特集 北勝富士 “コツコツと”積み上げてきた稽古の自信

コツコツとやり続けること。同じことをずっと続けてきたので、それが星になって現れてきた。
取組のあと、好調の要因を問われ落ち着いた口調で応えた。
“コツコツと”自分を信じて稽古を続けてきた30歳は、今場所確かな手応えをつかんでいる。
序盤戦から三役以上の力士が続々と黒星を喫する中、着々と白星を伸ばしていた前頭8枚目の北勝富士。
9日目 若元春との取組
日体大時代は学生横綱に輝き、八角部屋に入ってからも貪欲に稽古に励んできた。
技能賞2回、獲得した金星は7つ、最高位は小結と実力者だが、おととし(R2)の春場所で大きく負け越して小結から陥落して以降、なかなか三役に復帰できずもどかしい日々を過ごしてきた。
それでも「また上位に戻る。自分の最高位を超える。そのために1場所1場所を大事にする」とめげずに稽古に励んだ。
しかし新型コロナウイルスの感染拡大の影響が広がった先場所。
千秋楽に自身の感染が確認され、無念の休場。
熱は39度を超え体重も数キロ落ちた。
それでも体調が回復するとすぐに稽古に戻った。
師匠の八角理事長も「真面目だ」と稽古熱心さを認める北勝富士。
「きつくて地味なことをコツコツやっていくことが僕の信条」と、夏の巡業に参加し時津風部屋と荒汐部屋に出稽古に行って上位力士たちの胸を借りた。
迎えた今場所、初日から白星を重ねて幕内通算500回の出場となった7日目は隆の勝との一番だった。
花道から土俵下に向かう際、額には汗がにじんでいる。
支度部屋でしっかりと体を作ってきたのだろう。
三役経験者を相手に持ち味の力強い押しと強烈なおっつけで攻め続けて押し出した。
ただ1人勝ちっぱなしとなった。
7日目 隆の勝との取組
自身初の初日から9連勝で迎えた10日目。
2敗の大関経験者、髙安との一番だった。
立ち合い、はずを攻めて相手の上体を起こしたかに見えたが攻め返されて押し倒された。
10日目 髙安との取組
連勝は止まり、初黒星。悔しさをにじませながらも前を向いた。
充実している感じが1日1日あったので悔しさがある。最後のところまではいい流れといい形でできていたので、調子がいいのは自分でもわかる。引きずらずに思い切りやりたい。
平幕力士が優勝争いを引っ張る秋場所。
真面目にコツコツと稽古を積んできた北勝富士が最後まで土俵を盛り上げるのか。
混とんの秋場所は終盤戦に入った。
この記事を書いた人

持井 俊哉 記者
平成26年NHK入局
北九州局を経て、スポーツニュース部。小1から剣道をはじめ、現在、5段。「打って反省、打たれて感謝」をモットーに何事にも謙虚に誠実にチャレンジすることを目指す。