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特集 プロ野球 DeNA 伊勢大夢投手 “バッターの呼吸と勝負”

野球 2022年6月23日(木) 午後3:10

DeNAの伊勢大夢投手。3年目の今シーズンはリリーフとして開幕から21試合連続無失点で抑えるなど好投を続け、勝ちパターンに定着しました。好調の要因について“バッターの呼吸と勝負できている”と明かしてくれました。

安定した投球が続く

4月6日 阪神戦  今季初勝利を挙げた伊勢大夢投手

プロ3年目の伊勢投手は、150キロを超える速球とキレのあるフォークボール、それにスライダーを武器に開幕から21試合無失点で抑えるなどここまでチーム最多の31試合に登板し、防御率は0.59。今やチームになくてはならない戦力となっています。(※記録は6月21日時点)

過程と結果が結びつかず苦悩

2020年10月10日 阪神戦  5回から登板し2回無失点でプロ初勝利

ルーキーイヤーのおととしは中継ぎとして33試合に登板し、防御率1.80。昨シーズンは39試合で防御率2.80の成績を残しましたが、納得のいく投球ができていなかったといいます。

伊勢 投手

狙って三振が取れず、粘られた末に、なんとなく三振が取れていた。だから自分の中で気持ち悪さがありながらマウンドを降りていたが、奪三振率は、なんとなくついてきていて。成績を残せた理由がみつからなかった。

名伯楽との出会い

確固たる自信がないなか、迎えた春のキャンプ。伊勢投手は、今シーズンから加入した小谷正勝コーチングアドバイザー(77)から、あることばをかけられたといいます。

伊勢 投手

小谷さんから『考えて投げすぎている。頭は使わなくていいから体にフォームをしみこませろ』と言っていただいた。たしかに考えすぎてやりがちだったので、やってみようと。

 

DeNA投手コーチ時代の小谷正勝さん(2004年撮影)

小谷さんはDeNAの前身の横浜と大リーグで活躍した佐々木主浩さんなどを育てた名伯楽で、その卓越した指導力をかわれ、4球団で通算40年にわたってコーチを務めてきました。その小谷さんのアドバイスをもとに伊勢投手は、キャンプ第3クールの2月13日に150球の投げ込みを敢行。無心で投げていくうちに踏み込む左足を軸に体を回転させれば、体のブレも少なくスムーズに投げられる、安定した投球フォームの感覚をつかみました。

制球向上で打者の呼吸と勝負できるように

5月20日 ヤクルト戦  7回から登板し1イニングを無失点

安定した投球フォームを習得したことで、コントロールの精度が増したという伊勢投手。今シーズンのフォアボールは申告敬遠を抜けばたった5つ。中でも5月は13試合に登板して1つのフォアボールも出さないピッチングをみせました。このコントロールの向上により自分にばかり向かっていた気持ちのベクトルに変化が生まれました。

伊勢 投手

去年までは自分のことばかり考えていて、正直、相手が強打者なのか打率の低いバッターなのか、そこまで頭が回っていなかった。それがことしは、コントロールが安定したことで頭がクリアになり、バッターの呼吸だったり構えだったり、そういうものが見えだした。

“バッターの呼吸と勝負できている”

 

そのことを実感したのが、ことし5月3日と4日に横浜スタジアムで行われた中日との試合。いずれも1イニングを投げ、本調子ではなかったものの1本のヒットも打たれませんでした。

伊勢 投手

調子が悪くてもバッターを見て、タイミングが合いそうだなと感じれば、クイックで投げてタイミングをずらしてみたりできた。自分ではなく相手が見えだしたと感じたし、自分へのアプローチをやめてみて、よくなった。

信頼を積み重ね、抑えに

 

「自分」ではなく「相手」を見て勝負できている今シーズン。まずは今の立場を確立していき、いずれは目標でもある抑えのポジションへの足がかりとしていきたいと考えています。

伊勢 投手

今チームで一番投げているので、それを継続して最後までチームで一番投げる投手になりたい。その上で、もし抑えのポジションが抜けたときに選ばれるように信頼度を積み重ねていきたい。

 

この記事を書いた人

阿久根 駿介 記者

阿久根 駿介 記者

平成25年NHK入局。福岡局、津局、札幌局を経てスポーツニュース部。DeNA担当。物心ついたころから大学まで野球一筋。ポジションは投手。

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