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特集 プロ野球 中日 根尾昂選手 投手転向 4年目の決断

野球 2022年6月21日(火) 午後5:50

「野手から投手への転向」。4年前、甲子園を沸かせたスターは大きな決断をした。中日ファンの期待を一身に集める根尾昂選手の異例の決断の背景、そして投手としての可能性を探った。

投手転向の背景

根尾選手は、今シーズン、外野手としてスタートを切った。打撃力を生かすためという首脳陣の決断で、キャンプ中は外野守備の特訓に汗を流す姿が印象的だった。それが、開幕2か月足らずでショートに再転向、そして6月、なんと「投手転向」が発表されたのだ。

 

2月の沖縄キャンプ  ブルペンで投球練習を行った根尾昂選手

その予兆は、実はキャンプ中にあった。沖縄での春のキャンプ。ある日、根尾選手や石川昂弥選手など、若手4人が突然ブルペンにやってきた。立浪監督は「気分転換に」と言い、報道陣へのサービスなのだろうかとさえ思ったが、いま考えると“投手根尾”を見据えた上でのピッチング練習だったのだろう。

 

立浪監督と根尾選手は、転向の経緯をそれぞれこう振り返る。

立浪 監督

いろいろ見ながら判断して、本人とも話をして決断した。いろんな見方はあると思うがあとはピッチャーで大成していけるようにわれわれもサポートする。そんなに甘いものではないと本人にも伝えている。将来的には先発で投げるピッチャーになるよう期待をこめて本人もチャレンジしたいと言うことなので、しっかりやっていきたい。

根尾選手は…。

 

根尾 選手

昨シーズンの終わりから話しをさせていただいていたので、このタイミングになったかという感じです。高校3年生までやっていたが、プロ野球ではまだピッチャー1年目なんで、そこはゼロからの気持ちで、吸収できるところは吸収してやっていきたい。

“異例中の異例”の決断

ドラゴンズの先輩であり、根尾選手の母校・大阪桐蔭高校の先輩でもあるNHK野球解説の今中慎二さんは、今回の転向をこう表現した。

 

今中 さん

シーズン中に異例中の異例でしょうね。

その上で…。

今中 さん

野手の筋力と投手の筋力は違うと感じている。話し合った結果がピッチャーというようになったら、とことんピッチャーに向かってしっかりやるべきだ。

前例の少ない野手から投手へのコンバート。投手になる以上、正面からピッチングに向き合うことが大切だと、「投手としての覚悟」を求めた。

“根尾投手としての今後”

 

さらに、根尾選手が目指すべき投手像を聞いてみた。

今中 さん

たしかに150キロというスピードは魅力かもしれないですけど、今のプロ野球、150キロは普通ぐらいのレベルに達しています。みんな求めるものは非常に高いです。細かなことはたぶんできないと思いますから、とことんストレートで、バッターが分かってても抑えられるだけのストレートを求めていくことでしょうね。

そのためにも、焦らないこと、2軍からのスタートも含めて、再スタートを切ることが大事だとアドバイスを送った。

 

今中 さん

一番やっちゃいけないのは、けがをすること。何でもかんでも精いっぱいやってしまうと当然オーバーワークになりますから、まずはいったん、緊張感の中から解放してあげるというのもいまは必要じゃないかなと思う。

先輩としての愛情を感じるインタビューだった。

転向後、本拠地初の登板

6月19日 巨人戦の9回に本拠地初登板

今月(6月)19日。根尾選手は投手転向後初めてのマウンドに上がった。負け試合の9回ツーアウトからだったが、「ピッチャー、根尾」とコールされると3万人を超える本拠地のファンからは地響きのような歓声が上がった。

 

巨人の岡本選手を空振り三振に打ち取った

打席には、巨人の4番・岡本和真。初球は149キロの速球でストライクを取り、その後スライダーで追い込むと、4球目は自己最速の151キロで勝負した。そこはわずかに外れたが、5球目に高めの速球で空振りを奪い三振に打ち取った。思わず笑みがこぼれた。

 

その後、打席がまわってくる。「二刀流」の活躍を期待するファンにとっては、たまらない瞬間だったが、ここは三振に倒れた。それほど甘い世界ではないことを、根尾選手自身も感じたと思う。

 

それでも根尾選手は目標を高く掲げている。

 

根尾 選手

もちろんもっと打ちたいという気持ちはありますし、投げたいという気持ちもあります。中途半端だと言われようが、ピッチャーで投げる機会があれば打席に立つ機会もあるので。過去に内野手や野手から投手になった例がないというのは聞いてはいるんですけど、僕は僕なんでどこでプレーをしようと、自分の目標に向かってしっかり取り組んでいきたい。

 

期待と不安が入り交じる異例の投手転向。再スタートを切った根尾選手が、どんな投手に成長するか、いつの日か大谷翔平選手のように「二刀流」と言える日が来るのか、夢は膨らむ。しかし、現実はまだ1歩目を踏み出したところだ。

この記事を書いた人

竹内 啓貴 記者

竹内 啓貴 記者

平成27年NHK入局

横浜局、沖縄局を経て、名古屋局で中日ドラゴンズを担当。

高校時代は愛知・中京大中京高校のメンバーとして春夏あわせて3回甲子園に出場。

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