ストーリーパラスポーツ

科学で判明した「義足の身体化」?! 走り幅跳び・山本篤

2019-07-30 午後 02:26

リオパラリンピック走り幅跳びで銀メダルを獲得した山本篤選手。今も記録を伸ばし、進化を続けています。そんな山本選手の強さの秘密に、脳科学の視点から迫ります。

義足と足を使う場合で異なる脳の動き

話を聞いたのは、東京大学・身体運動科学研究室の中澤公孝教授。そもそも走り幅跳びで義足を使う場合と足を使う場合では「脳の指令に異なる点が見られる」と言います。

 

義足でも足でも共通しているのは、どのように蹴れば遠くに飛べるのかという連続的な運動を遂行するための動きですが、異なっているのは「筋肉」。筋肉のない義足使用者の場合は、義足になっている部分には指令を送らず、義足を動かすために必要な部位に指令を送っているという特徴が見られるのだそうです。

人間の体が持っている再編能力を見せる山本選手

左足の太ももから足を切断している山本選手ですが、「義足を自分の身体として感じる」と話します。これには「義足の身体化」とも言える新たな神経回路の働きがありました。

 

走り幅跳びの世界記録保持者、義足のトップアスリートとして知られるドイツのマルクス・レーム選手の脳についても、過去に調査している中澤教授。教授によれば、右ひざから下を切断しているレーム選手と山本選手には、脳の動きに予想外の違いがあったのだそう。

 

 

 

一般論として脳は、左・右にわかれていて、ふつうは左足を動かそうと思うと右の脳が反応するようになっています。
レーム選手の場合、障害のない左足を動かすときには、右脳が働いたのに対し、義足を着用している右ひざ周りの筋肉を動かすときには、左右両方の脳が活動していました。

 

 

その一方で、山本選手の場合は、「無い左ひざを動かしてください」と言うと右脳しか活動しないにも関わらず、健常な股関節や、切断されていない右ひざを動かすときに、脳の左右両方が活動しました。

 

中澤教授によれば、この証明はできないものの「山本選手は、健足(切断されていない脚)を動かすときに、健常者とは違う脳の制御をしている可能性があります。これは山本選手が優れたパフォーマンスを達成するまでの練習の過程でそういったことが起きたと考えられる。」とのこと。
「パラスポーツのトップアスリートは、人間の体が本来持っている再編能力を見せてくれていると解釈している。人間の体は鍛えればどんどん変わるんだということを伝えられ、希望を与えられるのではないか。」とも語っていました。

障害者アスリート界のパイオニアとしての一面も

 

山本選手は、2008年に当時実業団だった自動車メーカーの陸上部に入部。その頃は、障害者アスリートが企業の支援を受けられることはほとんどなかった時代でした。遠征費や義足の製作費を捻出するのは、すべて個人の努力。だからこそ「この会社のサポートなしに現役を続けることは難しかった」と言います。

 

今でこそ、企業のサポートを受ける選手も増えてきていますが、山本選手は、その道を切り開いたパイオニアです。

そして、2020年の東京パラリンピックを目指す山本選手は、すでにその後も見据えています。

 

自国開催で盛り上がる東京大会が終わっても、障害者スポーツが忘れられないためにはどうしたら良いのか。「選手や競技を見てワクワクするようなパフォーマンスをしなきゃいけないし選手がカッコよくないといけない」と語ります。障害者スポーツが本当の意味で日本に根づくまで、山本選手は走り続けます。

 


※この記事は以下の番組から作成しています。

2017年4月2日放送「超人たちのパラリンピック 義足は“身体”だ! 〜走り幅跳び・山本篤〜」
内容は放送時のものとなります。

 

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