大相撲初場所が始まった。先場所、初優勝を果たした阿炎は得意の突き押しで攻めて白星スタート。今場所も”一番集中”の思いで土俵に上がる。(※2023年1月8日スポーツオンライン掲載)
優勝力士の意識なく土俵へ
阿炎は強烈な突き押し相撲を持ち味に先場所、3人による優勝決定戦のともえ戦を制し初優勝を果たした。地元の埼玉県越谷市ではパレードが行われるなど、”優勝力士”ならではのイベントや行事にも参加し、初場所の初日はみずからの新たな優勝額の除幕式に臨んだ。
しかしこの時、“優勝力士”という意識は阿炎にはすでになかった。
<阿炎>
『素直にうれしかったが、今場所が終わってから喜ぼうと思う。初日の取組にだけ集中していた。』
師匠のことば ”優勝は過去のこと”
気持ちを切り替えたのは初場所の番付発表も終わった12月末の稽古。師匠の元関脇・寺尾の錣山親方からのことばがきっかけだった。
<阿炎>
『「優勝は過去のこと。次の場所が大事だぞ」と。挑む気持ちを忘れずにチャレンジャーとして“一番集中”をモットーに取り組んでいきたい。』
”一番集中”は今場所も変わらない
実は「チャレンジャー」そして「一番集中」は休場明けの先場所、特に意識していたことだった。ひじと足首の手術を経て2場所ぶりとなる土俵。番付も小結から西の前頭9枚目まで下げて臨む中で日々、「1日一番に集中」と自分に言い聞かせて白星を重ね、初めての賜杯につなげた。
東の前頭3枚目まで番付を上げ、“優勝力士”として臨む今場所もみずからの原点とも言える意識は変わらない。初日を翌日に控え、報道陣から「もう一泡ふかせたいか」と問われた時の受け答えからも感じた。
<阿炎>
『そういうのは浮き足立っている気持ちだと思う。今はそういう気持ちはない。とにかく初日の一番に集中する。』
そして初日の相手は新たに小結に昇進した26歳の琴ノ若。この1年、安定した成績を収める手ごわい相手だ。みずからも関脇を経験しているが「強いからこそ番付が自分より上の位置にいる」と冷静に気持ちを引き締めていた。四つになると力を発揮する琴ノ若に対し、「組まないことを意識した」と得意の突き押しで攻めた。一気には押し込めなかったが、横から張って相手のバランスを崩して最後は突き出し。集中力を切らさなかった。
<阿炎>
『立ち合いしっかり当たって、まわしを取られないことだけ意識していた。自分の相撲を取りきることができた。いつも通りしっかり集中して行くことができた。』
白星スタートとなった阿炎。2日目の相手は若元春。またも新小結との一番が組まれた。年齢も近くプライベートでは仲がいいが、「土俵に上がるかぎりは敵」とすでに次の取組に集中している。番付を上げたことで先場所に比べて上位との取組が増える。”一番集中”を貫くことで今場所も白星を積み重ねていけるか注目したい。
この記事を書いた人
足立 隆門 記者
平成25年NHK入局。甲府局、山形局から地元の大阪局を経て、スポーツニュース部。30代半ばにして初の東京暮らし。