特集 プロ野球 ロッテ 髙部瑛斗選手 誰かの力になれる選手に

プロ野球・ロッテで今シーズン、レギュラーを勝ち取り、シュアなバッティングでヒットを重ね、俊足を飛ばしてグラウンドを駆け回りファンを魅了している選手がいます。24歳の髙部瑛斗選手。理想とするのは誰かの力になれる選手です。
キャンプ地 石垣島で見た思いやり
5月20日 ソフトバンク戦でタイムリーを放つ髙部瑛斗選手
昨シーズンのオフからロッテ担当になった私が、初めて髙部選手を見たのは、キャンプインを翌日に控えた石垣島での合同自主トレーニングの時でした。
自主トレーニングやキャンプでは野球経験のある地元の高校生や大学生などのスタッフが練習の手伝いをします。この日、髙部選手にトスをあげる担当になったスタッフは緊張からか、まともなボールをあげることができません。すると髙部選手は「あせらなくて良いから」などと1球ごとに声をかけ、いいボールが来るようになると「ナイスボール」などと声をかけ続けました。そして、練習を終えたあとも、謝る大学生に対し「大丈夫。良いボールになってきてたから。また今度よろしく」と言葉をかけていました。思いやりのある選手だなという印象を持ちました。
オープン戦で勢いに 開幕先発メンバーの座を勝ち取る
2019年 入団記者会見 髙部選手(前列左)と佐々木朗希投手(前列中央)
3年目の髙部瑛斗選手。国士舘大からドラフト3位でロッテに入団しました。佐々木朗希投手とは同期入団です。
持ち味はシュアなバッティングと俊足。去年まで2シーズンは2軍で3割を超える打率を残しましたが、1軍の出場は合わせて38試合にとどまりました。
3月15日 広島とのオープン戦で打撃の好調ぶりをアピール
今シーズンは石垣島でのキャンプを順調に終えると、オープン戦では持ち味を発揮。12球団トップの打率は3割9分3厘をマークし、盗塁も5個でトップタイ。プロ3年目で初めて、開幕戦の先発メンバーの座を勝ち取りました。シーズン開幕前日、髙部選手は、強い決意を述べていました。
髙部 選手
オープン戦でアピールできて、開幕を迎えられたので、なんとか1日1日、結果を求めて頑張っていきたい。持ち味である走攻守そろってこその僕だと思うので、全部の部分でチームに貢献したい。
シーズンでも活躍を持続
髙部選手が開幕を勝ち取ったのは1番・レフト。不動の1番打者として活躍した荻野貴司選手がけがで出遅れる中、その不在を感じさせない活躍を見せました。去年から体重を6キロ増やし、力強さを増したというスイングでヒットを重ね、結果的に凡打で終わった打席でも、粘って相手投手に球数を投げさせるなど内容の濃い打席が目立ちます。
さらに塁に出るとすかさず次の塁を狙い、グラウンドを駆け回ります。主に1番バッターとしてチームでただ1人全試合出場を続け、安打数はリーグ2位の72安打。盗塁の数は、12球団トップの22個をマークしています。(※データは6月21日時点)。
髙部 選手
スタメンで全試合出させていただいて、充実感はあります。もちろん数字など、足りない部分も多くあるので、そこはこれから積み上げていこうと思います。去年までは、打撃が大きな課題で、ことしも納得はいってないですけど、去年よりは内容も結果も出せているので、もっと良いものをだせると思って努力していきたい。
弟の存在 今でも見守ってくれている
ヒットを重ねる髙部選手の胸には、弟・春斗さんの存在があります。急性白血病で平成28年に16歳という若さで亡くなりました。髙部選手は病と闘う春斗さんを励ますため、2つのことを誓いました。その1つが甲子園出場。もう1つがプロ野球選手になるという約束でした。甲子園出場については約束を果たし、プレーしている姿を見せることができましたが、髙部選手が大学1年の秋に春斗さんは亡くなったため、プロ野球選手となった姿を見せることはできませんでした。
髙部 選手
弟は野球のことは、よくわからなかったけど、今でも見守ってくれていると思う。
そう信じてプレーをしています。
目標とする選手像
髙部選手はプロ入りの際、1安打につき1万円を白血病患者の支援基金に寄付すること。そして2000本安打という高い目標を掲げました。誰かの力になれる選手に。髙部選手が理想とする選手像です。
髙部 選手
僕がプロの世界に入ったのも、病気の方を元気づけたいと思ったのがきっかけですし、人に元気を与えられるような、目指してもらえるような選手になるということを、ずっと思っているので、子供たちに夢を与えられるような選手になれたらなと思います。