ストーリーパラスポーツ

流体力学からひもとく パラ競泳・山田拓朗の"技術"

2019-07-31 午後 02:16

リオパラリンピック競泳50m自由形(S9)で、日本人として初めて銅メダルを獲得した山田拓朗選手。生まれたときから左腕の肘より先がない山田選手。なぜ、速く、まっすぐに泳ぐことができるのか?最新科学で分析した結果、左腕を補う「推進力」と「方向調整能力」の秘密が明らかになりました。

力学からひもとく「水泳」

山田拓朗選手は、なぜ世界トップクラスの速さで泳ぐことができるのでしょうか?山田選手の母校・筑波大学で「水泳の流体力学」を専門に研究する高木英樹教授にお話をうかがいました。

 

体格差を細かい技術で補う日本人選手の泳ぎ

「体格差によって抗力(手を動かす方向と反対方向に働く力)に差が出る」と高木教授。例えば、2m近い外国人選手と180cmほどの日本人選手を比較すると、腕の長い外国人選手の方が、遠くの水をつかんで後ろまで押すことができます。

 

つまり、日本選手は体型的には不利。しかし、その分テクニックでカバーしているのです。「手足が短い日本人はひとかきで推進力をたくさんは得られませんが、できるだけ抵抗の少ない姿勢をつくることはできる。パワーで劣る部分を非常に細かい技術で補っているというのが特徴です。」と高木教授は言います。

 

平泳ぎや背泳ぎやバタフライでは日本人が活躍しているものの、“パワー優位”な自由形で戦うには、補う技術をさらに高めるだけでなく、日本人も体格を良くしていく必要があるといいます。

山田選手の「推進力」と「方向調整能力」

高木教授によると、山田選手の泳ぎの特徴は「健常者の選手よりも非常に速く手を回している」ことだそう。

 

推進力となる腕が1本しかない山田選手は、右でかいているときはグッと進む一方、かいていないときは減速してしまうはず。しかし、彼はそれを抑えるある種“超人的な技術”を身につけていると高木教授はいいます。

 

それは、1本の腕で入水したら、すぐに推進力を生めるような「かきかた」。入水したらすぐ推進力を生んで、かいて、リカバリー(腕が水上にある区間)をすぐ戻すという無駄のない泳ぎについて、高木教授は「手1本で健常者並みのことをやっているのか」と思ったのだそうです。

 

また、大きく機能している右腕とほぼ機能していない左腕に力の差がある山田選手が、右側に曲がっていかず真っ直ぐ進める理由を、高木教授はこう分析しています。

「一つは船の舵の役割をするキックを規則正しく打つことによって、直進性が増すこと。もう一つは右腕をかく際、体の脇をかくのではなく体の中心線に近い位置をまっすぐ後ろにかいているからだと思われます。この辺りの技術は、山田選手がまっすぐ速く泳ぐために、試行錯誤して身につけたものでしょうね。」

ゴルフでもパラリンピック出場を目指す…!?

「(泳ぐことは)夜眠くなったら寝るくらい当たり前のこと」と話すほど、ほとんど毎日欠かさず泳ぎ続け、水泳漬けの毎日を送ってきた山田選手。そんな山田選手の息抜き法はなんと「ゴルフ」なのだとか。

 

 

最初は思うようにボールが飛ばなかったそうですが、今ではバッチリ。水泳で鍛えた強靭な体幹を軸に回転し、右腕の力でクラブを振り切ります。オフの日には、お父さんと一緒に打ちっぱなしに行ったり、友達とミニコースを回ったりして楽しんでいるのだそうです。

 

しかし、このゴルフはただの息抜きではありません。実はすごい凝り性で「ハマりだすと止まらない」という山田選手。ゴルフでもパラリンピックに出ることを目標に、ゴルフ用の義手を作って、さらに飛距離を伸ばすことも考えていると話してくれました。ゴルフでのパラリンピック出場も夢ではないかもしれません。

 


※この記事は以下の番組から作成しています。
2017年2月12日放送「超人たちのパラリンピック 変化を力に変えて〜競泳 山田拓朗〜」
内容は放送時のものとなります。

 

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