特集 陸上 日本選手権 注目はパリオリンピック目指す “Z世代” ①

東京オリンピックの熱戦からまもなく1年。今、陸上界を席けんしているのが、いわゆる「Z世代」です。
東京大会のトラック種目では、女子で1500メートルの田中希実選手(22)と10000メートルの廣中璃梨佳選手(21)、男子3000メートル障害の三浦龍司選手(20)がいずれも入賞を果たす快挙を成し遂げました。
日本選手権では、2年後のパリ大会出場を目指すこの「Z世代」の旗手たちに注目し、2回にわたって紹介します。1回目は大会初日と2日目です。(※「Z世代」とは1990年代から2000年代に生まれた若者を指す)
1999年生まれ 海外を経験した田中希実選手 22歳
東京オリンピック 女子1500mで8位に入賞した田中希実選手(2021年8月)
9日の大会初日、女子1500メートル予選に登場するのが、22歳の田中希実選手。東京オリンピックで8位入賞を果たした日本記録保持者で、大会の主役の1人です。今シーズンは、1500メートルや5000メートルのレースで外国選手にラストスパートで敗れる場面が続き「ラストのスプリントや余裕度が課題」としています。
アメリカで行われたダイヤモンドリーグ女子1500mに出場(5月28日)
5月には、初めてアメリカに渡って最高峰の国際レースにも参戦しました。東京大会に続き、世界トップの走りを体感することでさらなる進化を目指しています。
1998年生まれ 悔しさを糧にする遠藤日向選手 23歳
去年の日本選手権 男子5000mで優勝した遠藤日向選手(2021年6月)
初日最後のレース、男子5000メートルには連覇を目指す遠藤日向選手が出場します。去年、この大会で初優勝を果たしましたが東京大会の出場条件の1つ、参加標準記録を突破できず代表入りを果たせませんでした。高校から、レベルの高い実業団に進んで強化を続け、着実に力をつけたものの目標を達成できませんでした。
陸上Gゲームズのべおか 男子5000m 遠藤選手が大会新記録で優勝(5月4日)
悔しさを糧に臨んだ今シーズンは5月に行われた宮崎県のレースで13分10秒69の日本歴代2位の好タイムをマークし、7月の世界選手権の参加標準記録を突破しました。実力者がひしめく、群雄割拠のこの種目で一歩リードした存在となっています。
2001年生まれ トレードマークは “黒縁メガネ” 黒川和樹選手 20歳
木南道孝記念 男子400mハードルで優勝した黒川和樹選手(5月1日)
大会2日目。まずは男子400メートルハードルの予選に注目。大学3年生の黒川和樹選手が登場します。去年の東京オリンピックでは予選敗退でしたが伸びしろは十分。“黒縁メガネ”がトレードマークのハードラーです。5月に大阪で行われた大会で48秒90の好タイムを出して、この種目の出場選手の中で、唯一、世界選手権の参加標準記録を突破しています。
木南道孝記念 男子400mハードルで48秒90の好タイム(5月1日)
「去年はタイムが出ちゃったという感じだが、狙ってタイム出せたのは大きい」と語る黒川選手。この種目では、レジェンドの為末大さんなど、日本選手で2人しか出していない47秒台の走りも視野に入れています。
2003年生まれ “桐生先輩” 超えを目指す 柳田大輝選手 18歳
関東学生対校選手権 男子100mで優勝した柳田大輝選手(5月20日)
2日目のクライマックスは男子100メートル決勝。注目を集めているのが大学1年生の柳田大輝選手です。去年の日本選手権。山縣亮太選手など9秒台のランナー4人が東京オリンピック代表を争った中、異色の存在だったのが当時高校3年生の柳田選手でした。準決勝に登場した柳田選手は山縣選手に次いで2着となり、優勝候補に挙げられていたサニブラウン アブデル・ハキーム選手よりも先にゴールしたのです。このときのタイム10秒22は、高校歴代2位の好記録です。
関東学生対校選手権 男子100mで10秒19の自己ベスト(5月20日)
この春、柳田選手は日本選手で初の9秒台をマークした桐生祥秀選手が卒業した東洋大学に進学。5月の関東学生対校選手権では、10秒19の自己ベストをマークしました。「桐生さんに追いつけ追い越せで早いうちに9秒台を出したい」と先輩超えを狙って意気込んでいます。
この記事を書いた人

本間 由紀則 記者
スポーツニュース部記者。平成16年NHK入局。東京2020大会を招致から取材し、
本番時は大会組織委員会と陸上(主にマラソン)を担当。
高校時代に数回、3000メートル障害の経験あり。