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特集 新十両の栃武蔵 負けず嫌いの原点とは

相撲 2022年9月9日(金) 午後7:45

幼いころから培われた負けず嫌いの性格で稽古に励む新十両の栃武蔵。十両昇進は同学年のライバルに先に越されるも「幕内にはいちばん早く上がる」と秋場所に臨む。

初土俵から9場所で十両に昇進

春日野部屋の栃武蔵は西の幕下2枚目で臨んだ7月の名古屋場所。磨いてきた右四つの相撲を中心に5勝2敗の成績をあげた。去年の春場所に三段目100枚目格付け出しで初土俵を踏んでから9場所で十両に昇進。しこ名は菅野、改め栃武蔵。出身地の埼玉県にちなんでつけられた。

 

うれしい気持ちとこれからもっと稽古を頑張ってもっと強くなりたい。同学年がみんな(十両に)上がってきているのでいちばん早く幕内に上がれるように頑張ります。

大学2年で学生横綱 その後は…

昇進会見ではことばの端々で負けず嫌いの一面をのぞかせた栃武蔵。意識するのは学生のころからしのぎを削ってきた同学年のライバルたちの存在だ。中央大2年で臨んだ4年前の全国学生選手権。並み居る実力者を次々と倒し、2年生ながら学生横綱に輝いた。しかしおととし。最終学年の4年生で再び頂点を目指すも準々決勝で敗退。敗れた相手は同学年の日体大のデルゲルバヤル、現在十両の欧勝馬だった。角界入りしてからも欧勝馬や中央大相撲部同期の豪ノ山に十両昇進で先を越され悔しさを募らせてきた。

 

ずっと一緒に練習してきた仲間だったので(十両昇進は)うれしい気持ちもあったんですけど、それ以上に悔しい気持ちがありました。自分がどんどん練習して強くならないといけないと思いました。

負けず嫌いの原点は幼少期に

みずからを「人一倍負けず嫌い」と語る栃武蔵。その原点は幼少期にあった。7人きょうだいの末っ子で幼いころから年上の兄たちに負けまいと何でも競い合ってきた。

           家族写真(栃武蔵は真ん中下)※家族提供

よくけんかとかしていましたね。でも年上だとなかなか勝てないので。そういうころで競争心というか、負けたくない気持ちがついたのかなと。

もともとは野球少年だった栃武蔵。小学4年で相撲を始めると1対1の勝負の厳しさとおもしろさにのめり込んだ。ただ所属した相撲クラブには同学年で1人強い相手がいた。なかなか勝てず、ずっと2番手だったという。小中学生時代、指導にあたった西澤正夫さんは「もっと強くなりたい」と稽古に励む姿を懐かしみながら当時の思い出を語った。

 

栃武蔵を指導した西澤さん

西澤さん

彼は稽古でのつらさよりも負けたことによる悔しさで涙を流していましたね。2番手だったがめげずにやっていました。ふだんの稽古でも負け続けているといやだなと思うものですが、やり続けました。そこがすごいところですよね。口には出していないが強くなりたいという信念は感じていましたし、身近な存在に勝ちたいという思いが今に結びついていると思います。

ライバルたちが待つ十両の土俵へ

いま栃武蔵を突き動かしているのは同学年のライバルの中で幕内にいちばん早く上がるという強い気持ち。稽古では得意の左上手を取る相撲に磨きをかける。十両昇進時にも“悔しい”と語る負けん気を胸に秋場所、ライバルたちが待つ十両の土俵に臨む。

大関・御嶽海の胸を借りて稽古する栃武蔵

土俵に上がったら全力で倒しにいく。全力で勝ちに行く。ここからが勝負なのでいちばん早く幕内に上がれるようにまずは全勝優勝を目指して頑張りたいです。

 

この記事を書いた人

持井 俊哉 記者

持井 俊哉 記者

平成26年NHK入局

北九州局を経て、スポーツニュース部。小1から剣道をはじめ、現在、5段。「打って反省、打たれて感謝」をモットーに何事にも謙虚に誠実にチャレンジすることを目指す。

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