたほうがいい。動きももっとスムーズに通せるようになれば、さらによくなる。全日本選手権には僕も出場するので同じ舞台で一緒に優勝したい。
2022年10月に行われた中国・四国大会の決勝。岸本選手は序盤から「エアートラックス」などハイレベルな技を繰り出すも細部に荒さが目立った。対戦相手は丁寧な動きで音楽に合わせ、難しい体勢で体を制止させる「フリーズ」を確実に決めるパフォーマンスでポイントを獲得。1ラウンドと2ラウンドは相手にリードを許したが、実戦形式の練習を積んできた岸本選手に焦りはなかった。
最終の3ラウンドは相手の意表を突く技や体力的に厳しい終盤にスピード感のある足技を入れるなど攻めきり、大量ポイントを稼いで逆転で優勝を決めた。
去年は果たせなかった日本一へ。ことしはここまでけがなく順調に練習を積み、優勝を狙える準備はできている。パリオリンピックの次の世代を担う12歳がリベンジの舞台に挑む。
岸本美麗選手
関東や関西など違う地方の選手はみんな点数が高くて不安を感じることもある。それでもみんなが期待してくれている。去年はけがをしていろいろな人に助けてもらったので、今回はその恩返しができるようにしたい。今まで練習してきたものをしっかりと出して、日本一になれるように頑張りたい。