特集 逸ノ城 「優勝の責任」 三役定着、そして 大関を見据えて

秋場所初日。東京・両国の国技館では新たな優勝額の除幕式が行われた。
みずからの優勝額を前に「夢のようでうれしい」と感慨深く見守ったのが先場所、初優勝を果たした小結の逸ノ城だ。
新入幕から8年。関脇まで番付を上げた時もあったが、腰のけがにも悩まされ、その上をうかがう機会を得ることはできなかった。
「これまでは相手の相撲を考えすぎていた」と反省した先場所。
得意の形である左上手からの攻めを徹底し、横綱・照ノ富士らとの優勝争いを制して初めての賜杯を手にした。
そして今場所、西の小結に座り5場所ぶりに三役復帰。
「優勝したことでこれまでより責任がかなりある」と三役で自身初めてとなるふた桁勝利を目指す。
左上手からの攻めに対して対策を取られることを想定される中で、磨いてきたのが立ち合いでの踏み込み。
圧力をかけて相手を崩し、そこから左上手を取る稽古を繰り返してきた。
迎えた初日、相手は大関・貴景勝。
先場所はともに最終盤まで優勝争いを繰り広げた相手だ。
これまでの対戦成績では逸ノ城が7勝9敗と負け越していた。
注目の立ち合い。逸ノ城は稽古通り、深く踏み込んだ。
まわしは取れなかったものの、当たり勝ちしてその勢いのまま、圧力をかけて前に出た。
大関に何もさせずそのまま押し出して白星をつかんだ。
「速く当たって前に出ようと思っていた。思い通りにできてよかった」
立ち合いの手応えを口にした逸ノ城。
土俵際で取組を見た審判長の佐渡ヶ嶽親方も「立ち合いから体を使って攻めきった。あの巨体を使ってどんどん攻めてくるのは相手にとって一番いやな相撲だ」と逸ノ城の攻めをたたえた。
取組のあとの取材で優勝額について質問された逸ノ城。「1つだけで終わりたくない」と2回目の優勝に意欲を見せた。
みずからの相撲に自信を深めているようだった。目標とする三役定着、そしてその先に見据える大関昇進へ。
先場所の
優勝力士が好スタートを切った。
この記事を書いた人

足立 隆門 記者
平成25年NHK入局。甲府局、山形局から地元の大阪局を経て、スポーツニュース部。30代半ばにして初の東京暮らし。