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相次ぐ大会中止 どうする?学生スポーツ

2020-06-01 午後 06:26

2020年、オリンピック・パラリンピックイヤーだったはずが、一転してスポーツ界にとって試練の年になっています。新型コロナウイルス感染拡大によりほぼすべてのスポーツで大会やリーグ戦の延期や中止に追い込まれました。

それは学生スポーツも同じ。今回サンデースポーツ2020では番組ホームページで学生スポーツに関わる人たちからの声を募集。中学生から大学生までの選手、指導者、保護者など幅広い層からおよそ300の声が寄せられました。学生スポーツの現状、そして未来はどうなるのか。元横浜高校野球部監督の渡辺元智さん、スポーツジャーナリストの生島淳さんと考えます。

学生スポーツ 始まって以来の危機

4月末、高校スポーツ最大の祭典、全国高校総体「インターハイ」の中止が決定しました。昭和38年に始まって以来初の出来事です。他にも全国中学校体育大会、全日本大学野球選手権、センバツ高校野球、そして夏の全国高校野球大会も相次いで中止が決まりました。前代未聞ともいえるこの事態。50年に渡り高校野球を指導してきた渡辺さんはまず、指導者が選手にどう接するのかが問われていると語りました。

 

 

渡辺元智さん

「誰よりも選手と向き合ってきたのは指導者です。指導者は親以上に常に選手と付き合ってきたと言えると思います。その指導者の選手に対する寄り添い方が問われているのではないでしょうか。大変ご苦労があると思いますけども、ここは指導者として真価の見せどころだと思います。」


スポーツジャーナリストの生島淳さんは、ご自身も息子が高校陸上部に所属する「父親」という立場。番組に寄せられた300のアンケートすべてに目を通して感じたことを語りました。

 

 

生島淳さん

「アンケートにあった“虚無感”という言葉が一番胸に残っています。これを見たときのやるせなさ。僕だけでなく全国の中3・高3・大学4年の選手、そしてその親御さんも感じてらっしゃるんだろうなと思いましたね。どうしてもメディアではインターハイなどトップレベルに目を奪われがちですけれども、好きな競技に対して時間を投下してきた情熱、エネルギーというものは何ら遜色のあるものではない。これは運動部だけではなくて、例えば吹奏楽や競技かるたなどの発表の場も同じです。何かできる事はないのか、探していく事が大人の務めなのかなとアンケートを見ながら思いました。」

学生たちの本音は…

番組に寄せられた300通のアンケート。当事者である学生たちからの投稿を見ていくと、悲痛な思い、困惑する実情など様々な声が寄せられました。

 

 

(高校生・男性)「これを糧にして」といった言葉を目にすることがある。確かに人生はこれからだけど、僕たち高校3年生に次はない。簡単に先があるとか糧になるとか言わないでほしい。

 

(中学生・男性)最後の試合にかける思いはすごく強かった。高校や大学が注目されがちですが、中学生も悔しいです。

 

(高校生・女性)ニュースで取材される強豪校の選手にとってはインターハイは通過点だが、高校で競技をやめる人が大勢いる。集大成となる大会がなくなったことは残念以外の言葉は浮かばない。

 

(大学生・男性)大会がなくなり自分のモチベーションが保てない。練習をやる意味があるのか、と競技への熱意が消えかけていることが悲しい。

 

(大学生・男性)亡くなった力士のように若い人でも亡くなる。命がなくなったら本末転倒。

見守る保護者たちの声

 

選手だけではなく、見守る大人たちからも切実な声がたくさん届きました。

 

(指導者)生徒たちの頑張りを披露する舞台がなくなってしまった事が一番残念なところ。仕方ないでは片づけられない。正直なんて言葉をかけていいか分からない。

 

(指導者)「若いから頑張った事は無駄にならない」と一流の方々はいいますが、学生のほとんどが一流ではない。子どもの思いはこれからじゃなく「今」なんです。きれい事だけ言って終わることのないようにしてほしい。

 

(親)最終学年は将来の進路を決める大きな舞台でもあり、集大成。今まで必死に頑張る娘を見ていたので悔しい。どんな形で大学に進学できるのか、まったく不明な状態で親子ともども不安。

 

(親)子どもが甲子園を夢見て、東京から青森に入寮した。夢をかなえてやりたい。私たち両親も命懸けで息子の夢と共に歩いてきました。

学生の目標のために 新たな取り組み

目標を失った子どもたちをどう救っていくのか。大会中止が相次ぐなか、新たな取り組みも動き始めています。

 

 

水泳の強豪校・日大豊山高校は先月末、水泳部のホームページに代わりの大会を実施したいという意向を掲載しました。検討しているのは日大豊山高校が主体となった大会。開催時期は夏。目標はシーズンの最後のベストタイムで締めくくる事。ほかの学校も含めた対抗戦にすることも検討しています。監督の竹村知洋さんは、その意図をこう話します。

 

 

竹村監督

「3年生は目標が見いだせないというところがあり、やっぱり大人である我々が目標を作ってあげる必要があると感じています。(選手たちは)健康維持のために運動しているわけではない。あくまでも大会で記録や順位を目指して毎日練習してきたので。目標がなければ、厳しい練習に耐えるのは難しいと思うんです。」

 

現在、日大豊山水泳部は部活動が休止中。オンラインでの筋力トレーニングに加えて、大事にしているのがオンラインミーティングです。選手たちが互いの思いをぶつけ、励まし、絆を深めています。

 

 

竹村監督

「大会がなくなってしまうことは、喪失感と空虚感、高校時代の価値がなくなる…、大げさかもしれないですけどもそれぐらいの事だと思うんです。選手たちには今すぐ引退ではなく、夏まではしっかり選手として頑張ってもらいたいと話をしています。」

 

こうした選手たちの新たな目標となる「救済策」については、アンケートにも寄せられています。

 

(大学生)コロナの状況を見てからではなく、(大会の)10月開催を今発表してほしい。発表があればあわてて練習を再開することもない。

 

(高校生)無観客でいいからリーグ戦を実行したい。勝負の世界で勝負がつかないまま引退は寂しい。

 

(高校生)コロナが落ち着いてからでいいので、無観客とかではなくしっかり観客や応援がいる中で、記念試合のような県大会ぐらいは行ってほしい。

 

高校野球の強豪・横浜高校で長年球児たちを指導してきた渡辺さんは、活躍の場を失った選手たちに対して、どのような目標を持たせるか、そしてどのような「終わり方」を迎えさせるか、自身の経験から語ります。

 

渡辺さん

「体力の育成はインストラクターやアスリートの動画配信が勉強になると思いますし、メンタルの部分、考える事は家で鍛えられると思います。ノートに自分が監督になったつもりで作戦を立てるとか。それが試合ができたときに生かされます。また横浜高校野球部では試合に出られない、ユニフォームをもらえない選手たちの「お別れ試合」を行ってきました。県大会と変わらないくらいの盛り上がりで、親や応援する人もみんな集まって最後に涙を流して卒業していくわけです。そういう終わりの場を作る事も考えたらいいのかなと思いますね。」

今、大人の務めとは

今回300通のアンケートの中で、生島さんが一番気になった声がありました。中学校の柔道の指導者からの声です。

 

(指導者)競技団体は最後まで開催する模索を続けたか。やっていないなら部員に開催へ努力したとは伝えられない。判断は非常事態宣言の動向を見ながらでもよいのではないか。

 

 

生島さん

「最後まで開催を模索したか。この言葉に非常に僕は感銘を受けました。今現在、開催できない理由というのは誰でもあげられるし、たくさんあると思います。その一方で「今」しかない学生たちに対して、開催できる理由に関しても同じぐらいの気持ちを持って探すべきではないか。これが大人の務めではないかなと思っています。全国の大会ができないんであれば、県単位ブロック単位ではできないのか。できるアイデアを模索していく。それはひょっとしたら無駄になるかもしれません。でも、無駄をいとわない事が大事ではないでしょうか。」

 

学生たちに「大人の事情」で大会を中止したと思ってほしくない、大人・社会の責任だと語った生島さん。解決策を見つけることはなかなか難しい問題ですが、世界が同じ危機に直面している中で、大人と学生たちがどうやってともに乗り越えていくか。社会全体に問われている問題です。

 

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