ストーリー相撲

「幕尻」德勝龍 初優勝に笑いと涙!

2020-02-03 午後 02:28

「自分なんかが優勝して、いいんでしょうか。」

大相撲初場所は大波乱の結末!2横綱が休場し混戦の優勝争いを制したのは、「幕尻」と呼ばれる番付の一番下、西前頭17枚目の德勝龍でした。20年ぶりの幕尻優勝を果たした直後にサンデースポーツ2020に生出演し、笑いと涙があふれた優勝インタビューの裏にあった思いを語りました。

番付の一番下から賜杯へ

初場所は序盤から波乱の展開。白鵬と鶴竜の両横綱が序盤戦で揃って連敗し、座布団が連日乱れ飛ぶ国技館。2横綱はその後休場、横綱不在の場所となりました。そんな中で星を伸ばしたのが、平幕の正代。関脇・朝乃山と大関・貴景勝を破り勢いに乗ります。そして前頭17枚目の德勝龍も三日目から負けなしの快進撃。平幕の2人が1敗で優勝争いのトップを走る異例の展開になります。そして十四日目。12勝1敗同士の直接対決。

 

 

德勝龍は勢いのある立ち合いから左四つに。正代が前に出てきたところで、今場所何度も見せた「突き落とし」で勝利し、優勝争い単独先頭に立ちます。

そして千秋楽、勝てば初優勝となる德勝龍は、大関・貴景勝との結びの一番。德勝龍にとっては今場所初の役力士との一番。平幕力士が千秋楽の結びの土俵に上がることも異例のことでした。

 

 

立ち合い、貴景勝得意の突き押しを受け止めた德勝龍は、すかさず左四つ、自分の型に持ち込みます。貴景勝も大関の意地を見せ懸命に動きますが、德勝龍の右上手はがっちり離れず。最後は寄り切りで大関を倒し、見事初優勝。土俵上には、涙ぐみながら喜びをかみしめる德勝龍の姿がありました。
そして行われた優勝インタビュー。「周りからも、いろいろと優勝について言われていたと思うんですが…。」と問われた德勝龍。「いや、(優勝は)意識する事なく…」と、お手本通りの答えかと思いきや…。

 

 

「うそです、めっちゃ意識していました。バリバリ、インタビューの練習していました。」

この予想外の答えに、国技館は笑いに包まれたのでした。

関西人の血が騒いだ

スタジオではまず、この笑いを呼んだインタビュー、そして大関・貴景勝との一番について聞きました。

 

――「準備万端」で臨んだ優勝インタビューだったと思いますが、率直なところどんなお気持ちだったんですか。

 

德勝龍 ちょっと、関西人の血が騒ぎましたね(笑)。

 

――千秋楽には大関・貴景勝関との一番が組まれましたね。これは德勝龍関にとっても、今場所一番の内容だったんじゃないですか。

 

德勝龍 そうですね。やっぱり気持ちの強い大関が相手なので、自分も強い気持ちで応えたい、いい相撲を取りたい、という気持ちで取りました。

 

――終盤戦、連日「突き落とし」での逆転勝利が多かったですが、大関との一番ではしっかりと四つに組んで寄り切りました。取組内容についてはどう振り返りますか。

 

德勝龍 しっかり当たればいい、しっかり前に出ればいいと、自分に言い聞かせていました。自分でもいい相撲が取れたと思います。


――千秋楽は優勝を争う正代関が先に勝利し、負ければ優勝決定戦となる状況でした。正代関の取組はご覧になっていましたか。

 

 

德勝龍 あまり見ないようにしようと思っていたのですが、気になってちらっと見てしまったんです。でも正代関がすごくいい相撲を取っていたので、自分も「よし!」とまた気合いが入りましたね。

 

――後半戦の德勝龍関は「神がかっている」とも言われる連勝でした。「優勝は意識していました」とインタビューでは話していましたが、どのくらいから優勝という文字がちらついたのでしょうか。

 

德勝龍 十三日目の豊山関との取組ぐらいからですかね、ちょっと意識しました。十四日目の正代関との直接対決も、「自分は番付が一番下だから怖いものはない」と思っていきました。

急逝した恩師を思い、涙

 

笑いに包まれた優勝インタビューの途中、德勝龍が涙をこらえることができない瞬間がありました。それは、今場所中に急逝した恩師・伊東勝人さんについて話が及んだ時。母校・近畿大学相撲部監督の伊東さんは、熱心に大学入学を誘ってもらっただけでなく、角界に入ってからも頻繁に電話で励まし支えとなってくれた恩師。突然の訃報に、「自分は土俵の上で、相撲で恩返しをする」という思いで土俵に上がり続けたと言います。優勝インタビューで恩師への思いを問われると、言葉に詰まりながら答えました。

「伊東監督が見てくれている、のではなく、一緒に土俵で戦ってくれた気がします」。

 

このインタビューについて、スタジオでも尋ねました。

 

――恩師の伊東監督が亡くなられたという悲しい出来事は、德勝龍関の相撲にどう影響されたんでしょうか。

 

德勝龍 場所中で本当に急な事だったので、今でも信じられないくらいです。でも優勝インタビューで言ったとおり、一緒に土俵の中で戦ってくれていたのかなと。もうそれしかないです。見てくれていたというより、一緒に戦ってくれていた、そう感じました。

 

「花のロクイチ組」のひとりとして

ここで德勝龍のプロフィールを改めて振り返ります。德勝龍は昭和61年生まれの33歳。身長1メートル80センチ、体重188キロ。相撲の強豪・明德義塾高校から近畿大学へ進学し、平成21年に初土俵を踏みました。同学年には元横綱・稀勢の里、初場所後に引退を発表した元大関・豪栄道、三役経験のある妙義龍や栃煌山など強い力士がそろい、「花のロクイチ組」と呼ばれる世代です。その中で德勝龍は、三賞や金星獲得などの目立った成績がなく、近年は十両陥落と返り入幕を繰り返していました。

 

 

――同世代に実力者の力士たちが多い中、焦りのようなものはなかったですか。

 

德勝龍 三役を経験している力士が多いですが、「自分は自分だ」と思ってやってきましたし、これからもそう思っています。33歳という年齢についてはあまり意識していないです。「まだ33歳」だと思っています。

 

「花のロクイチ組」の一人が幕尻から優勝を果たしたことに、元横綱・稀勢の里の荒磯親方は千秋楽のNHKラジオ解説で、德勝龍の優勝を非常に喜んでいました。

 

 

そしてその喜びはもちろん地元でも。德勝龍の地元・奈良県出身力士の優勝はなんと98年ぶり。奈良市役所のパブリックビューイング会場には多くのファンがつめかけ声援を送りました。優勝が決まった瞬間は、父の青木順次さんも涙を流し喜びを爆発させていました。

この映像を見た德勝龍はひと言。

 

德勝龍(泣き虫なのは)親父に似たんですかね(笑)。

自分らしく、一生懸命に

番組では、德勝龍の妻・千恵さんにもメッセージをもらいました。

 

妻・千恵さん

「今場所は、なんでずっと勝っているんだろうと思っていました。どうしちゃったの?きょうは怖くて、廊下でひとりで見ていました。
本当におめでとうございます。」

 

――このメッセージを受けて、德勝龍関、どうお感じですか。

 

德勝龍 たぶん今日は見てないだろうなと思っていたので、まさか国技館に来ていると思いませんでした。だから来ていてびっくりしましたよ。「おめでとう」と言ってもらえて、本当に自分にとって一番の支えです。

 

――来場所は大阪場所。奈良出身の德勝龍関にとってはご当所の場所です。周りの見る目も違ってくると思いますが、どう臨みますか。

 

 

德勝龍 今場所は優勝させてもらいましたが、これからが大事だなと思います。気を引き締めていかなきゃ駄目だなと。やっぱり自分らしく、一生懸命に相撲を取れればいいなと思います。

 

――自然体で力強い相撲、来場所も期待しています。德勝龍関、ありがとうございました!


 

サンデースポーツ2020/サタデースポーツ

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