特集 北の富士勝昭が斬る 大相撲秋場所 注目はこの力士!

逸ノ城 秋場所はチャンスを生かし大関を目指せ
逸ノ城の初優勝は立派であった。文句なしの賜盃だった。立ち合いの踏み込みは速かったし、体も前傾になって攻めていて押されることがなかった。やはり、左上手を取ったらめっぽう強い。あの大きな体で一つの型を持っているのが強みだ。
名古屋場所で初優勝し、賜杯を授与される逸ノ城
秋場所は相手もいろいろ考えてくるだろうが、今さらほかの相撲を取ろうという気はないだろう。横綱を除けば天敵という相手も特にいない。秋場所はチャンスを生かしてもらいたい。年齢的にもこれが最後と思って大関を目指してほしい。
正代 立ち合いが変わり相撲も変わった 徹底してやればまだ遅くはない
正代はカド番の場所で序盤1勝4敗。誰もがもうだめかと思ったことだろう。それが、終わってみれば10勝だ。場所の後半にすれ違った時に「もっと早く力を出さんかい」と声を掛けると「すみません」と言っていたが、やはり、立ち合いが変わると相撲ぶりもガラリと変わった。それを徹底してやれば、年齢的にもまだ遅くはないだろう。幸い、大きなけがもない。
正代が引き落としで照ノ富士を破る(名古屋場所14日目)
場所中に白鵬(宮城野親方)から「出番前にもっと汗をかけ」とアドバイスされたのが立ち直ったきっかけらしい。いずれにしろ続けることだ。簡単なことだし、忘れずにやれば秋場所は初日からしっかり相撲が取れるだろう。
豊昇龍がいちばんの大関候補 霧馬山は化けるかもしれない
大関とりは、豊昇龍あたりが一気にチャンスをつかむかもしれない。新小結に昇進して以来、ずっと地位を守っているのはたいしたもの。前半が悪くても8番、9番と勝つのだから地力はある。これからだろう。これといった型はないが、それでも勝つというのは相撲勘もいいということだ。次期大関候補と言われる力士は何人かいるが、将来性も含めてトータルすると豊昇龍が私はいちばんと見た。
豊昇龍の幕内土俵入り(名古屋場所2日目)
霧馬山もなかなか魅力的な力士だ。左を取ると力を発揮するが、最初は単なるしぶとくて面白い力士だと思って見ていたが、相撲がだんだんうまくなってきた。さらに化けるかもしれない。
霧馬山(左)が寄り切りで貴景勝に勝つ(名古屋場所初日)
錦富士 思った以上のいい相撲ぶり 十両の熱海富士もよく頑張った
新入幕の錦富士は不戦勝が3つあったものの、思った以上のいい相撲ぶりだった。体はそれほど大きくないが、相撲を取りやすそうな体をしている。錦富士を含め、伊勢ケ濱部屋に相撲巧者が多いのは師匠が熱心だからだろうか。
錦富士は敢闘賞を受賞(名古屋場所千秋楽)
十両の熱海富士もよく頑張っていた。いい相撲も少なくなかったが、下がるとバタバタとするところがある。立ち合いもじっくり行き過ぎるというか、相手に合わせ過ぎるようにも思える。まだ19歳だし、勝ち越しただけでもたいしたものだ。伸びしろは十分だ。
相撲専門雑誌「NHK G-Media大相撲中継」から
稽古で照ノ富士(右)に指導を受ける熱海富士(8月30日)