ストーリーパラスポーツ

メダル報奨金が同額に アメリカパラリンピック選手に朗報

2018-10-05 午前 10:54

アメリカのパラリンピック競技の選手たちに朗報が届きました。

 

アメリカ五輪・パラリンピック委員会の理事会の場で、パラリンピックの選手にもオリンピック選手と同額の報奨金が支払われることが決定し、ピョンチャン大会からこの規則が採用されることになりました。

 

ピョンチャンパラリンピックで、アメリカは36個のメダルを獲得しましたが、金メダルには3万7500ドル(約422万)、銀には2万2500ドル(約254万円)、銅には1万5000ドル(約170万円)が支給されることになります。

 

リオ大会までは、オリンピックでの金メダリストが2万5000ドル(約282万円)だったのに対し、パラリンピックの金メダリストへの報奨金は、わずか5000ドル(約55万円)と格差があったため、選手たちから不満の声が上がっていました。

 

アメリカ五輪・パラリンピック委員会は、2028年にロサンゼルス大会の開催を発表

 

アメリカ五輪・パラリンピック委員会は、スポンサーからの資金が確保できたのと、2028年のロサンゼルス大会の開催が決定しているため、そこに向けた強化の一環で今回の英断に至りました。

うれしいニュースにパラリンピアンが号泣

パラリンピックで夏季、冬季で5つのメダルを獲得しているオクサナ・マスターズ選手は、この決定に号泣。SNSで感謝の言葉を伝えました。

 

オクサナ・マスターズ選手

オクサナ・マスターズ選手

最高のニュース。アメリカ五輪委員会のみなさん、ありがとうございます。パラリンピックのメダルの価値をオリンピックと同等に評価してもらえるのは、本当に本当にうれしい。

 

パラリンピックは用具や遠征などに多額の費用が必要な競技なので、オリンピック選手のような支援体制を持たないパラリンピック選手にとっては、人生を変えるような出来事です。

 

スポーツに挑戦したいと思っている障がいのある子どもたちが、夢を持って、目標に向かって頑張れるようなとても意味のある決定だと思います。

 

マスターズ選手は、先天性の疾患を持って生まれました。7歳の時にゲイ・マスターズさんの養子になり、アメリカへ。
 

幼い頃からボート競技に取り組み、ロンドン大会では銅メダルを獲得。

 

オクサナ・マスターズ選手 ピョンチャンオリンピック(2018年)

 

その後、背中を痛めたため、冬季競技のクロスカントリースキーに転向し、ソチ大会では銀メダルと銅メダル、ピョンチャン大会では金2つ、銅1つを獲得する快挙を成し遂げています。

 

今回の決定で9万ドル(約1000万円)を受け取ることになりますが、ボートやクロスカントリースキーなどの用具の費用、合宿や遠征にも多額の経費がかかることは容易に想像がつきます。

日本や海外のメダル報奨金は?

ちなみに、日本もオリンピックと、パラリンピックの選手の待遇にまだ少し格差があります。

メダリストへの報奨金を見てみると、ソチ大会ではオリンピック選手は金メダルに300万円、パラリンピックは150万円と2倍の差があります。

 

 

2020年東京大会が決まり、スポンサー収入が増えたことで報奨金も増額され、パラリンピックではソチ大会の倍額となる300万になりましたが、オリンピックの金メダルは500万円とこちらも増額。

 

しかし銀200万円、銅100万円はオリンピック、パラリンピック同額に設定されているように、日本の努力がうかがえます。

障害者スポーツの発展に尽力するインド

オリンピックとパラリンピックのメダリストに同額の報奨金を支給している国は、意外に少なく、報奨金の金額や制度を発表している国ではインドと韓国があります。

 

「え、インド???」と驚く方もいると思いますが(私もその一人です)、リオ大会では金メダルに75万ルピー(約120万円)、銀に50万ルピー(約78万円)、銅に30万ルピー(約47万円)が支給されました。

 

 

インドの特筆すべき点は、パラリンピックだけではなく、アジア大会やイギリス連邦大会のパラ大会のメダリストたちにも健常の選手と同額の報奨金(金メダルに30万ルピー:約47万円)となっています。 

そのほか、視覚障害や聴覚障害の世界選手権、スペシャルオリンピックなどのメダリストたちにも同じように報奨金が支払われる仕組みになっていますが、これは世界でもまれなケースです。

 

インドには障害者の権利を記した法律を2016年に改定しており、その中で政府による障害者のスポーツ活動支援なども盛り込まれているほか、社会における機会の平等なども明文化されていることも大きく影響しています。

 

また、障害者スポーツを通じて、一般社会に障害者への理解を深めてもらい、差別軽減を目指しているようにも思えます。

パラスポーツの育成強化にも支援を

パラリンピックスポーツの選手に、オリンピックと同額の報奨金を支給するのは、とても進歩的なことだといえます。

 

ただ、アメリカも日本も選手の強化や育成に関しては、まだまだ個人に頼っている部分が大きいのが現状です。 

 

アトランタパラリンピック 閉会式 (1996年)

 

アメリカは過去のパラリンピックで、自国開催のアトランタ大会では157個のメダルを獲得し、メダル獲得数1位になったものの、その次の大会以降、メダル数が激減しています(シドニー109個、アテネ88個)。

 

ソルトレイクシティーパラリンピック 開会式 (2002年)

 

冬季パラリンピックも同様で、自国開催のソルトレークシティー大会では、43個だったメダル数が4年後のトリノ大会では12個まで激減。

日本も冬季パラリンピックの長野大会では41個もメダルを取りましたが、その次のソルトレークシティー大会では3個、トリノ大会は9個でした。

 

これは、パラリンピック委員会や、各競技の連盟による持続的な強化育成がされていないために起こる現象で、残念ながら東京大会の後にも同様のことが起こる可能性があります。

東京大会を控え、パラアスリート採用を行う企業も増えていますが、東京大会終了後も現在と同じような支援を受けられるかはわかりません。

 

 

宣伝効果などを感じられない場合、契約を切る企業も出てくると思います。東京大会はパラスポーツ多くの人に理解してもらう最大のチャンスです。

 

東京大会を見て、パラスポーツをしてみたいと思う子どもも増えると思います。

そのために関係者、選手はあと2年間、パラスポーツの魅力や面白さを伝え、持続的な強化育成の体制作りをできるように期待したいと思います。

及川彩子

スポーツライターとしてNY在住10年。陸上、サッカー、ゴルフなどをメインに、オリンピック・パラリンピックスポーツを幅広く取材。



※こちらは、2018年10月5日に公開された記事です。内容は公開時のものとなります。

関連キーワード

関連トピックス

最新トピックス

RANKING人気のトピックス

アクセス数の多いコンテンツをランキング形式でお届け!