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特集 若元春 兄弟同時三役“さらなる飛躍を” 大相撲初場所

相撲 2023年1月10日(火) 午後4:00

初場所で新三役の小結昇進を果たした若元春。弟の関脇・若隆景とともに、兄弟同時三役となった。みずからの持ち味「左四つ」を貫いて飛躍を遂げた令和4年。そしてことしもその挑戦は続く。

 

兄弟同時の三役は、寺尾・逆鉾、若花田・貴花田(のちの若乃花・貴乃花)に続いて、史上3組目。先例はいずれもその時代、大相撲人気をけん引した存在だ。

 

左から 寺尾 逆鉾 若花田 貴花田

若元春

名前を見たらえらいところに並んだなと。

兄弟同時三役について、率直な思いを明かした若元春。番付で先を行く弟・若隆景はおととしの名古屋場所で小結となり、去年の春場所から今場所まで6場所連続で関脇に座る。その姿を間近で見てきた兄にとって、弟の存在なしでは今の地位にたどりつくことはできなかったと言う。

 

稽古に励む若元春(左)と弟の若隆景(右)

若元春

(弟は)体も小さい中で関脇までいって、まだ先を見ているところはすごいなと思う。そういう弟がいたからこそ、ここまで上がって来られたんで。尊敬している。

こう語ったあと、はにかみながら「恥ずかしいですね」と答えた。

 

一方、弟にとっても兄はいい刺激をもらえる存在。ふだんはクールな若隆景も兄と一緒の同時三役にはうれしさを隠さなかった。

 

弟・若隆景

考えたらすごいこと。もっと自分も頑張れたらなと思う。同じ部屋に三役力士が2人となれば、いい稽古ができるんじゃないか。

弟を追いかける形で、去年の初場所で新入幕。その後わずか1年で三役の地位まで駆け上がった。かぎとなったのが得意の「左四つ」。左腕を相手の懐に差し込んで組み合う相撲だ。

 

この左四つへの自信を深めるきっかけが去年唯一負け越した名古屋場所にあった。当時自己最高位の前頭4枚目で連日上位陣との対戦が組まれた。初めての大関戦は5日目、正代との一番だった。

 

若元春(左)が立ち合いから左を差して正代を攻めた(2022年名古屋場所)

「思い切ってやっていこう」と立ち合いから左を差して右上手を取る展開に。格上の相手に理想的な攻めで白星を挙げた。

 

さらに、中日・8日目。初めての横綱・照ノ富士との一番。立ち合いで左四つの形を作って前に攻めた。横綱に攻め返されても逆に土俵際まで押し込む場面もあった。激しい攻防の末、最後敗れはしたものの、この経験がその

後の躍進につながっていると振り返る。

 

照ノ富士(左)に破れはしたが左四つの形を作って前に攻めた(2022年名古屋場所)

若元春

かなり大きな一番になったのかな。負けはしたんですけど、まわしは取って横綱相手にあれだけ取れたのはかなり自分の中でプラスになったのかなと思う。

その後、秋場所、九州場所と2場所連続ふた桁勝利を挙げて新小結へ。その躍進を支えるのが兄弟どうしの稽古だ。若元春は徹底して左四つの攻めを繰り返し技を磨く。弟・若隆景も簡単にはその形を許さない。下からの厳しい攻めで兄を退ける。それでも兄がひとたび形を作れば、弟を圧倒する相撲を見せる…。

 

 

今場所は新三役として、これまでの挑む立場から、ときには挑まれる立場にもなる。それでも若元春はチャレンジャーの気持ちを忘れない。

若元春

看板を背負っただけで中身は同じ若元春、同じ力士なので。変わらず小結として挑戦する。そういうつもりで臨みたい。三男坊(若隆景)も小結を経験してその姿を見てきているので、強い小結、負けない三役を目指して頑張りたい。

この記事を書いた人

舟木 卓也 記者

舟木 卓也 記者

平成25年NHK入局。令和2年秋からスポーツニュース部。

プロ野球(ロッテ)担当を経て、現在は大相撲や柔道など格闘技担当。

 

 

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