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特集 ソフトバンク SNS戦略を担う仕事人 5つのルールとは?

野球 2022年9月20日(火) 午後6:15

プロ野球のパ・リーグで優勝争いを繰り広げているソフトバンクは、球団公式のツイッター、インスタグラムのフォロワーがリーグ6球団中トップです。そんな球団の広報戦略の中心にいるのがメディア戦略部の加藤和子さん。ファンにみずみずしい情報を届ける加藤さんの「5つのルール」とは?

加藤さんは福岡大学体育学部(当時)を卒業した後、民放のスポーツ番組のキャスターなどを経験しました。ソフトバンクが自社のメディアを立ち上げるにあたって、スカウトされ、2006年からソフトバンクのスタッフになりました。

ルール①速く届ける

試合直前の選手たちの円陣。輪の中で撮影しているのが加藤さんです。日替わりで選手が声を出し、チームの雰囲気を盛り上げる『儀式』。今では各球団、その様子を発信していますが、プロ野球のチームの公式戦の試合前の円陣を初めてSNSで発信したのはソフトバンクだということです。

加藤さんのルール、1つ目は速く届けることです。加藤さんは撮影を終えると、ベンチ裏のデスクへ直行し動画をみずから編集します。速さを追求しスマートフォン1台だけを駆使。作業はおよそ30分以内に行い、試合が始まるまでに投稿を終えるようにしています。

 

選手の間に入って撮影する加藤さん 画像提供:福岡ソフトバンクホークス

加藤さん

ホークスの円陣はすごく元気がいいので、ファンの方も一緒に戦っているような気持ちになってもらえるよう、すぐ届けられるようにしています。とにかく元気になるような言葉が多いので、それを前面に出せるようにテロップを強調してみたり、元気を届けられるような編集にしています。

ルール②目線の高さで

2つ目は、加藤さん自身の目線の高さで撮影することです。下の写真は試合に勝利し選手とハイタッチをする加藤さんです。目線の高さで撮影することで、選手と実際にハイタッチしているような雰囲気を感じることができます。

 

最初は撮ることに一生懸命で自分がその輪の中に入っていこうという思いでやっていたんですけど、ファンの方から「自分がそこに居るかのような気分になります」というコメントを頂きました。それからはしっかり意識するようになりました。ファンの方がその目線で選手とハイタッチをしている気分になってほしいですね。

ファンの意見を意識して生まれたルール。誰に何を届けたいのかがはっきりしているのが加藤さんの強みなのかも知れません。

ルール③厳選し素顔を

リーグトップの人気を集める球団のSNS。大きな理由の1つが試合前のトレーニング中などに撮りためた写真です。試合中とは違う選手たちの表情を切り取っています。

 

 

選手たちの素顔を引き出すために、数多く足を運び、膨大な映像資料を集め、これというものを選び取る。地道な努力が人気を支えています。

 

多い時は1日に500枚、600枚撮ります。その中から厳選した30枚をSNSにあげることになります。泣く泣くあげなかった写真もあるんですけど、もう毎日そんな感じです。

ルール④ありのままに 

加藤さんがソフトバンクで広報活動を始めたのは約17年前。当初は球団のホームページに載せる選手へのインタビューなどを担当していました。今では当たり前とも思われる〝取材活動〟ですが、苦労が絶えませんでした。選手は年上が多く、職場は女性が少ないという環境に苦しんだというのです。

 

画像提供:福岡ソフトバンクホークス

ずっと下ばかり向いていたと思います。居場所がわからなかった。どう動いたら迷惑にならないか、どう動かないといけないのかと考えすぎていました。

ついに、体調を崩しました。

頭に帯状ほう疹ができて、即入院となりました。気を遣いすぎていたと、そこで初めて気がつきました。少し気を遣うのをやめて、徐々に今のスタイル、いつも変わらない自分でいようと。

自分らしく、ありのままでいようと心に決めた加藤さん。周りの反応が変わってきたといいます。

自分自身が楽になって、選手と会話、質問を楽にできるようになったのは大きかったかも知れません。選手の方から「加藤さん」と言ってくれることが増えました。

 

時を経て、若い選手たちを中心に協力的な選手が増えてきたと感じています。相手や周りを気遣うことも大切ですが、真に良好なコミュニケーションは自然体であってこそだと加藤さんが気付かせてくれました。

ルール⑤最高の笑顔を

加藤さんの最後のルールは「最高の笑顔を」。過去6回のリーグ優勝を経験し、今回も何ができるのか、頭をひねる毎日です。

 

 

どうすれば、優勝の喜びをいきいきとファンに届けることができるのか。撮影や編集だけでなく、企画の提案も積極的に行ってその瞬間を待ちます。

優勝した瞬間の選手の笑顔っていうのがこの上なくいいんですよね、本当に。あの瞬間を見たときには「やっていてよかった」と本当に思いましたし、これを届けたい

ファンとの架け橋に

加藤さんが貫く5つのルール。その背景にあるのは「ファンとの架け橋になりたい」という強い思いです。

 

井上勲ブランド推進本部長(右)と話す加藤さん

加藤さんがソフトバンクに入った当時から知る上司は、多様なファンのニーズに応えるためのメディア戦略を進める上で、加藤さんの重要性を指摘します。

井上勲 ブランド推進本部長 
今までの経験値や選手との関係値があるので、彼女がそういうものを部署のみんなに展開していく役割をすごく期待しています。彼女がどういうものを撮って、僕らでどんな企画を出すのかをみんなで考えています。

加藤さん
ファンの方とホークスの架け橋でいたいと思います。時々ファン目線になる、時々チーム目線になる、というところを意識しています。よりホークスを好きになってくれる方が増えたらというのが今後の理想です。

 

この記事を書いた人

中村 成吾 記者

中村 成吾 記者

令和2年NHK入局。福岡局で警察担当を経て、プロ野球・ソフトバンクを取材。趣味はクラシック音楽をきくこと。

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