特集 八角理事長の力士採点 新大関、新横綱が誕生してほしい チャンスはたくさんある 大相撲夏場所を前に

公益財団法人日本相撲協会の八角信芳理事長(元横綱北勝海)は春場所後に理事長に選出され、5期目の体制をスタートさせました。感染防止対策を徹底して本場所を開催し、通常開催に向けて取り組む八角理事長は、また誰よりも厳しく土俵を見守ってきました。力士の採点評価を聞きました。
若隆景 大関は夢ではない
初優勝を果たした大相撲春場所千秋楽でインタビューに答える若隆景
――春場所の優勝力士の若隆景についてどう評価されますか。
自分の相撲を取り切って下からのおっつけが徹底しています。気持ちがぶれていないところがすごいと思います。「自分はこういう相撲だ」と徹底しています。千代の富士さんのようになってほしいと思いますが、馬力が不足しています。ずっと上位にいましたから力は付けてきたと思います。謙虚さはありますが大胆さも欲しいです。「おれは強いんだ」という生意気なところがあってもいいです。大関は夢ではないです。
髙安は体調を整えれば優勝のチャンスはある
合同稽古で汗を流す髙安(4月23日)
――髙安は何度も何度も優勝目前まできて、果たせていません。
立派だと思います。腰を痛めて大関から陥落していますが、合同稽古にもいつも参加して一生懸命に稽古をしています。その努力が実っての優勝決定戦だと思います。もう1回大関に上がるためには、2桁以上勝たなければいけない。そうすると優勝も近づいてきます。体調を整えていれば優勝のチャンスはあります。
琴ノ若 しっかり稽古をして登り詰めてほしい
琴ノ若が勝ち名乗り(春場所10日目)
――琴ノ若は2場所連続で千秋楽まで優勝争いに残りました。
堂々としています。「勝っていいのかな」ではなく「勝つんだ」という相撲です。大関に勝ったことも自信になっていますね。非常に期待しています。前に出られるようになってきましたね。今は横綱1人、大関3人ですから、チャンスがあります。今しかやるときはないわけですから、しっかり稽古をして登り詰めてほしいです。
御嶽海 最後まで力を抜かずに頑張る気持ちで
御嶽海がちりを切る(春場所10日目)
――春場所の優勝候補と言われた新大関の御嶽海は後半失速しました。
いいときにはいいのですが、体勢が悪いとか、体調が悪いとなかなか力を発揮できないです。「最後まで力を抜かずに頑張る」という気持ちで稽古場から取り続けることです。稽古場でも自分の体勢にならないと力を抜いてしまう癖があると思います。何とか自分の体勢に持っていく努力をしないといけません。
貴景勝(左)と正代(右)
――貴景勝、正代を加えた大関3人がさらに上を目指すためにどうあるべきですか。
やはり精神的なものだと思います。3人とももっともっと鍛えていかないとダメです。相撲は精神的な修行が大事になります。
琴勝峰に期待 弟の琴手計もいい
――豊昇龍、琴勝峰、王鵬ら若手についてはどうですか。
もう少しで来るなという気持ちはあります。いまひとつというか、少し足りないなと感じています。堂々と勝つ勝ち方、馬力で勝つ力士が欲しいです。力で勝つような力士が出ると、上にスッと上がっていけるのです。
兄の琴勝峰(左)と弟の琴手計(右)
――若手で期待している力士を挙げると誰ですか。
琴勝峰に期待しています。ケガで十両に落ちていましたが、幕内に戻って今は自分の相撲に悩んでいると思います。稽古を続けることによって自信を回復します。弟の琴手計が春場所で序ノ口優勝しました。弟もいいです。いい体をしています。弟のほうが勝ち気なところがあると思います。豊昇龍も勝ち気なところがあるのですが、投げではなく前に持っていく相撲で勝ってほしいです。押し込んでの投げは安定感がありますが、下がっての投げはダメです。
――令和4年の大相撲、新横綱、新大関の誕生はありますか。
絶対になってほしいです。若手がどんどん上位を突き上げて土俵が活性化し、横綱、大関が若手を撃退することが相撲の面白さ、魅力になります。新横綱、新大関が誕生してほしいです。チャンスはたくさんあると思います。
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