特集 隆の勝 課題の出足を修正し波に乗る押し相撲 大相撲夏場所から

持ち味の押し相撲が光る隆の勝。ただ1人2敗で迎えた12日目は3敗で追う一山本との一番だった。立ち合い、隆の勝は鋭い出足で前に出た。
夏場所12日目 隆の勝(右)が押し出しで一山本を破る
引いた相手を一気に押し出して、今場所のふた桁勝利一番乗り、単独トップの座も守った。
当の本人は「調子がいいので、いつも以上に気が楽というか、落ち着いて相撲が取れている。1日一番、自分の相撲をという気持ちで」と語り、欲はないように見える。
この理由には、先場所の反省があった。東の小結で迎えた春場所、3日目から関取になって初めてとなる7連敗。4勝11敗と大きく負け越して三役からも陥落した。ファンから“おにぎり君”の愛称で親しまれる隆の勝から笑顔が消えていた。
隆の勝
あそこまで何連敗もしたので気持ちも落ち込んでしまったし、自分らしい相撲も取れなかった。
このままでは終われないと隆の勝。「元の場所に戻りたい。もっと上を目指さなければならない」と春場所の大敗を決してむだにはしなかった。
稽古や先場所の取組の映像をすべて見返した。すると、立ち合いで、一歩も前に出ていない取組があることに気づいた。
隆の勝
これは勝てない。これだけ、だめなところあるんだと再確認できたのでよかった。
課題となった出足を常に意識するため目標を紙に書いて部屋に貼りだした。毎日、その課題を見て、口にしてから稽古場に向かい、課題の修正に徹底的に取り組んできた。
隆の勝
押し相撲で一番大事なところ。自分で意識しないと変わらないところなので、稽古場からも日常生活からも意識しながらやってきた。
迎えた今場所、初日は黒星を喫するも、2日目、大栄翔との一番では立ち合い踏み込んで鋭く当たって後ろに下がらせ、押し返してきたところを突き落とした。
夏場所2日目 隆の勝が突き落としで大栄翔を破る
先場所の課題だった出足を修正し、確かな手応えを手にした。
8日目には横綱・照ノ富士を相手に前に出る押し相撲で初めての金星を挙げた。
夏場所8日目 照ノ富士を攻める隆の勝 寄り切りで破り初金星を挙げた
その後も白星を重ね、4日目から9連勝。日本相撲協会の八角理事長も「押し相撲は勢いがつくと勝っていく。いい流れになる」と話した。
周囲の期待は日に日に高まるが、隆の勝はいたって冷静だ。
隆の勝
不思議とそんなに意識していない。自分のことに集中できている。土俵に上がっても緊張はあるが、周りが見えてる。意識するとかたくなるので、1日一番、自分の相撲にだけ集中していきたい。
この勢い、流れのまま千秋楽に「おにぎり君」の最高の笑顔は見られるか。夏場所は残り3日となった。
この記事を書いた人

持井 俊哉 記者
平成26年NHK入局
北九州局を経て、スポーツニュース部。小1から剣道をはじめ、現在、5段。「打って反省、打たれて感謝」をモットーに何事にも謙虚に誠実にチャレンジすることを目指す。