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特集 舞の海が語る 大相撲初場所 ことし期待の力士は

相撲 2023年1月5日(木) 午前10:25

大相撲初場所を前に、NHK大相撲解説の舞の海秀平さんと名関脇として活躍した元若の里の西岩親方が対談しました。九州場所で優勝決定戦を争った貴景勝と高安、阿炎の3人のほか、2人が注目する力士、さらに十両まで戻ってきた朝乃山や人気の炎鵬などについて語り合いました。

貴景勝は高いレベルの優勝での昇進を

――九州場所で優勝決定戦を戦った3人、貴景勝、高安、阿炎の初場所をどう見ますか。

 

《西岩親方》貴景勝には高いレベルでの優勝を期待(九州場所14日目)

西岩親方

貴景勝は決定戦までいっていますから、優勝に準ずる成績となるのでしょう。今横綱は照ノ富士1人で新しい横綱に出てきてもらいたいですから、貴景勝にはレベルの高い優勝をして昇進してもらいたいですね。高安は精神的なダメージが心配です。九州場所ではトップで来て優勝に近づいたのに千秋楽で連敗して逆転されて相当なショックだと思います。ただことしの大関候補は誰かと、いろいろ言われますが、私は高安の名前を挙げたいんです。状態は戻ってきていますので、大関返り咲きに挑戦してもらいたいですね。

 

土俵入りする高安(九州場所8日目)

舞の海

高安はここまできたら心折れることなく、ずっと優勝に挑戦していってもらいたいと思います。高安は何度も優勝を逃していますけれども、高安がいつ優勝してくれるか。待ち望んでいるファンは大勢いるので、期待に応えて常に優勝を目指して土俵に上がってほしいですね。

 

西岩親方

阿炎は上位総当たりになりますから、真価が問われる場所になると思います。去年平幕で優勝した逸ノ城も玉鷲も次の場所は苦戦しているんで、そうすんなりはいかないですね。阿炎はよほど覚悟を決めて稽古に取り組まないと。

 

優勝決定ともえ戦で貴景勝(手前)を破り阿炎が初優勝(九州場所千秋楽)

舞の海

突き押し一本の相撲ですから安定感を築き上げていくのはなかなか難しいですね。野球のピッチャーも大けがでなくてもちょっとどこかを故障すると投げられなくなる。それと同じで阿炎の相撲は肩やひじだけではなく指を痛めたりすると、突っ張りが同じようにはできなくなったりすることがあると思うんです。故障が心配ですね。

 

西岩親方

でもあの長い手足は魅力的ですよね。あの長い手で突っ張られたら相手は大変です。

横綱の孫、琴ノ若と王鵬に期待(西岩親方)
完全燃焼の相撲 平戸海が楽しみ(舞の海)

――そのほかで2人が注目する力士は。

 

西岩親方

私は新小結の琴ノ若と九州場所で10勝した王鵬です。何度も言っていますが、この横綱の遺伝子を持つ2人(琴ノ若は琴櫻の、王鵬は大鵬の孫)が上位に上がっていって、大関になり横綱になり、そして四股名を琴櫻と大鵬に変えて取組が見られることを祈っています。王鵬については、おじいさんの大鵬が得意だった左四つはいったん封印して、もっと馬力をつけて突き押しを磨き、それが完成したら左四つを少しずつ覚えていけば、大鵬に近づいていくと思うのですがね。琴ノ若も三役は通過点で、本人は階段を1歩上がっただけと思ってほしいですね。

 

西岩親方が注目する琴ノ若(左)と王鵬(右)

舞の海

私が注目するのは平戸海です。魅力ある力士です。新入幕の秋場所では負け越しましたが、運良く幕尻に残って九州場所で勝ち越しました。けれんみがなく真っ向からぶつかって完全燃焼するタイプで見ていてすがすがしいです。左の前まわしを狙う相撲ですが、九州場所はうまくもろ差しになったりして相撲が少し広がっています。平戸海がどこまで上がっていけるか期待していますね。彼が下にいるころから見ていますが、1人だけ違っていました。吹っ飛ばされても食らいついていく。今の時代にこんな力士がいるのかと思いました。相撲に青春をかけているっていう感じが伝わってくるんです。

 

土俵入りする平戸海(九州場所10日目)

舞の海

もう1人面白い存在なのは新小結の若元春ですね。まだ相撲ファンは若元春の本当の強さに気付いていないのではないかと思うんです。押し相撲の相手にも突っ張り勝って押し込んでいく相撲もあるんです。そして左四つという型があって、右上手を取ったら横綱大関でも負けないんじゃないかなというぐらいです。今は若隆景と豊昇龍あたりが次期大関と期待されているんですけれども、それをすり抜けて若元春が大関にということも十分に考えられますね。 型を持っているかいないかというのを私は重要視するんです。

 

若元春(左)は大栄翔を破り勝ち越しを決めた(九州場所13日目)

朝乃山は幕下での黒星を糧にしてほしい

――十両まで戻ってきた朝乃山はどうでしょうか

 

西岩親方

十両もすぐ通過すると思います。不祥事がありましたけれども、応援している人やファンの期待は大きいです。朝乃山の復活を待っている人はたくさんいますので、そういう人たちに応えてほしいですよね。元いた地位に戻るのをみんな待っています。

 

湘南乃海(右)を寄り切って5連勝とした朝乃山(九州場所9日目)

舞の海

十両の人からすると、優勝の目がなくなってしまうため大変迷惑(笑)。早く幕内に上がることです。でも幕下で2場所続けて1敗しているでしょう。朝乃山も勝負に絶対というものはないと痛感していると思うんですよ。これを糧に上に戻って相撲を取ってほしいですね。

 

――それと舞の海さん。人気の小兵、炎鵬は九州場所で10勝を挙げました

 

炎鵬(左)は千代丸を送り出して10勝目を挙げた(九州場所千秋楽)

舞の海

十両の下位とはいえ、よくやったと思いますね。体も厚みがありましたし、土俵の外に吹っ飛ばされる相撲が少なかったですね。それだけ徐々に地力がついていると思います。これからは若隆景を見習って、大きい相手にぶつかられても簡単には上下左右に体が動かないような強靭(きょうじん)な体幹を作ってほしいですね。本人も思っていると思うんですけれども、相撲は幕内です。早く幕内に上がってきて土俵を盛り上げてほしいですね。

 

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