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特集 プロ野球 巨人の抑え 大勢投手 わかっていても打てないストレートを目指して

野球 2022年6月15日(水) 午前10:55

「プロのバッターが打てないストレート」

 

自分の理想像を語った大勢投手。両リーグトップの※21セーブをマークしている平成11年生まれの22歳が名前をあげたのは昭和の巨人で活躍したある大先輩でした。

※データは6月12日時点。

巨人の9回は新人・大勢

3月25日 中日戦 9回に登板しプロ初セーブを挙げた大勢投手

今シーズンの巨人の9回を任されているのは大勢投手。関西国際大からドラフト1位で入団し、原辰徳監督の提案で巨人では異例とも言える名字ではなく名前が登録名となりました。話題になったのは登録名だけではありません。

 

うなるような剛速球を持ち味にオープン戦で結果を出し抑えの座をつかみ取ると開幕戦でデビューを果たし、初セーブをマーク。その後も結果を出し続けて、球団の新人最多セーブ記録を44年ぶりに更新し、現在、両リーグトップの※21セーブを挙げています。

 

4月13日 球団新人最多セーブ記録を達成 記念のボードを掲げる大勢投手

大勢 投手

自分が登板するときは大事な場面。信頼や結果が絶対に必要なのでこれからも任せてもらえるようなピッチャーになっていきたい。

目指すストレートは

信頼される抑えになるため最大の持ち味であるストレートの質をさらに高めたいと考えている大勢投手。目指しているのは、大学生の時に動画を見て衝撃を受けたという、ある投手のストレートでした。

大勢 投手

江川卓さんです。江川卓さんのストレートが自分の中で一番、理想。力感はないけど伸びがすごくてプロ野球選手がわかっていても打てないストレートなので本当に魅力を感じる。

元巨人のエース 江川卓さん(1985年撮影)

平成11年に生まれた大勢投手が口にしたのは昭和54年から62年にかけて巨人に在籍しエースとして活躍した江川卓さんでした。球が浮き上がるように見えると言われたストレートで並み居るバッターをねじ伏せました。

注目したのは右足のかかと

プロのバッターがわかっていても打てないストレート。

 

理想を追う中で注目したのは軸足となる右のかかとを上げる「ヒールアップ投法」。江川さんの特徴的な投球フォームでした。大勢投手もプロ入り前の去年の秋から投げる時に右足のかかとを上げる動作を取り入れた結果、体重移動がスムーズになりボールに力を伝えやすくなったと言います。「右足に体重が乗りやすくなり、持っている100%の力を出せるようになった」と手応えを感じています。

 

 

軸足のつま先だけで投球直前の体を支えるためバランスを保つのが難しいこのフォーム。自分のものにするため、土台となる下半身の強化をシーズン中も負荷を落とさずに継続して行っています。

 

その結果、プロに入って球速も159キロまでアップ。磨いてきたストレートは投球の7割近くを占めていて、被打率も※1割6分9厘となっています。

細かな修正が結果に

オールスターのファン投票の中間発表では抑え部門で1位につけるなど注目を集めている大勢投手。ここまでセーブの失敗はわずか1回と抜群の安定感を誇っています。

 

 

好成績の要因については「何が悪かったのか向き合って次の登板に備えられていることがここまでの結果につながっていると思う」と分析しています。登板した日は自分の投球内容を映像で繰り返し確認。「よくない時は力が入って右肩がねじれてしまう」などとささいなズレを見つけては、すぐに修正しイメージ通りのフォームを追求しています。

 

最大の長所でもあるストレートのチェックポイントは高低差。「力任せに投げてしまうのが悪いストレート。悪いときは低めに引っかかってしまう。高めを狙って伸びるようなボールを意識して修正している」と自分の中で微調整を繰り返します。

 

6月9日 西武戦 21セーブ目を挙げた大勢投手

37セーブという新人の最多セーブ記録も視界に入ってきていますが「記録はうれしいけど目指しているのは日本一」と野球人生で一度も見たことのない景色を求めている大勢投手。その目標に向け“わかっていても打てないストレート”を目指してセーブを積み重ねていく決意です。

 

大勢 投手

試合数も多くなり相手も戦略や傾向を対策してくるので、自分も対応して抑えていきたい。今の取り組み、自分のスタイルが確立すれば信頼される守護神になれると思う。もっともっと見ている人をワクワクさせるようなピッチャーになりたい。

 

この記事を書いた人

金沢 隆大 記者

金沢 隆大 記者

平成24年 NHK入局 広島局、大阪局を経て、スポーツニュース部。巨人担当。

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