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103歳の聖火ランナー 人生の大舞台に挑む

2020-06-09 午前 09:00

冨久正二さん

聖火リレーは私の人生の大きなひとつの生きる目標です。

 

広島県三次市に住む冨久正二さん、103歳。今も現役のスプリンターである冨久さんは、ことし5月に広島県内で行われる予定だった東京オリンピック聖火リレーのランナーに選ばれていました。新型コロナウイルスの影響でオリンピックとともに延期となった聖火リレーに向けトレーニングを続ける103歳のランナーを取材しました。(広島放送局放送部カメラマン 小島陽子)

外出自粛のさなか

 

「元気ですよ~お~」。カメラに向かって笑顔で手を振る冨久さん。外出自粛要請のさなかの、5月上旬。冨久さんのコーチが撮影した映像を見て私はほっとしました。

聖火リレーの延期が決まり、一時は「本当の奈落の底に落ちたような感じがした」と話していた冨久さんでしたが、1年後に向けしっかりと前を向いていました。

冨久正二さん

来年のきたるべき時期に笑顔でとにかく自分の与えられた聖火リレーのコースを全うしたい。

103歳の現役スプリンター

 

103歳の現役スプリンター冨久さんは、地元の整体師に勧められ97歳で陸上競技を始めました。100歳のときには、マスターズ陸上の100歳以上104歳以下の部の60メートル走で16秒98の日本記録をマークしました。

100歳を超えて走り続ける その秘密は?

 

100歳を超えても走り続けられる秘訣は規則正しく自立した生活にあります。ひとり暮らしの冨久さんは、毎日午前3時半ごろに起きて食事の準備や掃除などの家事を自分でこなします。

ありあまるエネルギー

私は去年、102歳のスプリンターとして冨久さんを初めて取材。聖火リレーに向け改めて取材をお願いし1年ぶりに再会した際に、冨久さんから握力勝負を挑まれました。私が力をこめて冨久さんの手を握ると…。

冨久さん:あなた、カメラいつも持っているから力あるのね。

こう言いながら冨久さんは、私の手をそれ以上の力で強く握り返してきました。

ーー冨久さん力が強いですね!すごいですね!

冨久さん:大したことないよ。

 

 

103歳でさらにパワーアップしていたのです!家での取材中も、お湯が入った重そうなやかんを軽々と運んだり、家の中を小走りで移動したりしていて、103歳とは思えない活発な姿が印象的でした。

未知の領域!200メートル走に挑戦!

 

3月上旬、冨久さんは、5月の聖火リレーに向けての練習を始めました。陸上競技の仲間が作ってくれた本物のトーチと同じ長さと重さの模型を右手に持ち、本番と同じ200メートルを走ります。冨久さんはこれまで100メートルまでしか走ったことがなく、200メートルは未知の領域、初めての挑戦です。

 

 

歳とともに体がしだいに右側に傾いてきている冨久さんにとって、1.2キロもあるトーチの模型は重く、途中何度も立ち止まってしまいます。

貞末コーチ:いける?

冨久さん:よっしゃ!がんばれ!

 

自分で自分を奮い立たせゴールまであきらめず無事200メートルを走りきりました。

 

 

冨久さん:長いね。こんなに長いとは思わなかったな。

ーー疲れましたか?

冨久さん:いやそうでもない。年のせいにしちゃいけんね。年やからとかってね、負け惜しみみたいやから。なにくそという気持ちがあるね。

被爆者として走る

 

なぜ、ここまで頑張ることができるのか?

冨久さんには平和の祭典でもあるオリンピックの聖火ランナーとして広島から平和の大切さを訴えたいという強い思いがあるからです。原爆が投下された75年前(1945年)の8月6日、当時の国鉄に勤めていた冨久さんは、救援活動のためその日のうちに広島市内に入り、被爆しました。

 

原爆によって負傷した多くの人たちを担架で救護所に運ぶ作業にあたりました。広島駅のホームから見た市内の建物が破壊された悲惨な光景が今も脳裏に焼き付いているといいます。同じことが二度と繰り返されてはいけないという思いを持ち続けています。

冨久正二さん

二度と再び原爆のようなものを落としてくれるなよ、という思いをいくらか自分の心の中に入れてそれをふりまいて、少しでもそういう思いが世界中へ、東京オリンピックを超えて世界中に飛び散ってくれればいいなという気持ちを持っていますね。

来年の聖火リレーへ 挑戦は続く

 

新型コロナウイルスの影響でオリンピックとともに聖火リレーも延期になりました。外出自粛によって屋外での練習はできなくなりましたが、“104歳”の聖火ランナーとして走る来年に向け気力は十分です。体力を維持するため、今できることをやろうとバイクマシンなど使って家の中でできるトレーニングを毎日続け、再び屋外を走る日に向け準備をしています。

 

冨久正二さん

『よし何が何でもやるぞー』という気持ちですかね。高齢者になると、希望というのか望みというのか、そういうのがだんだん減ってくるけども、私のは逆に盛り上がったような気がします。私のこれは使命だろうと、私の人生の大きなひとつの生きる目標じゃないかと、いうふうに感じております。

 

 

聖火リレーを走りきり、平和へのメッセージを世界に発信したい。人生の大舞台に向けて103歳の挑戦は続きます。

この記事を書いた人

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小島 陽子 カメラマン

広島局放送部。報道カメラマン。平成30年入局。学生時代は陸上競技部で中距離選手。趣味は水彩画とジョギング。

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