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特集 プロ野球 阪神 青柳晃洋投手 “真のエース”を目指して

野球 2022年6月27日(月) 午後4:10

「野球だけうまければいいというのがエースではない」。阪神の青柳晃洋投手が理想とする“エース像”です。シーズン序盤にどん底を味わったチームを、プレーでもプレー以外でも引っ張り“真のエース”へと成長を遂げようとしています。

新型コロナで出遅れも好投

6月17日 DeNA戦  6回4失点で8勝目を挙げた青柳晃洋投手

昨シーズン、最多勝と最高勝率のタイトルを獲得した青柳投手。今シーズンは開幕投手に内定していましたが、その後新型コロナウイルスに感染。開幕を2軍で迎えざるを得ませんでした。それでも4月中旬に復帰してからここまで8勝、防御率1.49と、いずれもリーグトップの成績を残し、開幕直後に大不振に陥ったチームを立て直す活躍を見せました。(※記録は6月24日現在。)

青柳 投手 

出遅れたことはすごく残念だったし、正直本当に悔しい部分もあったが、切り替えは早かった。復帰してからはなんとかチームに貢献できているかなと思う。

好投の要因は“球種増”

 

好投の要因は今シーズンに合わせて球種を増やし、ピッチングの幅を広げたことです。もともとは右バッターのインコースに食い込む140キロ台のツーシームと、大きく曲がるスライダーを中心に配球を組み立ててきました。しかし、去年タイトル獲得したことで、相手の対策も進むことを見越し、これまで公式戦ではあまり投げていなかったカーブやカットボール、ストレートを重点的に練習。オープン戦では得意のツーシームとスライダーをあえて封印して、キャンプで磨いた球種を試すなど、徹底して変化を求めてきました。

 

4月15日の巨人戦に先発

その成果が発揮された試合が、今シーズン初登板となった4月15日の巨人戦でした。1点リードの6回、同点のピンチで迎えたのは坂本勇人選手。「去年まであまり打たれていなかった」という相手に、この試合は2打席連続でツーシームをヒットにされていました。試合を左右するこの場面で、青柳投手が2球目に投げたのが、この試合で初めて使ったカーブ。緩急を活かして坂本選手を浅いセンターフライに打ち取り白星をつかみました。多彩な攻めが出来るようなったことが抜群の安定感につながっていると考えています。

 

6回を投げ終え、笑顔でベンチに戻る青柳投手

青柳 投手

昨シーズン後半は苦しい試合が多くなったし、圧倒的なボールを投げられるわけではないので、成長しなかったらいい成績を残せないと感じていた。練習してきたことが結果に結びついてすごく自信になったし、やってきたことは現段階では間違いではなかった。

目指す“エース像”とは

 

昨シーズンのタイトル獲得に加え、ことしはチームの苦境を救う活躍に、チームメートやファンからは“エース”と呼ばれ始めた青柳投手。しかし、本人は「エースにはまだまだ」と謙虚な姿勢を崩しません。その理由はみずからの理想像にありました。

青柳 投手

ちょっと勝ったからエースというのは違うと思っているし、野球だけうまければいいというのがエースではない。

プレー以外でもチームを引っ張るのが青柳投手の目指す“エース”。その思いを強くしたのが去年、日本代表として金メダルを獲得した東京オリンピックでした。

 

東京オリンピックの金メダルを手に記念撮影する日本投手陣(青柳投手は後列右から3人目)

個人としては思うようなピッチングをできなかったことに悔しさを感じながらも「人生初」という優勝を経験。阪神でも優勝するためには、中心となってチームを1つにしていくことが大切だと感じました。

青柳 投手

『優勝はいいな、すごいな』と体験できたからこそ、1年間、一緒にやっているメンバーで優勝できたらもっといいものだと思った。『いいチームでいたい、いいチームの一員でいたい』という気持ちが強くなった。

ベンチでは率先して味方を鼓舞

 

“いいチーム”にしていくために、いま、ひときわ目立つのがベンチを盛り上げる姿です。

 

青柳投手は開幕直後は新型コロナでチームを離脱していたため、テレビで1軍の試合を観戦していました。この時、画面に映し出されるチームメートを見て「元気がないし、野球がつまらなさそう」と感じ、チャンスでも一丸となって攻める気持ちが見えないことに危機感を覚えました。そこで復帰後はベンチの最前列に座って、プレー1つ1つに声援を送って味方を鼓舞。得点が入ると真っ先にベンチを飛び出して喜びをあらわにするなど、チームを盛り上げています。

青柳 投手

落ち込むんじゃなくて『やったろ、やったろ』という気持ちを出せるように、意識的にベンチで声を出すようにやっている。最後までみんなで元気よく全員で戦うぞという気持ちは持ちたい。

後輩の成長も手助け

後輩の西純矢投手(左)と話す青柳投手

ことしは若手にアドバイスをすることも増えました。きっかけは2軍での調整中に「自分より才能があるのにもったいない選手がいっぱいいる」と感じたことでした。先発ローテーションに定着しつつある3年目の西純矢投手には「7割の力で力まず投げろ」と助言。ことしドラフト1位で入団した19歳の森木大智投手にはキャッチボールの時からボールの回転を意識して投げるようにアドバイスしました。

 

青柳投手は甲子園の出場経験はなく、大学卒業後にドラフト5位で入団。そこからはい上がって去年プロ6年目で初めてタイトルを獲得しました。「もともとエリートではない」という自分の経験を後輩に伝えることで成長の糧にしてほしいと考えています。

 

青柳 投手

先発ローテーションのピッチャーには若手から話しかけづらいが、僕もまだ28歳なので、フラットに来てほしいなと思って話している。チーム自体が強くなるんだったら少しでもヒントになれば。

優勝の先に見すえるエースの姿

今シーズン個人として掲げる目標は「15勝」。そしてチームの中心として最後まで優勝を諦めない姿勢を見せること。プレーでもプレー以外でもチームを引っ張るその先に「真のエース」が見えてくると考えています。

 

青柳 投手

チームメートからの評価も大事だと思うし、監督やコーチの信頼を得てエースになると思う。ことし終わってみてエースという立ち位置に近づけたらいいかなと思っている。

この記事を書いた人

足立 隆門 記者

足立 隆門 記者

平成25年NHK入局。大阪府出身。
甲府局、山形局を経て大阪局。阪神担当。

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