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特集 若隆景が大相撲夏場所へ決意 ふるさとの両親も息子に期待 

相撲 2022年5月2日(月) 午前0:50

若隆景は、春場所で新関脇としては昭和11年の双葉山以来86年ぶりの優勝を果たし、夏場所は大関昇進に向けたステップとすることを目指して挑みます。

 

NHK大相撲中継でおなじみの吉田賢アナウンサーが、夏場所への決意などを聞きました。

 

若隆景(左)と吉田賢アナウンサー(撮影時だけマスクを外しています)

――春場所は福島県出身としては50年ぶりの優勝で、地元の福島では皆さん喜んでいらっしゃったようですね。

 

そうです。春場所の千秋楽にパブリックビューイングを福島市内でやっていたんですけれども、映像を見たら、すごい人でびっくりしました。あんなに人が集まっているとは。

 

JR福島駅前で万歳三唱し、若隆景の初優勝を祝福する人たち(春場所千秋楽)

――気持ちを新たにしたのではないですか。

 

そうですね。春場所後に福島に戻りました。コロナ禍でパレードなどはできなかったのですけれども、市役所や県庁にうかがったら、応援をすごく感じて、とても励みになりました。想像以上に喜んでもらっていて、夏場所に向けての期待も相当に大きかったので、それも含めて、今後が大事だ、頑張ろうと思いました。

 

後輩の学法福島高校相撲部員と記念撮影(4月9日福島市役所)

――これからが大事という思いを、改めて聞かせてください。

 

優勝した次の場所は、やはり注目というか、期待がかかっているでしょうし、まして関脇での優勝で、上の番付を目指すうえでも大事だと思います。

 

――これからはどのあたりを伸ばしていきたいですか。

 

自分としては、今回の優勝は、下から前に出るという自分の相撲を貫いての優勝だったので、そこをどんどんどんどん、さらに磨いていきたい。そうしたら、もっと強くなれるのかなと思っています。

 

若隆景(左)が寄り切りで貴景勝を破る(春場所14日目)

――さらに春場所は、差してみたり、左前まわしを取りにいってみたりという攻め方が出るようになってきたと感じたのですが、このように相撲の幅を広げるというところも磨いていく必要があるんでしょうか。

 

そうですね。それも下からの攻めという、自分の相撲の延長上です。そしてそこからの展開というのを稽古でやっていきたいです。

家族が自分を奮い立たせる 体のケアをしっかりやっていきたい

若隆景(奥)が上手出し投げで髙安を破る(春場所千秋楽 優勝決定戦)

――春場所の千秋楽は、家族やお母さんを呼んでいらっしゃったんですね。

 

そうですね。やっぱり私を奮い立たせるということもありますし、家族にいい姿も見せたい。そういう思いで呼びました。家族は心の支えです。一番でもいい姿を見せたいという、そういう思いですね。

 

――そういう意味では最高の姿を見せられましたね。

 

そうですね。

 

―― あとは唯一心配なのがケガです。それは関取がいちばんよく分かっていると思うんですけれど。

 

そうですね。下から前に出る相撲を取っていけば、下がって投げるようなことをするよりは、ケガをする率は少ないと思うので、そういう面でも下から前に出るという攻めを。やっぱり体一つで戦っているんで、しっかり自分の体をケアしていきたいです。

 

若隆景(撮影時のみマスクを外しています)

――ぜひもう一つ上を。優勝したからにはね。

 

そういう声が本当にありますので。

「どんどん上を目指してほしい」ふるさとの両親も期待

故祖父元小結若葉山の青山貞雄さんと3兄弟。左から現若隆元(長男6歳)現若隆景(三男3歳)現若元春(次男5歳)(平成10年10月)

若隆景は、福島市内でちゃんこ店を営んでいる元幕下若信夫の大波政志さんと、足取りの名人と言われた元小結若葉山の二女文子さんの三男です。長男は幕下の若隆元(大波渡)、次男は幕内の若元春(大波港)で、3人とも荒汐部屋に所属しています。福島市の実家の店で、両親の話を聞きました。

 

母文子さんと父政志さん。政志さんの力士時代の師匠42代横綱鏡里の子息からの花の前で(4月7日福島市ちゃんこ若葉山/撮影時だけマスクを外しています)

――お母さんは春場所の千秋楽に会場で応援しました。いかがでしたか。

 

大波文子さん(以下 母)取組の時間は夢の中のようであっという間だったのですが、表彰式で君が代が流れたとき、「優勝者が息子なんだなあ」って少しずつ実感が湧いてきました。本当にあの子が優勝したんだなあって。

 

――お父さんは、福島市のパブリックビューイングで地元の人たちに囲まれて応援していました。どうでした?

 

大波政志さん(以下、父) みんなすごく気合いが入って、興奮していて、圧倒されて。優勝が決まったら、喜ぶ間もなく報道の方々に取り囲まれました。ただあいつ(若隆景)の気迫が画面から伝わってきて、決定戦のときは「とにかく落ち着け、落ち着け」ってずっと思っていましたね。

 

JR福島駅前で若隆景の初優勝に目を細める父の政志さん

――若隆景関のこれからはどう考えられますか。

 

父 これからが大事です。本人の目標ももう一つ上で、毎日稽古をやってるでしょう。優勝も大事ですが、これからが大事になってきますよね。

 

――お母さんはこれからをどういうふうに思っていますか。

 

母 精進の先には大きな目標があります。お相撲を続けている間は、前を向いてどんどん上に上がってほしいです。

三男若隆景は努力することが才能

若隆景入門直後、三兄弟で記念撮影。左から現若隆景(三男)現若元春(次男)現若隆元(長男)(平成29年荒汐部屋)

――今、三男が優勝して、次男が幕内で頑張っている。長男は関取を目指している。どう感じてますか。

 

母 学生のときの友だちのお母さんたちは、子どもが部活動をしていて、それぞれ応援をしていました。私はそれを卒業しないまま、今までずっと応援してきています。幸せだと思います。

 

父 親って結局、心配しかしないんですけれど、あんまり頑張って体を壊さなければいいなと思うし、一方では、相撲だけが人生じゃなく、辞めてからのほうが長いとも考えます。相撲の才能だけだったら次男のほうが上だと思うのですが、三男は一つ年上に強い兄貴がいて、勝てなくて悔しい思いして、勝ちたい、強くなりたいと、小さいころからずっと自分を磨いて、努力することが才能として身に付いた。目指すんだったらしっかり頑張って。やれるところまで頑張ってもらいたいです。

 

相撲専門雑誌「NHK G-Media大相撲中継」から

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