特集 錦木 幕内で自己最速の勝ち越し 松鳳山の思いを胸に 大相撲名古屋場所

混戦の名古屋場所、31歳の錦木が連日、土俵を盛り上げている。その胸には場所前に引退を発表した同期入門の松鳳山の存在があった。
引退会見の松鳳山(2022年6月28日撮影)
土俵を降りるとめがねをかけた姿が印象的な錦木。
平成18年春場所で元小結・松鳳山の松谷裕也さんなどとともに初土俵を踏んだ。錦木の方が学年は7つ下だが、同期生として一緒に稽古したり、食事に行ったりして親交を深めた。その松鳳山が名古屋場所を前に引退を発表。すぐに電話で連絡を取った。そのときの思いについて。
錦木
残ってやるのかなと思っていたので寂しいですね。ニュースを見て、すぐ連絡したが、引退会見で『相撲を取るのが怖くなった』と言っているのを聞いて、それはしかたないと。『お前はがんばれよ』と言ってくれた。
努力の人だった松鳳山に負けず劣らず、努力を重ねてきた錦木。今場所は松鳳山のしこ名が入った浴衣を着て会場を行き来している。
松鳳山のしこ名が入った浴衣を着る錦木
その松鳳山からも「頑張れ同期生!」とエールを送られていた。
名古屋場所4日目 錦木(左)が押し出しで碧山(右)を破り初日から4連勝
初日から4連勝と勢いに乗るも5日目から2連敗。
名古屋場所6日目 翔猿(右)が下手投げで錦木(左)を破る 錦木は5日目から2連敗
それでも「上体が高くなって自分の悪いところが出たのが敗因。しっかりと前に出ることを意識して連敗を止めたい」と反省と切り替えを心がけた。
そして、7日目から3連勝と再び息を吹き返し迎えた10日目。自己最速の勝ち越しがかかる一番は、体が柔らかくスピードもある千代翔馬との対戦だった。先に踏み込んできた千代翔馬にまわしを取られたが引いたところをすかさず押し込み勝負を決めた。
名古屋場所10日目 錦木が押し出しで千代翔馬を破り勝ち越し
2敗の力士で1番先に取組があったため、今場所の幕内勝ち越し一番乗りに。松鳳山は、すぐに自身のSNSで「幕内勝ち越し第一号!おめでとう!」と祝福してくれた。
八角理事長も「とにかく一生懸命稽古をする。巡業でも必ず土俵に立っている。地道な努力がようやく出てきた」とひたむきな姿勢を評価した。
錦木
松鳳山に、いい姿を見せられてよかった。ふた桁勝利を目指したい。
好調の理由を尋ねると宿舎で「毎日お酒を飲んでいるから」と語る錦木。ひたむきな努力と、オンとオフを切り替えて自分のスタイルを貫く姿勢。そして、松鳳山のエールを背に後半戦の土俵に挑む。
この記事を書いた人

持井 俊哉 記者
平成26年NHK入局
北九州局を経て、スポーツニュース部。小1から剣道をはじめ、現在、5段。「打って反省、打たれて感謝」をモットーに何事にも謙虚に誠実にチャレンジすることを目指す。