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特集 “鉄人” 玉鷲「通算出場記録の目標は決めていない。お客さんが楽しんでくれれば」大相撲名古屋場所を前に

相撲 2022年7月8日(金) 午後2:00

玉鷲は夏場所で3場所連続の金星を獲得しました。また初土俵からの無休の通算連続出場記録は高見山を抜いて史上4位の1426回を達成し、さらに更新中です。37歳、相撲界の“鉄人”玉鷲を刈屋富士雄元NHKアナウンサーがインタビュー、金星獲得や出場記録達成について聞きました。

 

終始笑顔で対談の玉鷲関と刈屋元アナウンサー

通算連続出場1246回も「まだまだ弱い」

夏場所5日目  御嶽海を攻める玉鷲

――ことし11月に38歳になりますね。「40歳まで現役」と周りによく言われるでしょう。

 

45歳までいけるだろうと言われています(笑)。でも相撲が悪くなったらだめです。自分の相撲が取れなくなったらやめます。年齢や出場記録の目標は決めていません。目標を決めると場所をこなすようになってしまいます。

 

――年齢や記録の数字にはこだわっていないのですね。

 

最近は同期がみんな親方になっていて、「早く親方になれよ」と言っています(笑)。

 

――日本国籍の取得はどうなっていますか。

 

今、申請中です。親方になりたい人は大勢いますね。先のことは考えていません。大切なのは今をどうするかです。生き生きしてやっています。

 

――連続出場記録が高見山さんを超えたときは、周りから言われて「あの高見山さんを超えた」と思ったのですか。

 

相手が強い力士だったのにあっさり勝ったときには、「どういう気持ちですか」と聞かれても、答えに困ることがあります。それと同じです。その日、聞かれて何というか困りました。お相撲さんがよく使う「そうですね」という言葉しかなかったです(笑)。

 

――外国から来たすごい記録を残した人を抜いたことは分かっていたと思います。

 

そうですね。そういう気持ちはだんだん湧いてきました。でも1426回の勝ち方、私はまだまだ弱いほうです。高見山さんはもっとお客さんを沸かせたと思います。

照ノ富士戦、あっさり勝って「あれ、勝っちゃった」

夏場所6日目 照ノ富士から3場所連続の金星を挙げる

――照ノ富士戦の3場所連続金星を伺います。同じ相手から3場所連続金星は実に57年ぶりのことです。

 

あの日、あっさりと勝って、自分でも「あれ、勝っちゃった」と思いました。もっとこうきたらこういくと組み立てていました。「あれ」は横綱に失礼ですね。

 

――横綱の相撲は相当研究していましたか。

 

まあ研究というよりも、最後は自分の相撲だと思います。でも次はどう取ろうかと考えています。立ち合いで張ってくるだろうと思っていました。師匠(元関脇玉春日の片男波親方)からも「張られても先に攻めろ」と言われていました。

鬼でないと大関になれない 家族が大事で鬼になれなかった

平成31年初場所で賜盃を抱く玉鷲

――平成31年初場所は関脇で優勝しています。優勝したときには大関ということは考えませんでしたか。

 

一切考えませんでした。大関はすごい地位です。私はそんな力士ではないと思いました。

 

――関脇で優勝したので、周りから「次は大関」と言われませんでしたか。

 

大関は鬼にならなければなれないです。家庭でも鬼にならなければいけませんが、家族を大事にするため大関になれないと思いました。

両国でお相撲さんに会わなければ入門していない

2007年11月 新十両となり部屋の前でガッツポーズする玉鷲

――いろいろ言われている話が本当かどうか伺いたいのですが、東大の大学院にいたお姉さんと両国に来て、お相撲さんについていって入門したという話ですね。

 

そうですね。自転車に乗っているお相撲さんについていったら、ちょうど相撲部屋で子どもたちがわんぱく相撲の稽古をしていました。それが井筒部屋でした。当時幕下の鶴竜関が出てきて話をして、片男波部屋に入門することになりました。両国でお相撲さんに会わなければ入門していなかったと思います。

子育ては当たり前 子どもたちには自分と違う人生を

――いちばん楽しい趣味は何ですか。昔はクッキーを焼いたりしていましたね。

 

それはいつもやっているからもう、趣味ではないです。最近は手芸もできないです。子どもが小さいので針が危ないです。

 

――子育てをかなり手伝っていると聞いていますが。

 

手伝うというよりも、やらなければいけないことだと思います。当たり前のことです。家のドアを開けたときから「パパ」です。

 

7月5日  稽古で力士2人を同時に相手する玉鷲(中央)

――お子さんはいくつですか。

 

男の子2人ですが、上が6歳で、下が3歳です。

 

――相撲をやらせますか。

 

力士にはさせたくないです。力士は厳しい世界です。子どもたちには自分と違う人生を過ごしてほしいです。

 

――関取は記録よりも一番一番楽しくやっていくということですね。

 

はい。それでどこまで行くか。見ているお客さんが楽しんでくれればいいです。お客さんをがっかりさせる相撲を取ったらやめます。


相撲専門雑誌「NHK G-Media大相撲中継」から

 

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