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特集 久保建英 堂安律 サッカー日本代表レフティーが生み出す個性的なワンプレー 「サッカーの園」

サッカー 2022年10月31日(月) 午後5:00

サッカーの“究極のワンプレー”に秘められた極意を探っていく番組「サッカーの園」(BS1で放送)。

元日本代表の前園真聖さん、アンタッチャブルの柴田英嗣さんをMCに毎回さまざまなゲストを迎え、超一流が生んだ究極のワンプレーとその神髄に迫ります。

今回のテーマは“レフティー”。

左足が生み出す創造性あふれるプレーはサポーターを魅了します。

日本を代表するレフティーの久保建英選手と堂安律選手のすごさとは?

いずれも元日本代表の小倉隆史さん、名波浩さん、中澤佑二さんとともにプレーもキャラクターも個性的なレフティーの魅力にとことん迫ります!

(この記事は番組の内容を再構成しました)

レフティーの存在意義とは?

 

レフティーといえば前園さんも子どもの頃にあこがれたというマラドーナをはじめ、メッシ選手や中村俊輔選手などひと味違うプレーや雰囲気を醸し出しています。

日本左利き協会の調査によると世界の人口に占める左利きの割合は約10%ということです。

レフティーモンスター 小倉さん

小さい時から(ピッチ上の)全員の動きがわかるような感覚でやっていたことがあります。シュートの時も打つ前からイメージできて、『あ!入った』と止めた瞬間にわかるんです。

ミスターレフティー 名波さん

世の中では不便なことが多いけど、サッカーに限りかっこいい。ドアノブや駅の自動改札機もだいたい右利き用なので、まあまあ難しいんですよ。

 

日常生活ではいろいろあっても、ひとたびピッチに立てば異彩を放つ活躍を見せる。

それがレフティーなのです!

久保建英と堂安律  日本を代表するレフティー 

そんな名波さんが注目するレフティーは久保選手と堂安選手。

久保選手は巧みなドリブルが“和製メッシ”と評されています。

そしてパンチ力のあるシュートが持ち味の堂安選手。

久保選手の左足でのトラップは、ファーストタッチで完璧にボールをコントロールして相手に隙を与えません。

東京オリンピックの南アフリカ戦でも相手ディフェンダーが飛び込めない位置に瞬時にボールをコントロールし、左足でゴールを決めました。

 

東京オリンピック南アフリカ戦 久保選手の先制ゴール(2021年7月22日)

名波さん

相手にケアされているのに左足でシュートを打てたのは、最初に右に持っていきそうな上半身のフェイクを入れたことが大きかったですね。小さい動きですがフェイントが入っています。

細かいフェイントを可能にするのは体幹の強さ。

ブレない体幹とボールコントロールが久保選手の武器なのです。

一方の堂安選手が得意とするのは右斜め45度からのシュート。

このゾーンからのシュートを子供の時から磨いてきました。

得意な左足を生かすため、堂安選手は右足も巧みに使います。

 

東京オリンピックメキシコ戦 堂安選手が右足でシュート(2021年8月6日)

名波さん

フェイクで右足も使いますし、アイデアとトリッキーさを持っている。イマジネーションあふれるゴールゲッターという感じですね。

日本が誇る2人のレフティーのストロングポイントが発揮された究極のワンプレーが、東京オリンピック前に行われた強豪スペインとの一戦で生まれました。

久保選手が左サイドをドリブルで駆け上がり、左足でゴール前へパス。

そこへ走り込んだ堂安選手が左足でシュートを決めたのです。

 

東京オリンピック強化試合のスペイン戦(2021年7月17日)

名波さん

ボールは相手より遠い位置に置きたいので、左利きの人間は右手で相手を抑えることが多い。その形で相手を背負いながら突破できた久保選手のドリブルがすばらしかった。堂安選手はマイナスのエリアにボールが入ってくることを確信していましたね。

ディフェンダーとして中澤さん

僕らは右対右の対決が多いので、右手で自分が抑えられることがほぼないんですよ。結局のところはその免疫がないのであっさり倒されてしまう。左利きの選手とやる時、どうしてもリズムがとれないんです。

小倉さん

フォワードの僕としては堂安選手のパンチのあるシュート。枠内でしっかりニア上に打ち切れる。何気なくやってますけど結構な精度なんですよ。技術の高さというのも現れているのかなと感じました。

前園さん

2人の場合は右足でも得点を決めているんですよ。右足も蹴れるから右サイドにいた時に中へのカットインと縦でも仕掛けられるし、幅が広がっている選手です。

久保選手のボールコントロールとパンチ力のある堂安選手のシュート。

2人のレフティーの力が掛け合わさって生まれたゴールでした。

ワールドカップで注目!”世界のレフティー”

世界に目を向けてみると、ことしのワールドカップ出場国の中にも魅力的なレフティーがいます。1次リーグで日本が対戦するドイツ代表のレロイ・サネ選手もそのひとりです。

 

レロイ・サネ選手(ドイツ)

警戒すべきはそのスピード。

イングランドプレミアリーグ時代の2017年にはリーグ最速を記録したこともあるほど。

さらにサネ選手が優れているのは『空いているスペースの見つけ方』。

相手ディフェンダーとの駆け引きを繰り返しながら、ここぞのタイミングでスペースに走り込み左足を振り抜きます。

名波さん

周りにいる選手たちとうまく絡みながら形づくりができている。活躍する可能性が高いのはサネ。

前園さん

スピードもあり、足元もうまい、しっかり点も決められる。1人で2~3人剥がす力があるので、組織で守っても崩せる選手ですね。

サネ選手のお父さんは元セネガル代表。

お母さんは新体操のオリンピック銅メダリスト。

ドイツ代表の中でも要注意しなければならない選手でしょう。

 

続いての注目選手はイングランド代表の次世代レフティー、フィル・フォーデン選手

 

フィル・フォーデン選手(イングランド)

前園さん

いい選手ですよ。ドリブルがすごく滑らかですね。スピードもあるししなやかだし。今回のワールドカップでブレークする可能性があります。

そしてベルギー代表の最多得点を誇るロメル・ルカク選手

 

ロメル・ルカク選手(ベルギー)

中澤さん

ルカク選手はフィジカルですよ。まず体で最後にこぼれたところを蹴るみたいなね。

前園さん

利き足が“体”なんです。(どちらの足で)止めるとかないんですよ。

(左から)リオネル・メッシ選手、ベルナルド・シウバ選手、アントワーヌ・グリーズマン選手

このほか、アルゼンチン代表のリオネル・メッシ選手。

“左足の魔術師”と呼ばれるポルトガル代表のベルナルド・シウバ選手。

前回大会で優勝したフランス代表のアントワーヌ・グリーズマン選手など魅力的なレフティーにも注目です。

万能型の“レフティーモンスター”小倉隆史

現役時代の小倉さんの武器は“レフティーモンスター”の名のとおり、左足から繰り出す強烈なシュート。

同学年の前園さんも「点が取れる選手だから安心して後ろでやれる」と信頼を置いていた得点能力の高さ。

“オグフェイント”と呼ばれた独特なタッチのドリブル。

さらにパスでもチャンスを演出するなど万能型のストライカーで、若くして日本代表入りし『日本のフォワードは10年安泰』とまで言われていました。

 

小倉さんが日本代表で初ゴールを決めた試合(1994年)

小倉さんが“レフティーモンスター”のすごさを見せたのが、名古屋グランパスエイト時代の1995年に行われたベルマーレ平塚とのゲームでした。

試合前半にゴール前のドリブルで相手を引きつけてからの絶妙なパスで1つ目のアシスト。

次に左足のクロスボールで2つ目のアシスト。

そしてクロスボールを左足のスライディングボレーで決めて1ゴール。

後半に入ってもゴール前の混戦から左足を振り抜いてゴールを決め、この試合で2ゴール2アシストを記録しました。

小倉さん

すごく印象的なゲームでしたし、2ゴール2アシストでハットトリックしてないっていうのが僕らしいなと。

 

中澤さん

小倉さんは何でもできちゃうので、対戦した時にこちらも選択肢をいっぱい持たなきゃいけないので守りづらかった。多彩なんですよ。スライディングボレーなんて止められません。

前園さん

ゲームメーカーのパスじゃないですか。(相手を)2人引き寄せて。なかなかフォワードでそれができる選手がいない。僕も一緒にやっていましたけどやっぱり楽しかったですね。

 

多彩な攻撃パターンで相手の守備を突破し、左足で華麗なシュートを決める万能型ストライカー。その小倉さんを象徴するプレーが光る一戦でした。

”芸術的なフリーキック” 中村俊輔

日本代表の試合でフリーキックを蹴る中村選手(2008年)

これまでイマジネーションあふれるプレーを見せてきたレフティー中村俊輔選手が今シーズン限りでの現役引退を発表しました。

そのフリーキックの放物線はまさに芸術。

これまでにJ1で歴代トップとなる24本の直接フリーキックを決めています。

中村選手が名波さんと生み出した伝説のゴールが2000年のアジアカップで生まれました。

準々決勝のイラク戦で中村選手がゴール右サイドから蹴ったフリーキックに逆サイドから走り込んだ名波さんが左足でダイレクトボレーシュート。

見事な同点ゴールを決めたのです。

名波さん

100回練習しても入らないシュートが本番で入っちゃうんだから。俊輔のボールがパーフェクトだったね。

スパイクへの細かすぎるこだわり 本田圭佑

左利きの選手として日本代表で最多の37ゴールをあげているのが本田圭佑選手。

得意とするのは圧倒的な本数を任されてきたフリーキックです。

 

本田 選手

その秘密はスパイクに隠されていました。

本田選手のスパイクを高校生の頃からサポートしていた松浦紀典さんによると「右足のほうがワンサイズ小さくて左足のほうが大きい」という特徴があるといいます。

松浦さん(本田選手の元スパイク担当)

フリーキックを蹴るときに足の指を動かすらしいんですよ。最後の微調整を親指で押したりとか。そうすると軸足よりも蹴り足のほうが発達しているらしいので、若干大きくなる。普通サッカー選手は左右同じスパイクを履くんですよ。でも本田選手は左右違う用途のスパイクです。レフティーなので右足が滑るとキックの精度が低くなってしまう。雨の日など滑るグラウンドで履くタイプのスパイクを軸足の右に履いて、左足はノーマルのスパイクです。左右違うタイプを履き分けているのは本田選手以外に知らないですね。


踏み込む右足は滑らないように金属のポイントがついたスパイク。

一方の左足は合成樹脂の軽いスパイクで足を振りやすく。

なんと左右で別々のスパイクを使っていたのです。

松浦さん

スパイクは金属のピンがつくので、少しだけ重いんですよ。両方重いものを履くよりも片方にしたほうが体力の消耗に影響がある。本当に数グラムなんですけど、そういう細かいところまでこだわっている。

スパイクにこだわりを持つ男、本田選手の究極ともいえるフリーキックが2010年のワールドカップ南アフリカ大会で生まれました。

1次リーグ突破をかけたデンマーク戦。

ゴールまで約30メートルの位置から無回転のブレ球でフリーキックを決め、日本を決勝トーナメントに導いたのです。

 

ワールドカップ南アフリカ大会デンマーク戦でのフリーキック(2010年)

右足に履いていたスパイクは金属と合成樹脂のミックスでした。

ピッチ状況などに合わせてスパイクをアレンジする異常なまでのこだわり、もう常人には理解できません!

小倉さん

インタビューで圭佑に聞いたことがあったんですけど、確かに『ちょっと動かす』と言ってましたね。ただ蹴っているんじゃなくて、少し押しているような。ほんのコンマ何秒ですけど。

中澤さん

本田選手はワールドカップの事前キャンプ地でもフリーキックの練習をナラさん(元日本代表ゴールキーパーの楢崎正剛)と一緒にやっていたんですけど、ナラさんも止められてないんですよ。8割ぐらいの確率で入っていた。この精度は本人もたぶん自信があったと思います。

スタジオに本田選手が実際に履いていたスパイクが。

出演者の皆さんが手に取って確かめてみると・・・

 

本田選手のスパイク

前園さん

う~ん・・・バランスがこれで合うんだ。

小倉さん

(右側が)ちょっと重いよ。

柴田さん

高さが違うから、歩いていると傾きそうですけどね。

中澤さん

左右違うスパイクなんて普通は履けないです。スパイクのポイントが違うとバランスが悪い。やっぱりレフティーってちょっと変わってますよね。

左45度のストライカー玉田圭司

Jリーグと日本代表で活躍したレフティー玉田圭司さん。

J1で99得点、日本代表で16得点をあげた玉田さんといえば、2006年のワールドカップドイツ大会のブラジル戦で決めたゴールが印象的でした。

玉田さんが得意としていたプレーは左45度から打つ左足のシュート。

日本代表であげた16ゴールのうち半分の8ゴールを左サイドから決めてきました。

 

玉田さん

左のアウトでボールを持ちながらシュートを打つのがひとつの形でした。左足でシュートを打ちたい、それが原点だと思う。ドリブルからのシュート、イコール左足でボールを持って左斜め前にボールを置いて打つっていうのが自分の中にあるから、それがプロになってからも染みついていたのかもしれないですね。

玉田さんが憧れていた選手は左足で数々の伝説を生み出した“レフティーの世界最高傑作”と言われるディエゴ・マラドーナです。

 

ワールドカップイタリア大会でのマラドーナ(1990年)

玉田さん

画像がすり切れるぐらいビデオやDVDで見てましたよ。衝撃を受けましたね。ドリブルしている時の姿勢がすごく好きでした。胸を張りながらやるとかすごくフォームがキレイだったじゃないですか。

マラドーナにあこがれて磨いてきたドリブル。

そこに玉田さんの極意が加わりました。

玉田さん

若い頃は1対1でとにかく抜くっていうのがあった。今であれば、あえてドリブルをすることによって1対2を作る。自分がボールを持つことによって2人を引きつける。それでうまくいったら絶対に誰か1人フリーになるようなドリブルを考えながらやるようになりました。『抜く』じゃないんですよね。

相手を引きつけることで味方に有利な状況を作り出すという玉田さんの究極のワンプレーは、セレッソ大阪時代の2015年にJ1昇格をかけて戦ったアビスパ福岡との一戦でした。

この試合で玉田さんは中盤でボールを受けるとドリブルで相手3人を引きつけてから味方へパス。

そのままゴール前へ走る玉田さんにパスが返り、最後は左足でゴールを決めました。

 

J1昇格プレーオフのアビスパ福岡戦で先制ゴールを決めた(2015年)

玉田さん

僕が好きなのはゴールするだけではなくて作りの部分から自分が絡む。そしてフィニッシュが自分というのが僕の中では究極です。本当にいいゴールだったと思います。

自分で攻撃を組み立て最後のシュートまで決める。

玉田さんのこだわりが詰まったゴールでした。

改めて考えるレフティーとは?

改めて今回のテーマ「レフティー」とはいったいどんな存在なのでしょうか?

小倉さん

(相手選手から)対峙したらやりにくいとか違和感があるとよく言われるんです。僕らには分からないんですよ。サッカーではお得感というか『おいしい』かなって思います。

前園さん

『Special One(特別な存在)』です。僕もあこがれましたし、いつの時代もレフティーの選手は常に注目されている。今だったらメッシですね。やっぱり特別な存在なんだなと思いました。

 

いつの時代も注目され、チームの中心選手となるのがレフティー。

ことしのワールドカップも創造性あふれるプレーで大会を盛り上げてくれることを期待しましょう!

 

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