特集 菊花賞 ~競馬界のスター候補生の躍動に期待~

1冠目の皐月賞は「速い馬が勝つ」、2冠目の日本ダービーは「運のいい馬が勝つ」。
そして3冠目の菊花賞は「強い馬が勝つ」と言われてきた。
クラシック3冠最後のレース・菊花賞は過酷な3000メートルの距離で争われる。
京都競馬場の改修工事のため、ことしも阪神競馬場での開催。
近年は長距離レースを回避する馬が多く、この春のG1を沸かせた馬たちは次々と回避を表明。
その結果、混戦模様となっている。
最近ではキタサンブラック、現在ではタイトルホルダー。
“現役最強”と言われる馬たちは、実は菊花賞を制してから大きく成長していった。
ディープインパクト、オルフェーヴル、コントレイルもこの長距離を克服して三冠馬になった。
ことしもこの先の競馬界を賑わせてくれそうなスター候補生が多く出走する。
ガイアフォース 注目の“上がり馬”
例年、菊花賞は「夏の上がり馬」対「春の実績馬」という図式がある。
夏の上がり馬ではメジロマックイーン、マヤノトップガン、マンハッタンカフェなどが菊花賞でG1初制覇。
古馬になって活躍した。
ことしの上がり馬の中ではガイアフォースに注目が集まる。
菊花賞のトライアルレース、セントライト記念の勝ち馬だ。
菊花賞に向け調整するガイアフォース(2022年10月19日)
デビュー戦は去年9月の小倉。
2着だったが、このレースで勝ったのはことし5月に行われた日本ダービーを制したドウデュースだった。
その後は骨折もあって春のクラシックには出走がかなわなかったが、復帰後は条件戦をクリアし、一気に菊花賞への出走権を獲得した。
父はあのキタサンブラック。
秋の天皇賞参戦を表明している皐月賞と日本ダービーでともに2着だったイクイノックスと並び、初年度産駒となるのがガイアフォースだ。
キタサンブラックは血統的に短距離の要素があり、当初は長距離が不安視されていた。
その中で、血統のスポーツと言われる競馬界で常識外の中長距離のレースで活躍した。
その息子ということで、距離適性・成長度に期待がかかる。
杉山 晴紀 調教師
管理する杉山晴紀調教師は「キタサンブラックとは、長くいい脚を使うところが似ている」と評価している。
この菊花賞を制すことができれば、未来が大きく開けてくるはずだ。
同じ杉山厩舎にはもう1つのトライアルレースである神戸新聞杯の覇者、ジャスティンパレスもいる。
菊花賞に向け調整するジャスティンパレス(2022年10月19日)
皐月賞と日本ダービーの2レースは9着に終わったが、元々2歳暮れのG1レース(ホープフルステークス)で2着と今回のメンバー唯一のG1連対馬。
春の雪辱を期す。
アスクビクターモア 世代トップと渡り合ってきた力を菊の舞台で!
春の実績馬で最上位なのが、アスクビクターモア。
皐月賞5着、日本ダービーは3着だった。
皐月賞 アスクビクターモアは5着だった(2022年4月17日)
潜在能力は管理する田村康仁調教師も認めるところ。
3月の弥生賞ディープインパクト記念ではのちのダービー馬、ドウデュースを破っている。
秋初戦はセントライト記念2着でガイアフォースの後塵を拝したが、徹底マークされる展開、休み明けと不利な条件の中で次につながるレースだったと言える。
田村調教師は「仕上がりは順調。春に比べて精神面が成長し、折り合いに不安がなくなった。距離の不安も全くない」と手応えを口にする。
毎回しっかりと騎手と作戦を練る田村調教師だけに、菊の舞台にどんな作戦で挑むのか注目だ。
混戦と言われる中、どの馬がクラシック最後の1冠を取るのか。
スター誕生の瞬間をNHK競馬中継でお楽しみください。
この記事を書いた人

大坂 敏久 アナウンサー
平成10年NHK入局。ミスターシービーから競馬に興味を持つ。これまで、日本ダービー・有馬記念などを担当。