特集 琴ノ若 大相撲初場所で新三役昇進 ”大関に上がり琴櫻を襲名したい”

琴ノ若は去年11月の九州場所で自己最高位となる西前頭筆頭で9勝を挙げ、初場所で新三役昇進を果たしました。親、子、孫三代での三役力士が誕生しサラブレッドのさらなる飛躍が期待されています。琴ノ若の決意を元NHKアナウンサーで大阪学院大学特任教授の藤井康生さんが聞きました。
新しいスタイルの“琴ノ若”を作っていきたい
藤井(以下、藤) 九州場所を振り返ってどんな思いですか。
琴ノ若(以下、琴) 序盤に3連敗しましたが、そこでしっかり気持ちを切り替えられました。いろいろな意味で充実して勉強にもなりました。自分が成長したことを少しずつ発揮できた場所になったと思います。
藤 自信も芽生えてきていますか。
琴 思い切って取るというか、今まではけがもしていますが、思い切ってやれるようになっていると思います。
御嶽海を肩透かしで破り5連勝とした(九州場所8日目)
藤 特にこの1年はコロナによる休場以外は全部勝ち越して、とても充実した1年だったと思いますがどうですか。
琴 休場があったのはもったいないなと思いますし、もっとやれていたと思う部分もあります。自分の中でしっかり力をつけて上を目指せる番付に定着して取れています。自信になることです。
祖父“横綱琴桜”の映像を見て研究
藤 相撲の幅がだんだん広がっているように思うのですがいかがですか。
琴 1つの型は大事だと思います。そこにこだわるのはいいことですが、その型になるための1つの技としての押しや組めなくても相撲が取れることが強みになると思いました。そこで先代(祖父の横綱琴櫻)の相撲の映像を見ています。そういうことが少しずつ自分のもう1つのスタイルとしてできてきているのかなと思います。
祖父の横綱・琴櫻の土俵上の雄姿(1971年6月撮影)
藤 押しや突っ張りを意識して磨いていこうという思いがあるのですか。
琴 四つがもともとの型でそこはしっかりと押さえています。その中で組むために押しも必要ですし、押しで決めることも必要です。四つ相撲は師匠(父の佐渡ケ嶽親方)で、押し相撲は先代というイメージがあります。私が新しいスタイルの琴ノ若を作っていきたいと思っています。
同じ世代には負けていられない
藤 去年の九州場所中に25歳になりましたがどう思いますか。
琴 どんどんいい年になってくるので、ゆっくりはしていられないと思います。けがの経験があったからこそ今があると思っています。早かったようでもあり、また長かったようでもあります。25歳でしっかりもっと上を目指してやっていければと思っています。
藤 入門して8回目の九州場所になりましたね。振り返ってどう思いますか。
琴 そういう面では早かったと感じています。しっかり優勝争いに絡んでいきたい。
藤 同じ若い世代、さらに関取よりもっと若い世代、今場所の王鵬や豊昇龍のように活躍する力士が増えてきましたがどうですか。刺激はありますか。
琴 負けていられないと思っています。負けずに上を目指していければと思っています。
「祖父は、父は」は考えなくなった
藤 もう優勝争いに加わっていける力がついていると思いますが。
琴 もちろん上を目指していくためには勝ち越しだけではだめです。常に毎場所思い切っていい相撲を取りつつ、しっかり優勝争いに絡んでいきたいです。
藤 今、師匠から特に言われていることはありますか。
琴 相撲の内容は少しずつ良くなってきているので、土俵際の詰めの部分や今持っている技を磨いていこうと言われています。
翠富士を相手に力強い取り口を見せた(九州場所13日目)
藤 入門する前から「祖父は、父は」と言われてきたと思いますがどうですか。
琴 入門当時からいろいろ言われてきたので、そこはあまり気にしないようにしています。言われるものだと思っているので、考えなくなりました。
藤 外から見ていて、勝負師としては性格が優しすぎるのではないかと思うのですが。
琴 勝負の時はしっかり気持ちを作っているので、相撲はメリハリがあると思って見て頂きたいと思います。上を目指すのは当然、大関を狙っていきたいです。
大関に上がって琴櫻を襲名したい
藤 いよいよ三役の小結昇進ですがどう思っていますか。
琴 師匠を超えるための目標の1つだったので、その目標に向かって1歩踏み出したのは大きいと思います。
藤 琴櫻襲名は三役昇進ではまだないですか。
琴 大関になったらと先代と約束したので、大関に上がって琴櫻を襲名したいと思います。
新番付表のみずからのしこ名を指さす琴ノ若 師匠の佐渡ケ嶽親方とともに
藤 琴櫻という名前を楽しみにしていきたいと思います。先代の出身地・鳥取県や師匠の山形県を含めて全国から応援が届いていると思いますがどのように感じていますか。
琴 地元ではありませんが、応援して下さるのはとてもありがたいことです。幕内に上がった時にコロナ禍になってしまい、無観客開催だったりお客さんが少なかったりしたのが日常でした。その中で声をかけて頂き、覚えて頂けるのは本当にありがたいです。
ことしは大関を狙っていきたい
藤 令和4年は大いに活躍できた年だったと思いますが、令和5年への思いはどうですか。
琴 これまでできていたいいところは続けていって、そこから1つ2つ進化してもっと上を目指せるようにやっていきたいと思っています。
藤 令和5年中には大関という宣言をしてもいいのではないですか。
琴 この世界に入ったからには上を目指すのは当然です。しっかり大関を狙っていきたいと思います。
初場所に向けて稽古に熱が入る(2022年12月)
相撲専門雑誌「NHKG-Media大相撲中継」から