特集 競馬 凱旋門賞へ 期待のタイトルホルダー 生産者が語る強さ

競馬の世界最高峰のレース、凱旋門賞。出走を予定する日本馬の中で大きな期待を集めるのがタイトルホルダーだ。
初優勝へ。デビュー前に生産者を驚かせた豊富なスタミナを持ち味に日本馬が何度も跳ね返されてきた高い壁を越えられるか。
日本馬の“大将格”
ことし101回目を迎える凱旋門賞は10月2日、フランスのロンシャン競馬場の芝2400メートルで開催される。
日本馬は半世紀以上前からのべ29頭が挑戦し、これまでの最高成績は2着。
ことしは日本馬として悲願の初優勝を目指し、過去最多の4頭が出走を予定している。
なかでも日本の“大将格”とされるのがタイトルホルダー。
去年は3歳秋のクラシックレース、菊花賞を勝って初めてGⅠレースで優勝。
4歳となったことしは春の天皇賞、宝塚記念と2つのGⅠレースを制し、実力は日本の中長距離でトップクラスだ。
ことし春の天皇賞を制したタイトルホルダー
“これほどまでに仕事をするとは”
タイトルホルダーの生産牧場、北海道新ひだか町の「岡田スタッド」。
岡田牧雄代表は育成に加え、オーナーや調教師と相談して出走するレースを決めてきた。
フランスに渡ったタイトルホルダーの様子も映像で日々チェック。
これまでと異なる環境でも順調に過ごす様子に胸をなでおろしている。
岡田スタッドの代表を務める岡田牧雄さん
岡田さん
画面を通してですが、馬に活気がありますし青草をはんでいる姿を見ても本当に調子がいいんだなと見受けられます。いい結果を出してくれれば。
2018年2月10日に生まれたタイトルホルダー。
馬体は競走馬としては標準よりも小さかったという。
この年のサラブレッドの競り市「セレクトセール」でも父が同じ馬と比べても小さく、1億円を超える金額で競り落とされる馬もいる中、タイトルホルダーは2000万円のひと声で落札。
岡田代表は「これほどまでに仕事をしてくれる馬だとは思わなかった」と当時を振り返る。
驚かされたのは並外れた心肺機能
成長するにつれてタイトルホルダーが発揮してきたのが、母の血統で見られる豊富なスタミナだ。
「岡田スタッド」では広大な牧場で昼夜を通して長時間の放牧を行い、馬の基礎体力を養う。
牧場の周りに生息する多くの野生動物に警戒しなければならず、朝は疲れ切って立ち上がれない馬も多いという。
しかしタイトルホルダーはけがをしたり体力を落としたりすることなく放牧期間を終えた。
そして2歳となり、上り坂をある程度速いペースで調教をした時のことだった。
ほかの馬の呼吸が荒くなっているにもかかわらず、タイトルホルダーは疲れたそぶりを見せなかった。
もう1本同じ調教をしても様子は変わらない。その並外れた心肺機能は岡田代表を驚かせた。
潜在能力を発揮していったタイトルホルダー(生後2か月の時)
岡田さん
ケロッとしているんですよね。この馬は心肺機能、スタミナがほかの馬とは桁が違うなというのは、私だけじゃなくてうちのスタッフみんなが認識して。「長距離馬として育てたいね」とみんなで話して。
世界が驚くか?
その期待通り、タイトルホルダーはデビュー後、豊富なスタミナで逃げや先行から粘って最後までリードを譲らない走りを持ち味に日本トップクラスの馬に上り詰めた。
日本のGⅠレースで最も長い芝3200メートルの春の天皇賞ではスタート直後から飛び出してトップに立ち、2着の馬に7馬身差の圧勝。
芝2200メートルの宝塚記念ではハイペースの苦しい展開でも先行しレコードタイムで1着に入った。
岡田代表はスローペースになりやすい凱旋門賞でタイトルホルダーがスタートから飛び出し、世界中の競馬ファンを驚かせる姿を想像しながら笑みを浮かべた。
岡田さん
日本馬がいまだに勝てていないので甘いレースとは思っていませんが、タイトルホルダーのフットワークとか心肺機能などを加味するとやれていいんじゃないかなと希望的観測をしています。ゴールの200メートル、100メートル手前、先頭を走っている気がするので見てほしいですね。
この記事を書いた人

足立 隆門 記者
平成25年NHK入局。甲府局、山形局から地元の大阪局を経て、スポーツニュース部。30代半ばにして初の東京暮らし。