特集 御嶽海 大相撲九州場所 "このままでは終われない” 再び大関へ巻き返し誓う

御嶽海は秋場所で4勝11敗と大きく負け越し大関から陥落。
再び大関の座へ。
「このままでは終われない」と関脇で臨む九州場所で巻き返しを誓う。
20代最後の1年は大関昇進も4場所で陥落
御嶽海にとって20代最後の1年となる令和4年は劇的な始まりだった。
東の関脇で臨んだ初場所で持ち味の鋭い立ち合いを中心に13勝2敗の成績で3回目の優勝。
その後大関に昇進した。
「責任感は今までとは違うが、変わらない気持ちで臨む」と意気込んだ続く春場所。
11勝4敗と大関陣でただ1人ふた桁白星をあげるなど力を示した。
しかし夏場所初日の高安との一番。
押し出しで勝ったものの土俵下に落ちた際に右肩を痛めた。
夏場所はこのけがの影響で白星を伸ばせず負け越し。
続く名古屋場所を角番で臨むことになったが新型コロナウイルスの影響で途中休場。
秋場所を異例の2場所連続となる角番で迎えた。
その秋場所では鋭い出足は影を潜め、11日目に佐田の海に敗れ負け越しが決まった。
大関陥落が決まった佐田の海との一番(秋場所11日目)
新入幕を果たした平成27年九州場所以降、自己ワーストとなる4勝11敗の成績で終えた。
これまで大きなけががなかった御嶽海。
右肩のけが以降、歯車が少しずつかみ合わなくなっていった。
御嶽海
けがをしないからこそ気持ちの持ちようは今までとは違いました。取れると思っても気持ちで負けないようにと思っていてもそれが体と脳で別々になってしまっているのもわかりました。難しかったですね。しかたがない、こういう時もあると受け止めていかないと。切り替えてそれをしっかり11月場所につなげるしかない。
大関奪還ではなくもう1度狙う気持ちで
大関から陥落し関脇として臨む九州場所。
10勝以上あげれば再び大関の座に戻ることができる。
「大関奪還じゃない。もう1回大関を狙う。下からいったような気持ちでやるしかない」
御嶽海は黙々と下半身の強化に励んでいた。
約12キロあるトレーニング用のボールを持って背中や腰の角度を変えながらすり足やスクワットを入念に行う。
狙いは“立ち合い”だ。
かつては鋭い出足で相手を押し込めていたが、右肩のけが以降体のバランスを崩してしまい自分の相撲を見失ったという。
そこで相撲の原点とも言える下半身を再び磨いている。
御嶽海
全体のバランスが悪くて右肩1つでここまでバランスが崩れるのかと。今までは押し込んでいた立ち合いが押し込めず、じりじり来るから引くというか距離をあけたくなってしまう。バランスが崩れているのでどのように崩れているのか、こういう格好になったら弱いなとか、まだいけるなとか、そういうバランスをしっかり見ながら、稽古に取り組んでいかないといけないと思っています。
場所前の出稽古期間は5日間、春日野部屋に集まった力士たちと稽古に励んだ。
小結の霧馬山、竜電、栃ノ心、碧山などの関取衆を相手に勝ち負けにこだわらず自分の立ち合いを試し、徐々に感覚をつかんでいった。
御嶽海
立ち合いの威力が弱くなっていた部分があったので、立ち合いとその後の土俵の使い方をテーマに置きながらやれました。難しかったし頭を使ったけど、しっかり5日間過ごして自分の思うような相撲で何番か取れたのでよかった。
「このままでは終われない」激動の1年を締めくくる
優勝、大関昇進、右肩のけが、新型コロナ感染、負け越し、大関陥落とさまざまな経験をしたこの1年。
12月25日には30歳となり新たな節目を迎える。
20代の最後、強い御嶽海で再び大関に戻るためにも「1日一勝」で1年納めの九州場所に臨む。
御嶽海
この1年はいろんな意味でほんとうに忙しい1年だった。優勝して大関に上がってけがして落ちて自分の中でも激しい1年だったなと。人生面白いなと思いますね。でもやっぱり気持ちよく始まったので、最後は気持ちよく締めくくりたいし最後の20代に暴れたい。1日一勝を目指して気持ちで負けないように強い御嶽海でことし1年締めくくりたい。
この記事を書いた人

持井 俊哉 記者
平成26年NHK入局
北九州局を経て、スポーツニュース部。小1から剣道をはじめ、現在、5段。「打って反省、打たれて感謝」をモットーに何事にも謙虚に誠実にチャレンジすることを目指す。